第7話

僕は早速、車の片付けを手配した。とにかくこの家に道子の居場所があってはだめだ。また、僕は裏にある物置小屋にも一抹の不安をおぼえた。

数日後、確認に行ってみる、案の定、毛布が運ばれていた。道子は家に対して相当の執念と執着をもっているようだ。 僕は苛立ちと不気味さが交差する不安な気持ちになっていた。

それから僕は一大決心をした。解体だ、建物、外構、庭木すべてを撤去した。

土地だけになった。諦めるだろう。しかし道子は度々現れた。最早、僕はなすすべがなく諦めに近い境地になっていた。(暫く物件から離れよう)

数か月がたった。突然、民生委員から電話があった。道子が亡くなった、西側の蛍川の河川敷に倒れていたそうだ。季節はたまたま蛍の季節になっていたせいか容易に発見された。

僕はその知らせを聞いて引かれるように物件に向かっていた。到着すると辺りはうす暗くなっていた。エンジンを切ると暗さが余計感じられた。フロントウインドウから何気なく物件の土地を眺めていた。するとゆらゆらと3匹の蛍がこちらに向かってきて、やがて蛍川のほうへ去っていった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

競売屋(けいばいや) 小深純平 @estate4086

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る