第17話 繋がる世界

 夕方騎士舎で、皆との談話中に会津家の虎一爺、通称虎爺より念話で

収納移築の建物の一部に、龍世界と同じ様に、電気、水道、都市ガス、

Wi-Fi、ケーブルテレビ等の接続が生きている状態のものがある事、

その場合、定格容量迄接続も可能な事が伝えてきた。

 それらを異世界に持ち込んだら如何なる?

気が焦り皆を連れて龍世界に転移

「虎爺、ありがとう、世界間の通路はゲートかドアで繋げるけど、

インフラの心配が有ったんだよ、別世界間で繋がる条件は何?」

「接続されていて、設備が生きてる状態のまま、転移させられる

事じゃろうな、阿賀川が一番の例じゃろ」

 思い当たることが有る。

地下ダンジョンや閉鎖空間に自然が存在できる理由、時間で変わる変化

季節や寒冷温暖、極寒、灼熱等の世界を転移させればよい。

地球の一部が龍世界であるように、閉鎖空間の世界も他の世界の一部、

あの龍世界の離脱の日、阿賀川の水は川底まで減ったのも経験した。

「虎爺の言う事に違和感は無いから正解なんだろうね」

「異世界に持ち込んで、ここと同じに成るか試したいんじゃろ

その三階建て、多分会社か、学校の寮じゃ、設備全て整えた

事務、倉庫にそっちの建物も持っていけ、動けば数キロはネット圏だ

管理する者と保全、警護で10数名程の志願者も用意、確保済み。

同じ様な建物とチームを二つは用意できるが必要か?」

「ありがとう、先を見てくれて嬉しい、二カ所も準備出来次第運ぶ」

「ゲートの集中管理は何処に置く?」

「諏訪北は43、上川井は 151、下の台は61を念頭に区画整理し整地した」

「各地区に小ドームのバリアを張り、外の道路の壁面と小ドーム内の

壁面を直に結ぶ、さらに三拠点から瀬下に統合するでいいね

異世界のゲートも船山、南城の付近に設営予定だし」

 「判った、大まかに区割りしていけ、詳細はこっちで詰める

チョットいいか、御黒の哲二が今来るから、話を聞いて欲しいそうだ」

「どんな要件なのかな?」会う前に情報を入れようと虎爺に話を振ると

「壁が出来て以降、身体がウズウズするんだよ、先祖返りの血が騒ぐ

とでも言うのか、この歳の俺でもな、それで若い連中で腕の立つ連中や

戦うスキル持ちの連中が腕を試したいそうだ」真剣な顔で続ける

御黒の中堅、お前の親父の歳付近で哲二と言うのがいて、牧場をやっとる

元々やんちゃで、そっち系の若いもんを纏めとる」一人の男が現れる。

 「虎爺待たせた、お、龍司君か、いや、もう龍司様か、お願いがある」

それから、独りで喋りまくる、纏めると

数十人程集ったので、クランが作りたい、様子見も親兄弟の説得中も居る

合わせれば3倍以上はいるだろう。

自分も彼らと一緒に行って、準備に訓練に、やれる事は責任を持つ、

念話での会話ができる者が多いので、相互の助け会いも救助もできる、

自己責任が原則、それを弁えて命を大事にする、課題は継続検討する。

龍世界や龍司に責任とか裁判とか主張しない、その条件で異世界へ

送って欲しい、その為、異世界との橋渡しをして欲しい。

龍司は思う、出てくると思ったけど、意外に早かった、

了解し後日連絡と話を纏めて転移

ーーー

 騎士舎へ…、ジュリが不満げな顔。

「わらわを置いて行くし、詫びに、甘いものが欲しいのう」

数種類を箱で渡す、この御姉様しっかりスキルを使いこなす、

目の前で箱が消える、収納されたのだ。

ティムされた以降、スキルが増えた様で、勇者達を仕込んでいる。

おやつはそのご褒美で皆と食べる為、意外と姉御肌。

「ギルドに行くけど?」「ならいい、行っておよいぞ」つれない

ーーー

 カーソンとマリアにクランの話をする。

ギルドとしては結構な勢力拡大に成りそうで、二人は乗り気でクランベースや

住居をマリアと相談しつつ、こちらに目配せがくる、

その書類には三世の秘密の屋敷の隣接地との事が記載されていた。

即入手の段取りとクラン立ち上げに必要な書類を準備して貰う事とし、

用事を済ませポルコの店に寄る。

ーーー

 リチャードもポルコも隣り街だと思うが一応覗いて見る。

ポルコの妹グレイスが、勢いよく現れ挨拶もそこそこに話し掛けてくる、

「龍司様お願いが有ります、わたしにも服とかコスメを手伝わせて欲しいのです、

モデルにもなりますから、足出すの凄く恥ずかしいけど、短いスカートも着ます」

視察団に加わってはいないが、情報は得ていてファッションが華やかで種類も多く、お洒落だと聞いていて、ポルコに漏らした古着屋の件が、待ちきれず、

僕の顔を見た途端、自分にやらせて欲しいと訴えてきた。

「向うの世界の娘と組むといい経験に成るよ」

「コーディネートとかお化粧も習いたい、知らない事一杯、楽しみ」

進める事は了承し話は継続する。

ーーー

 合間にドアとゲートを設置していく。

運送用はゲートを使用し、倉庫と積み下ろし、一時置き場が必要となり

土地の確保が前提となる、従って現在交渉中の異世界以外の、

日本の一族の各地の会社用地と、龍世界の外壁接続国道と壁内接道を

先に済ませ、人用のドア程度の大きさのドアを接続していく。

人的交流が出来れば、僕の出番は限りなく減り、

龍世界の会議場としての重要性は増えるだろう。

ーーー

 現在進行形で作業が進むが、僕自身が関わりたい気持ちを抑える為、

ジュリと二人でアナトへ移動する。

首都は荒廃していた、道路はゴミだらけ、家々にも崩れた所が見られ、

店は開いておらず、民家も戸を閉め、人は歩いているが薄汚れている。

普通の服装でも、女連れの若い男子である、ここでは目立つ、

「良い女連れてるじゃないか、少し遊ぼうぜ」座り込んでいたグループが

ニタニタと笑いながら近づいてくる、もう一歩で触れる距離になった時、

「パチン」音と共に男が吹っ飛ぶ、男の頬が陥没している、

「わらわににも好みが有る、それ以前に汚いのに触られとうない」

「何を、偉そうにやっちまえ」ジュリは立ったまま、数度手を振った、

「ウググ」と声を出すのも痛むだろう、頬だけならまだよいが、顎まで

砕けたら…想像したくない。


 あちこちから視線が集まり、独りの老人が近づき声が掛かる。

「お尋ねしたい、アーシア様、ロベルト様と共においでた方ですよね」

「そうだけど」「ありがたい、やはりそうですか、少しお待ちを」

やおら大声で叫び出す「アーシア様に会えるぞ、アーシア様に会えるぞ」

家々の戸が開き人が流れ出してきた、叫び声が「アーシア様に会えるぞ」

連呼し町中に広まって行く、それをだまって観ていたジュリがつぶやく

「こうなる事は解っていたはず、なのに今更アーシア頼みか?」

その通りだと思う、この国トップのアーシア、前王の兄ロベルト

二人共贄としてドラゴンに供された。

前王の弟二人で争い国を疲弊させる、正当な後継ぎ二人の誠意が届かぬ

遣る瀬無さと、揉めると判っていたのに残った民達だ。

なぜなら二人を救出し、贄儀式の顛末を話して、この国の行く末も話

同行を求めた際、三割付いて来ただけだ、五割を超していたら別の道も

模索した、なのに…様子見、日和見をした判断の結果を今更である。


 回りは人で溢れている、そんな集団から先程の老人も含めて

代表達が進み出て「あの時は申し訳有りませんでした」頭を下げる

回りも一斉に同調してさげる。

「アーシア様、ロベルト様のどちらかで、この国を纏めて戴きたく

厚かましくお願いいたします」その声に皆も反応し平伏する。

「姫が立ったとして誰が戦うの?、二人が戻った時さえ国軍の将軍は

顔も見せず、ついさっき、連れの女性に集るゴミさえ無視する状況で

僕達だけに戦えと?」「帝国でも戦ったと聞いた」「そうだ」々…

「勝てば姫の国に成るのに、何故戦わん、お前の姫だろう」

「勘違いが酷い様だね、勝って占領して、君達の様な住民だらけでは

苦労が絶えないだけだよ、そんな国要らないよ」

「自分の自由になる、言う事を聞く国民が良い訳か」

[君達この土地が好きか?、この街が好き?、子供も孫もこの地で育てるか?、

この地を収める王が好きか?、

盗賊や外敵から家族を、街を、国を王を守れるか?、守ろうとするか?]

集った民たちを見て続ける

[この国にいた三割の民は今、新大陸で暮らしている。

姫の為国を、家を捨ててまでも、付いていく気持ちに応じたわけだ、

新しい地でも危険承知で、戦う意思も有る人達だ、国とはそんな人達の集まりだ]

わいわい騒ぐ者が多いが、反対に黙り込む者も居る、

リーダー達は黙り込んでいたが、最初の老人が口を開く。

「二日後にもう一度来て頂けませんか?」

頷き転移する。

ーーー

 数日ぶりに新都に帰った。

「お帰りなさい、龍様」贄の塔に居たのとは別人が居だ

「龍ちゃん、どう?」「身のこなしに衣装、化粧よ、二度惚れでしょ」

夕子と麻呂が現れる、素直に「はい、綺麗です、惚れ直しました」

「素材がいいから、磨きがいが有るわ」婆様二人はご機嫌だ。

ロベルト、ナタリーも雰囲気が変わっていた。

衣装が違うと風格が変る、王侯と言っても良い、ナタリーも変身時に

衣装を纏う術を持つ、二人に仕込まれたのだろう。

並ぶ二人は、いや三人は親子の王族の様で、つい口走った。

「ロベルトさん、アナトの王様やりませんか?」

アナト国で見てきた先程の状況と、民衆が立ったら神輿が必要な事、

アーシアに傾倒する民衆はここに居て、姫以外が立っても軋轢無く

国を一から築ける事、民と共に立つ絶好の機会だという事を話す。

「連邦構想ですよ、宗主国はドラゴン王国、連邦国にアナト国、山都国」

 ロベルトが話し出す「わたしは15で贄に成るので、正式に帝王学教育は、

受けていませんが、弟と共に学びました。

実際の業務は手伝う程度でしたが…、甥や姪を利用する弟二人は

許せない、わたしが立ちましょう、ナタリーそれでいいね」

「私も手伝うわよフフ、こんな日が来るなんて」楽しそうだ。

ーーー

 連邦制を取ると決め、名称を制定するする。

宗主国 ドラゴン・ランド(竜国)、竜大陸全域(異世界)

連邦国 ヤマト・ランド(山都国)、(龍世界、別名箱舟)

ーーー

 街の一画、メイン道路と直角に交差した短い道路と、その先のゲート

それらが規則正しく並び、交差点に看板が設置され、ゲートが光るのが

使用中のヤマト、リチャードシティだ。

ゲート付近に広い空き地が有り、倉庫や警備棟、市場も数棟建設中だ。

10m程の半円ゲートが一定間隔で並び、其々が背の高い幌馬車でも、

往復ですれ違える広さを持つ。

現在進行中の土地の確保や、交渉が進めば、ここ竜国と各地を結ぶ、

一大ターミナルに成る。

冒険者ギルドはカーソンを通じて新ギルドをここドラゴン・シティに

開設する運びとなり、副ギルド長のマリアが初代となり、

使節団もゲート開通で、食事等の心配が無く成り効率が上がる。

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