第4話 贄の塔の真実

 街の上空に3匹の竜が現れた。

城の上空に一匹が降りてきて、民衆は姫だと判ると落ち着く、

凛とした声で話し始める「私は贄として…、贄の塔は王子が…」と、

自分の顛末、贄の塔の本来の意味、伯父夫婦事情等を語る。

竜は贄と認識せず、最初の約束で夫婦や良い関係を築く礎と考えられ、

口で運ばれ、殺されるでもなく過ごし、ここに叔父が証人として居る。

贄の塔での出来事も知られており、民衆は話に納得を示す。

続き龍司が話し出す、隣国での事を詳細に、これも開戦前日起こり、

戦わずに済んだ出来事で、情報も入っているし、関心は高い。

近い将来、不安定な隣国の帝国を軸に騒動が起こる事を付け足し、

この国も伯父と姫が加わると不安定になる故、戻らぬ事を公表、

ドラゴンに護られし国へ移住を募集すると宣言した。

 反応を待つとやがて、熱狂がきた、「姫様万歳」「姫様万歳」…

「姫を信じ、僕を信じてくれるなら、瞑目し心の声に答えよ」

[我と絆を結べ][オー]…[近い将来迎える、しばし待て]

1/3 程度の人が光り、熱狂で高ぶり、雰囲気に飲まれただけの者、

暴れるのを狙う者等、残りの多くの者には、何も感じなかった。

・・・

 姫の叔父に当たる者は二人、仲も悪く性格も良くない。

伝手の有る王妃と子らの後見を名乗っていて、暴発寸前状態、

隣国との戦争回避で、悪化する要素が強い。

「勝手に人の物持っていくとか、ホザイテロ」

「身を引くのは褒めてやるが、民に付いてこいだと」

「捕まえろ、反乱罪だ」「謀る奴らを捕まえろ」

時間を置かず城が消えた、軍、協会、役所と関連施設も家主達を残して消えた。

トラゴンも時を同じく飛び立ったが、姫の身内等が多数増えていた。

ーーー

 竜達の地と平野の端迄20~30kmは有るだろう。

その端に大きな湖が有り、平野で有るが人手が入らない大森林、

鬱蒼たる木々で埋め尽くされる一画に、40キロ四方が伐採されていた。

視れば奥まった小高い地に城郭が建ってるし、一部の空き地は丸太や

岩石で埋め尽くされている、この辺りでとれた物だろう。

 働いてるのはドラゴン達、魔法や力業、変身で臨機応変にやってる

働く、創造するのが面白いそうだ、機械よりも遥かに効率が良い。

食事量もドラゴニュートなら人の、2~3倍で、変身しても大丈夫

との事だし、味が有るのが良いそうで、美味いを覚えた。

ーーー

 竜族の元、保護された人々は元々自由だった、と言っても龍の巣の近辺だけだ。

竜の巣域と言っても、高地で落下も、迷子にもなる、小動物だって危険はあるし、

動き回る限界もあり、竜に飼われた人族、ペットだ。

 自分達の食事を作る以外、する事が無い。

食事用に獲物をくれるし、普段は小竜用の肉なら常に置いて有る

大きい竜の食べ残しを持ってくるだけだ。

火種は確保してるが、岩の間に蒸気が噴き出す場所が有り、利用し蒸す事ができる、寒い夜は暖かい岩盤に寝ればいいし、小川に温泉が流れ込み、浴場も有る。

 暇つぶしで生糸から絹を作り、麻や木綿も紡ぎ、織る。

簡単な武器は作れるが、持っていても脅威にならず、竜は怒らない

果物、野菜、香料等で、自分達が美味しいと思う物を作る楽しみを

彼らは極めていた、それを竜達と分ち合える機会がきた。

ーーー

 兵舎の食堂で竜達が満足そうに食べている。

それを見ながら、姫の叔父ロベルトは嬉しそうだ。

「ねえ、貴方こんな日が来るなんて、諦めなくて良かった」

「ナタリー、君が人なら望めないが、ドラゴンだから望める」

「龍神様に感謝、龍司様に感謝x2」

窓口に「もう一杯くれ」ドンブリが突き出される

「はいよ、沢山食べてねー、まだあるよ」山盛りについで渡す

ニコニコと互いに微笑む

 昨日、ロベルトとナターシャは兵舎の一画をもらつた。

その夜結ばれた、そして今朝に至るが離れられない二人。

人の基準なら「いい年こいて」そんな二人を竜達も見守っている。

ーーー

 城が消えたエーツ帝国、元の4国に分裂するのは時間の問題、

ボンクラ三代目であるが、長男で後継ぎだから皇帝に成れただけ、

城が無ければ宝物も金も無い、権力を振り回しても、誰も動かない、

兵を抱えるのにも金が要る、戻って来ないと判る相手に金は貸せない、

身包み剥がそうとする輩と、権力を利用しようとする輩に囲まれ、

道化を続けるのも後僅か、旧国の有力貴族が動き出している。

ーーー

 アナト王国も南北で分裂の様相だ、帝国の旧国と繋がる気配も。

ただし、ここの場合は担がれる王妃の出自が悪い、つまり金が無い、

もう滅茶苦茶な空手形が切られる、両陣営共、何でもアリ状態。

ーーー

 不穏な状況の中、朝に成ると2つの城の消えた国の、国関係の建物の多くと、

更にアクドイと評判の家も消失していた。

 その夜、絆持ちの住民は不思議な夢を見た、家族全員での面接だ。

龍司様が微笑みながら現在の仕事と、もし成りたい仕事で農家、商家、

製造等の希望と、住んでる家の移転の有無の希望等だ、どうせ夢だし、

子供共々、沢山希望して[目覚めたら新しい土地に居る]と言われた。

一家で喜んで、夢の中で再び眠った。

ーーー

 目が覚めた時、何もして無いのに、嬉しい感情で心が満たされた、

絆持ちの同族で何かが起きている、心がそう叫んでいる。

家の中は変わらないし…「貴方、外に出て」妻が叫ぶ、外から大歓声

「何処だここは?」「ここは私達の家よ」

「広い石の道に排水溝…」「途中で黙って、どうしたの?」

「この街の様子が何故か判るんだ」「あら、そうね私も判るよ」

「友達と話してくる~」子供達も集まり

走り回っている「おい、食い物やお金は大丈夫か」「ひと月以上ね」

「家の中、家の周り、近所、街中皆見て回りたい、急いで食事作るわ」

「休みは3日、ちゃんと頭の中に連絡が来てるんだ…、急ご~」

・・・

 絆でのデータ共有化である。

脳はCPUであり、AIの原型で、記憶と言うメモリーが付属する。

脳の使用量は全体の数%しか使われていないと言われる、

一生掛かっても得られる知識が、その程田の量だという事だ。

なら、脳に他人の知識や経験等を共有し、使用量を上げる事が

出来たら如何なるかである。

知識を例えで言うならWiki、NET検索のデータがそれに近いだろう。

SNSやインスタグラムには、ほぼ縛りが無く、正確なデータには

程遠い、曖昧、憶測、風評等の混じる物は判断材料に成らない、

絆がその縛りに当たる、他人を思いやる気持ちの強度が基準だ。

・・・

 「父さん、あの人達すごいね~、力持ちだし、身体も大きい」

「そうだな、あの人達はドラゴンなんだよ」

「空を飛ぶドラゴン?」半信半疑で聞く子供に「ほら、あそこ変身しただろ」

「見て見てあんなデカい木が抜けた」指さす子供

「ドラゴンって怖いんだよね?」「そうだな、そう思ってた」

「あそこの人達、ちっとも怖くないけど?」首コテンの可愛いい仕草

「父さんもだ、ホントに怖くないんだぞハハハ」顔引き攣ってますよ

・・・

 「お母さん、このお城アナト国のに似てるよ?」

「きっと同じかな」「どうして?同じなの?」

「チーのお家も、朝起きたらここだったから、運ばれたのよ」

「ふーん、おっきい広場有るし、虐めっ子いない、意地悪い子はいるけど楽しい」

「初めて見る遊び場に知らない物色々、知らない子もいっぱい」

ーーー

 「貴方もこの街に?」絆持ちの親近感を感じ振り向くと商売仲間が

「姫の贄の儀式で、居ても立っても居れず見に行き、その際にです」

「確か隣国のエーツ帝国の方なのに?」「はい、国ではなくです」

「あれ程聡明で、やり手なのに、お気の毒な事と思っておりました」

「御用商人では姫の望みが叶わなかった、見立てが下品なんです」

「センスですか~、確かに色、形は大事ですな」

「弱小の商人はチャンスのみ、逃がせませんよ、言葉だけでも、

見えぬ誠意や努力が理解して戴け、大事にされると」

「解ります、横柄に「うむ」より、会釈で「ご苦労様」ですねハハハ」

・・・

 「この辺りが製造や加工場予定地、アナト軍の倉庫に武器舎、高炉

見覚えのある工場も多い、いやはや、ここ迄やってくれますかクク」

「エーツの工場も有りますよ、取り引きで見覚えが有る、倉庫や資材

置き場の材料も当分良い品質ですね」

「詰所や空き家は事務所や倉庫用ですかね?」

「適当うに仕えらしいです、龍司様は太っ腹ですよ」

「早急に職人、商人の組合立ち上げでしょうね」

「○○、xxこの方等、あたりかな」

数人の名前の発言を聞いて頷き「新人の教育、不足商品の生産か~」

 「今迄ならこんな緩くやったら、溜め込んだり、横流し考えますね」

「今日の食い扶持さえ無きゃ、私でもやるかも」

「ごもっともです、先渡しでコレだけの量渡すんですから」

「しかし、戦争に駆り出されない、ドラゴンに守られる環境、それで

食住と職まで心配してもらえる、悪さを考える必要有りますか?フフ」

 「今後、輸送も変わりますよ、転移で大規模な輸送ができるなら

他の大陸との商売も必要になり、わしらの出番ですよ、薄利多売をする」

「庶民に安く売って皆が富めるですか、あ~、そうでしたね王侯貴族の

石潰しはいませんでしたね、高く売る相手は他国ですね、ふむ作戦は…」

顔を見合わせ、大笑いを二人で始める「我らの考える範囲をこえますな」

「いかにも、いかにも、心にゆとり有るって言うんですか、先が見える」

「そうですね、この数日考える事が増えました、どうやって食べるか、

食べさせるか、戦争の不安、理不尽の不安が無くなると、世界が変る」

「姫様と、あの方々に感謝です、皆の為は自分の為」












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