第3話 贄儀式の理

 抱締めていた物が動く気配で目が覚めた。

顔を見合わせ時、お互いの気持ちが解る、もう言い逃れは出来ない。

腰と背中に手を回し抱締め、お腹の上に彼女を乗せる、一瞬の反応、

「おはよう、僕のお姫様、僕の分身も君を求めている、感じるよね」

僅かに頷く姫の頭「有耶無耶にでも、僕の物にしたい所だけど、

少し待ってくれるかな、神龍との件と元の世界に、好きな娘がいる

フフ、ここ迄きて他人には渡さないよ、分身が暴れない内に降りて」

一度強く抱いて手を放す、彼女は四つ這いになり見つめ合った後、

軽く口付けし「好き」離れた。

ーーー

 少しボサボサのパン、塩味の野菜スープ、契って、浸して食べる。

携行パンの固焼きに比べれば、焼き立ては何倍も美味しいし、

昼間の暑さでは塩気は必要。

 「ダンナ、ガタイの大きい男が合わせろと言ってます」

緊張気味に宿の親父が言ってくる「入れてくれる、追加二人前」

銀貨を渡しながらお願いする、昨日の事もあり警戒は必要だ。

 見回し客の中から僕の顔を見つけると、真っ直ぐ向かってくる、

アーシアを隣に移動させ、向かいに座らせる。

「ドランご苦労様」アーシアは僕の言葉に目を丸くし、見つめる。

「昨夜の報告通り、これから出掛けたいのですが?」

「食事して行こうか、人間二人前だけど」「人の時はそれで充分」

運ばれてきた料理に齧り付く様子を見ながら、昨夜の夢を思い出す

ーーー

 [何故咎めなんだ?」巨大な竜が問う

「贄を抱換えて、恐れもせず口に入りました」

[あの窓から自ら飛び込んだのか?」

「形としては、あの国は贄を供した、横取りしたは別の国の者」

「お前の歯で割れぬバリア、異世界の神、確かに異質な力を感じる」

「神を従える者等在り得ません、お会い下さい、出会いに幸を見ます」

「よかろう、次の竜王はそなただし、纏めてみよ、進めるが良い」

 長老達は、現竜王の言葉に従い、意義は無かった。

若い竜達も次世代の王に従う、ただ一匹を除いて「わたし戦うわよ」

「やっぱり言うと思った、感じると良い、格の違いを、判れば成長」

「なにさ、同じ羽化卵じゃない、見てなさい」プンプンと怒る

ーーー

 「美味かった、久しぶりの人食だ」「そっか、ご馳走様」

「ご馳走様?」「僕の国の食事の作法だよ、食べる前「頂きます」

食べた後「ご馳走様」、手を合わせて、唱えて、敬意を示す、

人は命有る物を食べ、その命を頂いて生きてゆく、命への感謝だよ」

「なるほど、命て命を繋ぐか、良い事を聞いた、さて主様行こうか」

ーーー

 ドランの背中にバリア球を固定、中は空調を掛けて飛んできた。

昨日の3時間程の距離を30分、さらに姫の国の海岸から海を渡る、

2時間程で海岸線から、大山脈へ、山頂付近は雪と氷の峰々が連なる

地球規模なら7~8千はあるだろう。

峰の中央付近の最奥、2千程に鎧のツバの様な開けた場所が見える。

そこへ向かう様だ、[リフレッシュ]何度か目だ、[助かる]

 [アーシアを安全な場所へ頼む]

[来たか、適当に遊んでやって欲しい]頷く、

空中に留まり、相手を待つ、射程に入ったのか火炎が襲ってきた。

近づきながら吐き続け、満足したのか火炎の消えるのを待つ様だ、

消えたと思って竜が覗こうとした途端[威圧]気を抜いていた竜、

身体が震えだし、上下から水が溢れ出す、空中にも留まれず落ち始め

「怖い怖い…」震えるまま落ちる。

[バリア][浮遊]落ちを止めバリアで引っ張り、ドランを追いかける。

 50mは有るだろう巨大ドラゴンを中央に、半円にに数十頭が囲み、

その中心にアーシアとドランが控える。

その様を見、トラゴン達が後の山々のフィギアの様に見え微笑んだ、

中央のドラゴンに相対する様にアーシアの前に降りる。

バリアを解きつつ[クリーン][リフレッシュ][カーム]と続ける

「ドラゴンの王と視てご挨拶をしたいが、よろしいか?」

ドラゴンから威圧が来る、こちらも[威圧]ドラゴン達全員に向け放つ

半数以上は失神し、意識ある者は震えと失禁で床へ、へばりついた。

【龍ちゃん、出番だよ】龍たちを見下ろす位置に1000mは有る金色の龍

その出現に竜王を除き失神した。「失礼した、我も見誤った」瞬時に

「ゴロン」と服従のポーズをとる

「話し難いから座ってくれる」「神に失礼に当たらぬか?」首を振る

「僕の名は龍司、上のは龍ちゃん、ねー龍ちゃん、具現できるんだね」

「そうだな、我も驚いた、お主に拠るのだろう」「お話しよろしいか」

「どうかした?」「そのお姿は我らと異なるのですが、同族感が…」

 「神様は見る人で、何にでも見えるんだよ、今の姿は僕の見てる姿、

そして、異世界の僕の国付近のドラゴンの姿、胴体が蛇の様だよね。

君達と同じ姿のドラゴンも別の国にいる。

トラゴンで総称しても、字で書くと君達は「竜」、神様は「龍」

そろそろ起こしていいかい?」「お願いする」

 [クリーン][リフレッシュ][カーム]竜達が復活した

竜王が大声で話し出す「竜族の皆の者、只今を持って王を譲る」

竜達が騒めく、「お名前を龍司様と言われる、空の方は神龍様

龍司様の守護神である、我ら一同、今よりお仕えする」

全員が服従のポーズをとる、「竜王は、そのままで僕のお目付け役」

【龍ちゃん、竜王に加護をお願い】竜王が淡く光り出す、

[他の皆は僕との絆を結ぶよ、よろしくね]全員が淡く光る。

奥から人族の一団が現れ、末席に並ぶ、彼らも光っている、

 【我は龍神、此度縁有って結ばれた、異世界にも同族が居る

お前達は人に成れず、異世界の者は竜に成れぬ、だが龍司が現れた

この星の将来等、今の我らには意味は無いが、先の世の、子や孫の時代

進化の扉を開く為、隆司と共に歩みゆくぞ】

 [皆座って聞いて、僕と絆を持った者は能力が覚醒し、

ドラゴニュートに変身出来る様になる、ドラン見せてあげて、

次に捻話ができる、今、口で喋って無いでしょ、絆持ち同士でもOKね、

それで、一番大事な事は相手の気持ち、感情が判るんだよ]

ドランの変化に皆が見入る、竜王の心にも皆のその驚きが伝わる、

「贄の意味がこれか、人と成れば、これ程の心の動きが有るのか、

先程の「威圧」生まれて初めて「怖い」と思った」と、竜王が語る

「贄の人を殺さないで、守ってくれて感謝だよ」「ごめんなさい」

「反省してれば良いよ、君の名前はドリー、少し行動が心配だから、

僕の傍に居て、アーリアを守ってくれるかい?」

[ドリーがティムされました]「はい龍司様」

ドラゴン達が人型に変身し、燥ぐ様を見ていると、中年の男女が

寄ってきて「ありがとうございます、これで夫婦に成れます」

 男は姫の親の兄で、贄だった、女は贄を食べる竜の方だった。

人の世では、この儀式が何の為始まり、続いているのか失われた、

竜側は長生きの為、口伝で伝わっていた。

・・・

 竜の姫が若者に恋をした、自分でも異種間では子も成せず、

生活や思考も違う、恋も出来まいと思うが…、恋をした。

ドラゴンの住む大陸から羽のトレーニングでこの大陸へ渡る、

成鳥ならば1時間、若い姫竜は3時間程掛る日課を繰り返す。

 その日も海岸線まで来た時、渡る大陸の方を見て涙する若者を見た、

ただ、姫の姿を見ると逃げ隠れた。

同じ事が続く、その若者は海の向こうの者で、近くには仲間も居ない

何かの理由でこちらに居るが、向こうに戻りたいが方法が無い

その様に思えた、竜が人の事を考えた、前代未聞の出来事だ。

 その日は海岸に倒れていた、生きてはいる様だが、逃げなかった、

逃げたくても動けなかった、病気で熱が高かった。

苦しむ姿を見て、なぜか心が痛んだ、日頃は虫けらなのに、なぜ…

口に含んで海を渡り、海岸の街の波止場に置いて、人に委ねた。

竜が飛び去ると、人々によって手当てが成され、数日で回復し

身元がこの国の王子で、海外に視察にでる途中の難破だった事、

王子は目が覚めた時、人々が居て、自国民と知り、さらに驚く、

望郷の念を思い出し、事の顛末を聞き、会う事を決心する。

うろ覚えだが海岸で高熱に浮かされ、寒さに震えていた時のお湯は、

口の中の唾液、でもあれで熱が引いた、血液も万能薬の材料なら、

薬効が有っても不思議はないと思う。

八方手を尽くし会話の手段を探す、捻話の玉と呼ばれる一対の玉

それで会話ができる、王子は喜んだで、波止場に佇む。

時折様子を見に姫竜が旋回してゆくからだ。

 波止場に佇む様になり3日目、雲一つなく、晴れ上がっていた、

海の向こうの大陸を眺めて、思いに耽っていると陽が陰る、

見上げると…大きい…あれに運ばれたのかと、今更思う。

「おーい、おーい」声を限りに叫ぶ、何時もは旋回を一度で飛び去る、

三度回り飛び去ろうとした時、王子は球をもつ両手を高く挙げた。

陽の光が球に反射しキラキラと輝く、竜の光物収集の性格に負け、

竜は波止場に降りた、逃げると思った王子も佇んでいた。

竜の眼前で皮袋に球を一つ入れ、足の指に縛り付け、対面する位置で

自分の持つ球に喋りかける「ドラゴンよ、我が命を助けてくれて、

ありがとう、感謝しかない、難破後に孤独に苛まれ、どれだけ強く

願っても叶わぬ帰郷に心が折れ病に成った、目覚めた時、まさか

自国とは夢かと思った、此方での成り行きを聞き、向こうの大陸の

ドラゴンと理解して、この感謝の気持ちを伝えたく球を手に入れた。

向こうで貴女を見て逃げ回った、今の様に話ができたら結果は違う、

種族が違っても、思いやる気持ちを知った、もっと話がしたい」…

 やがて王子は王と成り、妻を娶り子を成すが、姫竜への思いは

死ぬまで続き、結ばれる道を探し続ける。

塔で次世代の交流が行われていたが、人側は戦で球が失われ、

世代も移り塔の意味は失われ、贄の儀式になっていった。

竜族には口伝があり、言葉は通じなくとも保護を続け、

遭難者等も同様に保護し、一部は結ばれて増えていた。

さらに今回のドラゴニュート化で、アーシアの伯父に恋仲の龍がおり

結ばれる事が現実となると、二人の思いは時代を経て終結した。

・・・

 【ねえ、龍ちゃん、竜王に名前が無いと呼び難いからドルンで

いいかと思うんだけど、僕が付けるとティムしちゃうんだよ】

【反抗できねば監査にはなれぬか、意味も含め我が命名しておく】

【この大陸、広そうだし、人種は居るのかな?】[おりません]

[ドルン、相談なんだけど、この世界と、僕の世界の両方の仲間を

ここの大陸に住まわせたい、だめかな?]

[フフ、主様も人が悪い、我が断われますまいてハハ、よしなにフフ、

実は、生まれて初めてワクワクしておりまして、毎日が同じ繰り返し

特に刺激も無く過ごした千余年、それが今日の為とすら思える大刺激

ドラゴニュート化で変わる世界観、見せてくだされ主様の世界を]



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