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 そういう曰く付きの課だった。

 かの事件から5年が経過した、今。法律や、ホワイトハッカーの教育、セキュリティなどが進歩し、簡単に「イマジネクト」を使用した殺人ができなくなっていた。


 そのため、脳魔弾殺人対策課はあまり機能していなかった。


 死唄しおんが3年間警視庁に務めてきて、一度もそういった事件は起こらなかった。

 まあ結局、死唄が危惧するようなことは特にないのだろう。


 無駄な思考をしていても仕方がない。死唄は階段を降り始めた。

 旧式の古びた階段はさび付いていて、踏み込むとギシギシと音を立てる。吹き付ける風が余計に建物を震わせ、まるで怪物の咆哮のような音を立てている。


 吹き抜けになっている階段の屋根からは、この寒さが嘘みたいな青空が広がっていた。その中に、ポツンと不安げに浮く白雲が、まるで死唄の心を代弁しているかのようで、思わず目をそらした。


 それから死唄は特に考えることもなく、毎朝の出勤道を歩いた。

 一時間後、死唄はなにごともなく安全に、仕事場へと到着する。しかしながら、死唄は先ほどの楽観視が若干、いやかなり、誤りだったことを知る。

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