4.装備は命(買えるとは言っていない)
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『ロザリー』レベル10
右手:初心者用ハルバード
左手:――
防具:脱兎フード
├狩人の服(上)
├狩人の服(下)
├旅人のベルト
├軽金属の手甲
└森林のブーツ
スキル:【戦士LV1】【斧LV1】【槍LV1】【鎌LV1】【鑑定LV2】【看破LV1】【健脚LV5】【奇襲LV7】【状態異常耐性:麻痺LV1】【状態異常耐性:毒LV1】【状態異常耐性:出血LV1】【採取LV1】
所持金:7,320SG
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ふふふ……スキルが充実してきましたね。
取得したばかりなので殆どがLV1ですが、森で戦っていたので【健脚】と【奇襲】はレベルが上がっています。
しかも! 新たに取得した【戦士】は近接必須の超有能スキルです。常に発動するパッシブスキルなのでLV上げもしやすく、【斧】【槍】【鎌】のスキルと重複するので威力は増し増しです。
三つの武器系スキルはハルバードの斧頭、先端、鉤爪をそれぞれ意識して素振りしていたら取れるようになりました。判定はそれぞれ別なのでLV上げが少し面倒ですが、使いこなせば怒濤の攻めが出来るはずです。
【状態異常耐性】は状態異常にならないとLVが上がらないので、LV上げの際はまた暗殺桃のお世話になりそうですね。
さて、防具は昨日買ったので次は武器です。武器や防具にはレベル制限が無いので、買える中で一番いいものを買いましょう。装備は命です。
「ハルバードってありますか?」
「ハルバードぉ? あるっちゃあるが、使うやつなんて殆どいないから値段が高いものばかりだぞ?」
おおう、マジですか……。たしかに、最初からハルバードを選ぶ人なんて殆どいないでしょうからね。
斧頭で殴りつければ鎧の上からでも粉砕し、先端は槍のように鋭く、鉤爪を使って相手を引きずり下ろしたり転ばせたり……。使い方は色々ありますが機能が多いぶん重量は増えますし、重くて振り回せないなら最初から槍でも握ってろって話ですからね。私は継続してハルバード振るいますけど。
「それにしても……高すぎません?」
鍛冶屋の店主が奥から持ってきた、まあまあな重さのハルバードの値段はなんと七五万SG。
「素材が素材だからな。持ち手は鋼並に硬くてしなりもいいトレントの木材、金属部分は全部魔鋼で鍛えてある。これでも安い方だ」
「魔鋼……?」
「ああ、異人の嬢ちゃんは知らねぇか。魔鋼は通常の鋼より魔力を含んでいる特殊な金属で、この辺りじゃ手に入らねえんだよ。王都まで行けばそれなりに流通してるが、辺境のここより高いだろうな」
ファンタジーらしい不思議金属ですか。この辺りで手に入らない金属が素材なら高いのも頷けます。
武器に慣れるためにも早い内から感覚を覚えておくべきかと思っていましたが、買えないなら暫くのあいだ初心者用ハルバードから卒業できないですね。
「…………時間は掛かるが、用意できなくも無いぞ」
「本当ですか!?」
「お、おう。需要が無いから作成してないってだけで、オーダーメイドでもいいってんなら作ってやるぞ。珍しい武器で頑張ってるようだし、色々まけて一万ってとこだ」
「1万ですか……少しだけ足りませんね」
私の所持金は7,000と少しだけです。商品として飾られている片手剣や槍が1万から2万なのを見るに、一万でオーダーメイド品を作って貰えるのはかなりの好条件です。
「なら、半分を前金として、残り半分を受け取るときに支払うってのはどうだ?」
「いいんですか? そんなに譲歩して貰って……」
「普通ならやらねえんだけどな。前金だけ払って武器を持ち逃げする野郎もいないわけじゃないし、酷いやつは金すら払わねえ。けど、嬢ちゃんはそこまで悪いやつには見えねえし、悪いやつだったとしても大きな痛手にはならねえしな」
そう言って豪快に笑うと、鍛冶屋の店主さんは取引用の紙を引っ張り出してきました。私はUIで操作しますが内容は至って普通で、ハルバードを作ってもらう代わりに前金として5,000SG、完成品の受け取り時に5,000SGを払うというものです。
取引が成立したので、私は5,000SGを払って店を後にします。
さあ、金策の時間ですよ! なるはやで済ませたいので暗殺桃を採取しつつゴブリン退治です。もちろんクエストも同時進行で進めます。
スキルのLV上げは可能な範囲で済ませて、死なない程度を目安にお金を集めましょう。
さて、冒険者組合で受注できるクエストには二種類あります。
一つ目は恒常依頼。周辺地域に生息している魔物や採取物が対象の、受注したい回数分だけ受注できるクエストです。
二つ目は個人依頼。その時その時によって依頼内容も依頼主も変わる、住人の手伝いという側面が大きいクエストです。
私が受注したのは恒常依頼にあった、ゴブリン五体の討伐が一〇回、暗殺桃一〇個の納品が二回、薬草一束の採取が一〇回です。勢いに任せて受けすぎた気はしますが、この依頼の報酬プラス素材の売却があれば5,000SGなんてすぐに貯まります。
そして私は今、ちょうど二〇体目のゴブリンを屠ったところです。
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進化可能スキル
【奇襲LV20】
進化には経験値が必要です。進化させますか?
[YES/NO]
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「どうしようかな……」
【奇襲】のスキルレベルが上限に達したのです。進化することでレベル上限が上がったり、強化されたり、はたまた違うスキルへ変化したりします。
検証班たちが親切に開示してくれている情報によると、通常のスキルへの進化には1レベル分の、レアスキルへの進化には2レベル分の経験値が必要になります。ですが、肝心である必要経験値量は進化させるまで不明なのです。
……ちなみに、βテスト終了間際に発見されたレアスキルの上位スキルは、5レベル分の経験値が要求されるそうですよ。
とにかく、私がより強くなるにはスキル進化が必要です。ですが、もし【奇襲】とは別方向のスキルに進化した場合、私は【奇襲】を取り直せないのです。別物になっても私には【奇襲】を進化させた結果が残るわけですから。
「――悩んでも仕方ない。変化するのはレアスキルの方が多いらしいし、純粋に強化されることを願おう」
私はYESを選択しました。保留することも考えましたが……あと三〇体のゴブリンを討伐するというのに、それは少し勿体ないでしょう?
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スキル進化完了
【襲撃】
・奇襲時に威力補正。
・未発見状態での攻撃は奇襲扱いとなる。
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おや? おやおやおや? これはもしかしなくても強いのでは?
未発見状態というのが私の予想通りであれば、これは私のスタイルにぴったりですよ。
私のレベルは……げっ、二つ下がってる。【襲撃】君はレアスキルですか。まあ、ゴブリンからの経験値で上がるでしょうし、そこまで痛くはないですね。
そして、そんな私に下を二体のゴブリンが通りました。早速【襲撃】の効果を試してみましょうか。
「――せい!」
まずは一体。頭に振り下ろす際の、今までにあった僅かな抵抗が消えました。奇襲すれば確殺なのはとてもいいことです。
二体目は少し遅れて攻撃してきますが、今回は反撃せず後ろへ走りましょう。相手が私を見失わないギリギリの距離を保ちます。
森の中を右へ左へ時々回って。そしてゴブリンが混乱してきたタイミングで木の陰に隠れます。
数秒の後、目の前を通るゴブリンはついさっきまで追いかけていた私を覚えているはずです。進化前の【奇襲】であれば、これは警戒している相手への攻撃なので効果を発揮しませんでしたが……!
「ここっ!」
「ギャァ……」
確殺でした。一体目の時と同じく、抵抗を感じず真っ二つですよ真っ二つ。ふふふ、使い勝手が良さそうな、私向けのいいスキルですね【襲撃】は。
っと、今ので【斧】がLV10になりましたか。こっちも進化が必要なので――ああいや、【槍】と【鎌】が進化可能になるまで待ちましょう。ちょっと気になることができました。
【襲撃】の強さをたっぷり味わいながら夕方まで狩りを続け、私は見事ゴブリン五〇体の討伐を終えました。あとは採取物だけですね。
それと、ゴブリンを倒してから気付いたのですが、キャラ作成して七二時間の間は経験値が増えるバフが付いていたみたいです。バフが切れた通知が来なければ気付かなかったでしょうね。
ですが、切れてしまったとは言え恩恵がとても大きいバフです。上手く立ち回れる人なら、スキルをもう一つや二つ進化させているでしょう。私はまあ、ガチ攻略というより自分のペースでやる派なので、そこまで固執しませんが。
……バフの存在を知ったら荒れる人、出てくるんでしょうね。
「おっ、丁度いいところに暗殺桃が」
これで暗殺桃は集め終えました。
「あとは薬草だけなんだよね。木の根元探せば生えてるかな……?」
そう思いガサガサと草の根を掻き分け、生えている植物に片っ端から【鑑定】を掛けます。
雑草、雑草、雑草、毒草、雑草、毒草、雑草……雑草と毒草ばかりですね。暗殺桃がなる木の根元だからですかね。違う場所も探しましょう。
雑草、雑草、雑草、雑草、雑草、薬草、雑草……ん? 薬草ありましたね。普通の木の根元なら雑草に混じって生えているようです。
根気強く探してクエストに必要な量を集めます。薬草は暗殺桃がなる木の周辺では生えていないと分かったので、暗殺桃を見かけたら離れるようにします。
本音を言えば毒草も採取したいのですが薬草が優先です。毒草は時間に余裕があれば採取しましょう。暗殺桃の毒素を吸収しているはずですからね。
もしかしたら、毒草の成分を吸っているからこそ暗殺桃なのかもしれませんが。
「――はい、確認しました」
クエスト達成の文字がシステムメッセージとして表示されたので、私が集めた採取物は問題無く納品できたようです。
ゴブリンの素材が討伐した証として回収されるのは予想外でしたが、受け取った額は約20,000G。上位種の素材が混じっていたためその分上乗せされたそうです。
鍛冶屋の店主さんに支払うお金が集まったので早速……と行きたいところですが、残念ながら街に帰る途中で夜になってしまいました。よってログアウトしなければなりません。リアルの体も空腹ですし、ご飯を食べてシャワーを浴びたら寝ましょう。
夜更かしは友人の振りをした敵です。
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