第15話 狩と東京見物

 この数日視てると、地球と時間のずれは無いようだ。

判りやすくて有りがたい、体積は異世界が大きい様で地平線が遠い、

重力については良く解らないが、球が大きくて、同じ時間で回転をする

それで同じに感じ入るなら、星の質量が地球より軽いのだろうと思う。

時差や日の出日の入りの変化でも体は感じる、時間や重さ等が激変すれば

体調にも影響するかもしれない。

 生活するのに支障が無ければ、それはそれで良いだけと思うのだが、

地球の暮らしが基準に成っていると、それを持ち込みたいと考える、

最低限の生活の為の電気、電波は欲しい。

異世界でロケットの打ち上げはファンタジーかSFか区別もつかないが、

通信衛星位は転移させられると思う。

魔法がイメージにより向上するなら、異世界にアニメを浸透させ、

それで育った子供達の未来を見て見たいものだ、だだし核爆発をイメージするのは

勘弁願いたい。

朝の陽射しを浴びる前の景色を見ながら、混沌とした思考で、

大半は愚にも付かない考えで有るが、そんな事を考えていた。

眩しい日差しと共に、覚醒させられ今日が始まった。

ーーー

 カメラON

 勇者達はほろ馬車に揺られていた、暗い内から起こされ、乗せられ

今、まさに草原の真っただ中、1m程の背丈の雑草が一面に広がる平地

大きな木や岩以外は緑に覆われて見えない。

 騎士達は U陣形で前へ進む、中央にはダービットが構える。

数名のグループが幾つも有り、囲う陣形の外を進む

前方にバッファモー、巨大角持ちの牛の群れが見える。

 回りの草が食べられ、踏みつけられ見通しが良くなっている。

数頭の雄が群れの周りを警戒し、子牛は群れの中に入る、

群れから大きく外れた牛は騎士の小グループに狩られる。

開いた包囲網に、牛の集団が向かい始める、入った数の頃合いを見て

音を出し、叫びながら包囲の口を塞ぎ始める。

包囲から逃げ出そうとする牛に狩の手が伸びる、弓に魔法、投擲と傷付け、

弱らせ剣や槍で仕留める、それがセオリーだ。

戦闘が始まる頃、馬車から勇者達もダービットの傍で待つ。

 数十頭の群れが逃げ道を求め最深部へと近づく。

ダービットの頷きに志保の矢が、迫りくる先頭の牛の目を直撃、

深く刺さった様で、もんどりうって倒れ、起き上がらない。

別の牛に続けての魔法の矢の複射を繰り返し、傷付け弱らせていく、

その内の一頭に美咲のつぶても当たる、傷と衝撃で進んだ先に

武史が駆け込んでくる、動きを読んでいたのだ、槍を首に「ウリャ」

突き刺し仕留める。

別の一頭の前にも雄二が素早く回り込み、ヒットアンドランで

危なげ無く倒しガッツポーズ「やったぜ、楽勝」

雄二が気を抜いた途端、死角からの突撃され、逃げきれないと思われた

寸前、「最後まで気を抜くな」ダービットの剣が牛のこめかみを突きす、

「ドン」武史の盾に激突「ブモ~」と鳴き、その儘崩れ落ちて、

割り込みでかわされ、ぎりぎり難を逃れる。

倒れたのが最後だったようで、血抜きと回収が始まる、

勇者達が倒した数も3頭であり、初陣にしては良い戦果だ。

勇者達にとって、生き物を殺す手応えや血の匂い解体は正直グロイ、

女性達は食事の手伝い等もしていて、その際、見たり触る事もあり、

比較的落ち着いていたが、男二人は吐きそうになり乍らも、

処理を手伝う姿があった。

ダービットの首周りにスカーフが巻いて有りレンズ部分が覗く、

勇者達なら気付くだろうが、異世界では馴染みが無く、気付かれない。

勇者は自分達の事で精一杯、周りを見る余裕は無く、カメラはさりげなく切られた

 カメラOFF

その夕方、第六神殿の者と騎士の家族は美味しい晩餐となった。

ーーー

 画像は龍ちゃん達に頼めば、完璧なのが取れる。

知的生命体の目で見た動画と表現できる、しかし地震の画面でも

揺れも緩く、音声の強弱も無い完璧なものだ。

地震ならブレるし、撮影者がうろたえる画像や声も入る、ロストもある

それらが一切無いのでリアリティーが無い、臨場感を求めダービットと

カインと二人に依頼したのだ。

完璧なものはHP上に山ほどある。

ーーー

 一昨日は日本の終戦記念日が、龍世界の独立記念日。

そんな事を思いながら、警備をしている、

お昼に成る頃、ざわつき始めた、通行止めの付近でのイザコザらしい、

道路封鎖の看板の前に黒いリムジン数台と護衛車両らしき一団がいて

やおら拡声器を取り出し

「わたしは△△国の□□だ、交渉を要求する」

「わたし◇◇国大使、責任者との面談を要請する」

この場に龍世界の関係者は居ない事、道路先の壁迄行っても良いが

道路から出ない事、護衛は入れない旨と調査禁止を伝え通す。

この手の方々は口で言っても無駄、無線で壁際の自衛隊に連絡する、

車の先は100m程、スピードを落とさず侵入していく、漆黒の壁に激突

したのだが、激突音も無く止められている、タイヤは回転し、道路との

摩擦で煙を上げだした。

咄嗟に自衛隊員がドアに手を掛けた、ロックが無く開いたので、

運転手を引き出し、停車させる、後続車が後ろに止まる。

運転手は茫然としている、おそらく大使とやらに壁に突っ込めば、

張りぼてだから崩れるとでも言われ、やれと脅されたのだろう。

喚き散らす大使を壁の傍に連れてくる、足元から頭上に伸びる闇、

自分の影よりも黒く、月も灯りも無い闇夜の足元が、目の前に、

まだ昼間なのに再現されている。

 壁を下から上にと見上げる大使を、隊長さんが後ろからワザと押す、

軽く体が浮き、手を振り回し「うわ~~、えっ」殺されるような悲鳴が響き、

すぐに疑問符に、そう、奈落に落ちると恐怖に慄いたのが、両手が壁を押して

踵が浮いた状態で、視覚では見えない、存在しないかの様なバリアに、

手が触れる触覚で壁の存在にやっと気づいた。

後方の車の大使も傍に来て同じ格好をして確認している。

「はい、ここ迄、申し込みはWebで龍世界へお願いします」

隊長さんの声で隊員が運転席に座り封鎖地点に戻す、

あの壁の異様さに、呆気に取られて、気持ちが飲み込まれている間に

終わらせる為だ。

ーーー

 グラスカメラON

 異世界の民の扱いを見て、やはりホームスティしていて良かった。

バスに乗る為の移動すらキョロキョロ、うろうろ、もー小学生の遠足だ。

異世界人には地球人を一人は付けている、ステイで扱いの要領も解ってる。

「主殿ここの建物は高いぞ、上りたいぞ」「後でね」「約束じゃ」

「この数の人や乗り物は何処から湧くんだ、恐ろしいの」

「祭りか、祝いか、賑やか」「通勤だよ」「通勤とは何?」

「あの服良い、あ、あんなのも有りか」「失礼だから指差すな」

「あれがフワフワ、あの子のが可愛い」「なんじゃその表現」

「それにしても露出がおおいね」「あれはこちらでは普通だよ」

「チョロチョロ走るのに乗ってみたい」「はいはい」「約束じゃ」

この日どれだけ「約束」したやら…

季節的に衣服で隠せず、コスプレ風に見せているが、それも目立つ

まとわりつく人もいて、バスに乗った時はほっとした。

「本日は〇とバスをご利用頂きまして、ありがとうございます…」

車掌さんの話もそっちのけで、窓にかじりつき、

あれやこれやと、隣のステイ先の者に説明を受けている。


 すぐに築地の有名なすし処「すしいっぱい」の駐車場へ滑り込み朝食となる、

盛り付けを見て「綺麗じゃの、これを食べるのか」「食べる物を飾るのか」

と異世界組、「美味しそう」「寿司だー」一族の声だ。

「なるほど、見事に同じに作って有るし、色とりどりで見事よな」

「汁と言うのか、塩味じゃが魚の味がする、美味いの」

横で騒ぐジュリに分けてあげるが足りなそうだ、この後、

市場の見学で、やきとり、くしかつ、浜焼き、生ガキと食べまくり

時間が来てバスへ戻る。

手に持った「たこ焼き」を眺めて、真剣な顔のジュリを見つめると

「あのな、微妙な味が判るんじゃ、先程のすしじゃが、一個一個が

味が異なる、食感も異なる、今迄食べるのは腹を膨らます為、生きる為

味は血の味、塩気じゃな、あと違いは噛んだ食感程度で丸呑みじゃった。

焼き鳥は一羽丸ごとでは、部位事の違い等、味は判らぬが、

肉の部位が、形からして種類事に違ったんじゃろ?、

チマチマする事に価値があるとは、初めて気づかされた。

それに味の種類も甘い、苦い、甘辛い等を教えてもらい知った」

僕を見つめながら、告白でもする様に続ける

「人型は興味深い、小さいからこそ詳細が解るのじゃな、

これまで知らなかった、お主を求める、あの娘達の気持ち、良いの~、

わらわも判る、あの子らと混ざって生きてみたい」

「はいはい、よろしくジュリさん」適当に答えると、

近くの座席から溜息と「あ~、浮気者」の声が聞こえる。

お昼近くに成り、さすがにガイドさんも、普通のお上りさんとは

異なると気付き、一部の同乗者をメインに案内をしている。


 昼食で初めて食べる天ぷら、老舗の大江戸天屋でたべる

「ちっこいエビに、魚を開いた物か、ふむ、ご飯とやらと一緒に、

もぐもぐ、これは野菜か、甘いのに辛いのや、汁を付けると味が…」

皆もジュリと似たり寄ったりだ、その儘、浅草観音と仲見世に

大提灯を見ても、土産物もあまり興味も示さず、ひたすら匂いの元へ、

揚げ饅頭、おかき、きびだんご、ジャンボメロンパンと続く、

炭酸飲料に驚き、自販機に騒ぎ、メンチカツ、芋きんつば等買い込み

再びバス移動、雷おこし詰め合わせをガイドさんに貰い、食べだす、

食べている間に深川江戸資料館へ、皆は殆ど素通りだが、

商会の面々は漆や象嵌等の価値に溜息をつく、武器や刀剣も興味深々

最後の自由行動、柴又、帝釈天の参道、まだ食べますか…

あんこ、黄な粉、よもぎ餅類にせんべい、最中、太るよ~、

お土産に名物草だんごを貰い、もう、ほうばってる。

 夕食の「川端」でアナゴ丼…

「ちまちまで漬物とか言う、塩味じゃが微妙に違う、

アナゴと飯は会うの~、おかわり」「わたしも~」かわいい声が4つ

特別注文をしましたアナゴ重、良く食べるねハハ…

帰ってきました東京駅丸の内南口、予定どおり柱の陰で転送宿泊先へ

価値観の違いを実感した一日だった。

 グラスカメラOFF

ーーーユーチユーバーのお仕事

〝異世界生活、四人組編”

②強く成りました

 2アレス大陸アラル神国、大草原 バッファモー狩りの勇者

〝異世界生活、龍司編”

⑤ととばす、東京観光

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