第19話 ドラゴン・ランド

 アナト王国の王城跡、大勢の市民が集まっている。

武装している者が多数おり、正規の軍人だった者も含まれていて、

幾つかのグループに分かれている。

更に女子供も大きく取り囲み、様子を見守っているが

邪魔に成らない範囲に留まっている。


 先日の老人も武装し軍服を着ている。

過去には名の有る将軍だった様で、周りの者は尊敬の態度を見せる。

 空の彼方からドラゴンが現れた。

先頃も現れたが襲撃はなされず、ましてや約束された日であるし、

動揺する者も居るが、周りの落ち着きを見て、すぐ収まり場に留まる、

ドラゴンは見る間に近づき、まじかに着陸した。

ロベルトが小山の様な、その背から降りると、ナタリーも直ぐに

ドラゴニュート化して共に進む。

そのロベルトを見たカーターは、二人の前に駆け寄り傅き、

「若、生きて居られたか」その後はろくに話もできず、ただ涙する。

「カーターか?、お前こそ生きていたか」二人は存在を確かめる様に、

互いに相手を強く抱きしめ、公衆の面前にも構わず声を出して泣く、

その光景に貰い鳴く者も見られる。

二人して泣きじゃくる姿に、有る事に気づいた青年「父上もしや」

「スコットよ、何時も話してた先王の兄君だ」と、肯定する。

様子を暫らく見ていたが、皆に目立つ位置迄進み


 「皆聞け、父が泣く程の相手は、亡くなった先王の兄君だ。

アーシア様の叔父に当たる方で、同様に正当な後継ぎであるが、

贄儀式で王位を絶たれる運命にあった。

今回の王の御逝去騒動、お二人は第一王子の甥に譲るべく身を引いた、

争う愚かさまで解いて、ドラゴンと言う力を封印し、城を消しただけ、

結果は現状だ、意味も力量も解らぬ愚か者には国を任されぬ。

今日スコット様が現れたと言う事は、アーシア様が譲られた事だ

なら、我らも先日の龍司様の言葉に答えよう、

我らと歩む王に成って貰う為、我らも命を投げ出す、苦難は厭わぬ

この我らの思いに、王も真摯に答えて欲しい!

この答えに異議ある者は居るか!」周りをぐるりと見回し、

手を突き上げ「我らの未来を勝ち取るぞ!、スコット様バンザイ!」

「うお~~~~」「スコット様~~」地鳴りの様に声と足踏みで答える

中空に女性が浮き上がり、両手を上げると、騒ぎが嘘の様に鎮まる


 [我はスコットの妻でナタリーと言う、贄の儀式で出会ったドラゴン、

先頃、長年の夢である人型に成れて結ばれる事がかなった。

贄儀式の始まりは、異種族が絆を持つ事を探る為に、身近で暮らして、

何時の日にかドラゴンの姫と、人間の王子との思いが叶う様にとの

願によるものだったが、こたび我らで実現した。

龍司様は幾つか国を持っておられ、我らドラゴンの国もその一つだ。

この地がスコットにより治められ、アナト王国と成った時は、

同時にドラゴン連邦の一員に成り、ゲートと言う魔法の扉で、

連邦内を行き来出来る様に成る。

隣りの国に行くより、隣の大陸に行くのが速い、大ぼらの

そんな馬鹿な話の結末を見たいなら、龍司様に付いて行け、

立て!、立って我らと共に国を成せ!]


 [ナタリー、俺にも言わせろ」落ち着いたスコットが話し掛ける

「15の贄儀式で国を離れて、今、帰ってきた、弟達の愚かさで

民が被った迷惑の数々を謝罪し、被害に有った者達に報いる為に、

勝手を承知で願う、チャンスが欲しい、力を貸して貰いたい。

替わりに約束しよう、民の声を聴く治世をする事を、

そして、道を誤った愚かな王には刃向かうが良い!、我が許す。

我と立て、愚かな指導者はこの国には要らぬ!]

「若、爺に成りましたが、お供致します!」

「ウオ~~~」大歓声である「スコット」コールである


 日を置かず決着が付いた。

兄が立ち国中の民衆が付いたとの噂を聞き、ドラゴンの事を思い出し、

勝てないと判断した二人は隣国に脱出した。

殆ど抵抗なく鎮圧され、龍司の協力で城は戻され、ゲートも設置、

収納された施設も近代ビルで再建され、馬鹿な話の結末を見た。


 エーツ帝国とアトナ国は宣戦布告の状態であり、進軍もされた。

結果的に侵略前に龍司の力で事なきを得たが、先行きは不透明である。

城も金も軍事力も無い皇帝の取り巻きは極限まで減っていて、

侵略した元の3国の孰れかに組み込まれる寸前で有った。


 スコットは龍司に相談し、エーツ帝国の旧3国の上空にドラゴンで

混乱と威嚇をさせ、帝国の本領に当たる地に侵攻し抵抗も無く占領。

首都占領で戦勝宣言し、更に戦後賠償の要求をすべく特使を派遣、

旧支配層は交戦や分割での生き残りを図るが、アトナでの噂が広まり、

アトナに組み込まれるのを望む声が大きくなり、民衆の蜂起で潰され、

アーツ共和国として民衆の代表による治世と成るが、最終的な軍事、

立法の権限はスコット、さらに龍司に有る連邦に組み込まれ、

アトナ同様にゲートやビルが再建される。

ーーー

 神都アラルの神殿周囲は群衆で埋め尽くされた。

これから始まる奇跡を見る為、場所取り迄行われる。

ドラゴンとグリフォンが見られる、観たら必ず死ぬと言われる程の

災害級の魔獣なのであり、一生見たくない恐怖の対象でもあるが…

聖人として名高いホルトの住む町での、騒動と奇跡は国中を駆け巡り、

奇跡に肖り治療魔法を授かりたいと願う者も多い。

昨日、ドナウド、アルカはブリード教皇暗殺の罪状で断首が成された。

元教皇ブリードも、元と付く様に罷免された。

急がれた理由は新体制に移行するのに、支障が無い様にトラブルの種は

できるだけ排除する様にした為だ。


 「クルルル~~~~」「ギャオ~~~~ン」「グオ~~~~」

人々が仕事を始め様とする時間、国の各地で様々な低くて、不気味な、

声が空の彼方から聞こえ、ドラゴンが大きな姿を見せつける様に低空で

首都に向かい飛び去って行く。

 国の各方向から現れ、中には小さめのドラゴン達の集団も居る。

甲高い声も混じり、事前の知らせが無ければパニックだっただろう、

大神殿上空に全長100mは有るドラゴンと全長15m程のドラゴン、

同じくらいのグリフォン、そして比較に成らない人が一人浮いている。


 下から眺めていたホルトの景色がいきなり変わって上空にいた。

目に映る範囲の空に、破線の様に羽を広げたドラゴンが、この上空の

自分を目指して迫り来る様で、囲まれるのと、高所の恐怖とで

失神するかと思った時、足元が地面に触れた感触と、暖かい温もりを

心と体に感じ、横に立つ龍司の手が肩を振れているのに気付いた。

[幾つかスキルを与えたから、これから空に浮けるよ]

事もなげに言葉を掛けられた、捻話を昨日からできる様になったが、

自分がどこまで変化するのか恐ろしく思われた。

[街の皆さん、お早う御座います、外に出て上空を見回して見てね]

龍司を中心に半径2㎞程の円状に、100余匹が一定の間隔に囲み、

中心の自分達は、大聖堂の尖塔上空までゆっくり降りる。


 先程の円の中心が半分埋まる様に、翼つきの蛇の様な物が現れる。

【我はこの世界と異なる、異世界の龍神である、姿で判ろう、

名を「くらみつは」と言う、そこにおる龍司に加護を与えたものだ。

故有って龍司と共に、この世界に干渉する事となったが、

理由は解らぬが、この世界に神が居らぬ故だと思われる。

おぬし達が何を信じておるのか知らぬが、身体が死に魂が昇華した姿、

魂がが進化した姿が神と呼ばれる存在だろう。

我は完全体では無い故、自らの先は知らぬが

教えなら、相手が居ると言えるのであり、

解釈で変わるような伝え方では意味が無い、

まして、正しく理解できないレベルの相手に伝える方が混乱を招く。

また悟りと言うが、自己完結、自己主張、思い込みだ。

自分はこうだと思う事はそれで良い、だが他の人にこうだと言う時、

自分と相手の立場でこうだの解釈が変るのだとの理解が必要だ。

自分と異なるが、似通った解釈だ、あの人が言うからそうなのだ

めんどいから、そうだと合わせる、判らんが合わせるとかな】

聖堂や周囲の、あちこちで身体が光る者達が見られ、光が消えた。

【今、光った者に加護を与えた、先程の龍司の様にはいかぬが、

人を思う気持ち、奉仕の精神が有れば、スキルは伸びよう】

「お~~」どよめきを抑える様に

【龍司を、仲間を、家族を助けよ、生きておれば、また会う事も有ろう】

陽の光が戻り、見上げた目から涙の溢れ出る者が多数いる。

[神と言えど、一人一人迄は構えないよ、でもね大事な節目は

導きが有るから自分に自信が無ければ、

仲間に相談し選択を間違えないようにね。

龍ちゃんは全体は観ているから、努力と励む事を惜しま無ければ

自然に目立つ、将来、力を与えられる者も、加護持ちも出てくるよ]

「皆、目を瞑り心に聞いてごらん」[先程の様に僕の声が聞こえるかい、

龍ちゃんと僕らと絆を結びたかい、希望するなら念じてごらん]

この国の多くが龍ちゃんのファンに成り、ホルトを中心に改革が行う」

新組織が立ち上がっていく。


 神都改め神龍都のメイン道路の一画に巨大なゲートと、

見た事の無い巨大な商業施設、様式の異なるビルと言われる

建物群の出現、競技場と言う施設での催し物、

数日前迄は考えられない事が起こる。

 第二神殿の前には鳥居と言う不思議なものが立ち、一部の建物は

付近の森ごと日本の神殿が鎮座して異彩を放つ

「春爺、こんな感じでどうだ?」「ここが異世界とは信じられんの」

「貴方、木々の向うの建物は不思議な作りですよ」ヨネの言葉に

春樹は目を細めて見つめる

「おお、ホントだのう、片付いたら出て見るか」

「龍ちゃん、言葉通じるの?、それに危なくない?」

佐奈小母の問いに

「日本ほどでは無いけど、大丈夫だよ、慣れるまでは

神殿の護衛を付けてね」

「和也、神学校は無駄かも知れんな」

虎雄の言葉に「実在の神様ってなー」

実際に僕も思う、龍ちゃんを奉るって…

【ね~龍ちゃん、人型で具現化できないの】

【できるぞ、魂の数だけ可能だぞ】

【一番若い魂から、交代で頼めない】

12~ 3歳位の女の子が現れた

【うちが一番若い魂たい】

体躯は細く、少し長い手足、全体的には人であるが

頭部が気持ち大きく、胸も無く、毛も短い、顔は整っているが

目の間隔が広いと感じる

小顔長身の昨今のイメージから離れる、僕の見つめる視線を感じ、

見た目の容姿が変っていく

【これが好みか】

粘土細工の様に、 T Ⅴでよく見かけるタレントに変わった

「ごめん、不快にさせたみたいで」素直に謝ると、手を小さく振りながら

【おまいでさえ無意識の違和感、他者なら強烈だろう、

そんな感情も無くする程の種族を見たとよ、忘れとった、

こげん感情も懐かしかフフ】

ソロの魂に成り言葉も変わるが、機嫌は悪くない様だ。

「和兄、この娘、龍子ちゃんの世話任せた」「おおい、いきなりかい」

控える神殿の世話係に目配せ「涼子借りね、それとドアの場所は覚えといてね」


ーー御黒家ーー 神官血統 河原田 

 御黒  春樹 祖父兄 神社神主

     ヨネ  小母 春樹妻

 御黒  虎雄  小父 神社神主

     佐奈  小母 虎雄妻         

     和也 いとこ 神道学生

     涼子 いとこ 幼馴染 学生高一 北会津高


ーーー

 ワールド・ゲートと呼ばれる異世界への門がある。

このドラゴン大陸を国とする、ドラゴン・ランドと称し開拓中

その首都ドラゴン・シティのメイン道路の一画に存在する。

 メイン道路と直角に交差した短い道路と、その先のゲート

それらが規則正しく並び、交差点に看板が設置され、看板に地名、

使用中のゲートは看板が光る。

龍世界、ドラゴン・ランド・ヤマト、

ヘラ大陸、アナト王国、エーツ共和国

アレス大陸 神龍国アラル、クマルビ王国(リチャードシティ)

その他にも準備中が見られる

 ゲート付近に広い空き地が有り、倉庫や警備棟、市場も数棟。

10m程の半円ゲートが一定間隔で並び、僅かであるが馬車通っていく


 ターミナルと呼ばれる管理地に巨大ビルと倉庫群がある。

名前を会津建設、会津建材と称する施設である

「あんた見なさいよ」「見とる、これがおれの会社と思うと」涙ぐむ

「まだまだよ、人も機械も足りない」「ここから異世界に進出か」

「感無量よね」「ああ、龍司に感謝じゃ」…

虎一と綾乃の会話である、この地で建物を作り転移させたり、

現地で異世界人と魔法や能力、機械で、試行錯誤しながら進める。

 ターミナルと展望台を併設し、喫茶室も有る。

その窓際の席で慎太郎が感慨深げだ、隣の席の秘書で有り、娘婿の

次郎に声を掛ける。

「俺の認識は甘いな、年齢と肩書で龍司を侮っていた」

「判ります、ここは空港よりも、ある意味でハイテクです、

それにこの広さがターミナル、行ける国も5か国、5都市

たった2週間程です、信じられません」

「半径が倍なら、単純に8倍の容積、4倍の面積

確認済み5大陸、

1大陸のここは自領、2大陸3ヶ国は連邦と称する属国、友好国が1国

面積的には地球の陸地面積とほぼ同じ程度の国の主」

「それって、龍司君の事よね」照子が確認してくる

里子が割り込んでくる「凛や涼子とつるんでる男の子よね」

「あら知ってたの」洋子の問いに「お父さん国会議員よ、本家筋でも

市会議員の子の癖に私に従わないのよ」娘の何気なく発した発言に

慎太郎は理解してしまった、自分の態度と同じだと。

竜三は山都の為、この地を離れず国会に出ず、自分に託したのに。

光るが諫める様に「里子、おまえあちこちで、よく人を虐めるだろう」

「虐めてないわよ、はっきり言うだけよ」「それを虐めと言うの」

姉やすえの言葉にたじろぐ。

「お前が嫌いな3人が裏で庇って謝るから、大事に成らずに来たんだ」

「私も同級生の妹や弟の事で相談されたわよ」安江と光の言葉に

里子だけでなく、慎太郎と照子は固まった。

「今更だけど、あいつ等良い奴等だゾ、親父と里子の事で仲良く

して無いけどな」「そうそう、同じよ、蘭と仲良くしたかったかな」

意外な展開になっていく…


ーー会津家ーー 主人公血統 三津合

 会津  虎一 祖父弟 建設業社長

     綾乃  祖母 虎一妻 建材業社長

 会津 慎太郎  小父 国会議員

     照子  小母 慎太郎妻

 津山  洋子  小母(夫、津山次郎)

 会津  安江 いとこ

      光 いとこ 学生高三 北会津高

     里子 いとこ 幼馴染 学生高一 北会津高 

 津山  次郎     慎太郎 秘書

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