第4話
秋も深まり庭は枯葉で埋まっていた。道子は夫が手入れしている庭を少しでもきれいにしておこうと朝早くから枯葉を集めていた。家の中から電話が鳴った。病院からだ、則夫の様態がおかしいということだ。道子は急いで病院へ向かった。
則夫は長い間、反応も示さず寝ていたが、今日は頭を振りながら口をもごもごさせていた。道子は則夫の耳元で大きな声を出した。則夫はそれに反応したらしく必至に瞼をぴくぴくさせた。しばらくするとうっすらと目を開いた。道子は驚きと感動で何度も則夫の名前を呼んだ。則夫は大きく目を開いて回りを見回した。道子に気づいたらしくかすかな声で名前を呼んだ。道子は涙ぐみながら大きな声でこたえた。そばに立っていた看護師も則夫に応えて安どのため息をついた。看護師は今日はこのくらいにしてと、道子を室外に促した。
道子は家に帰ると則夫の退院が見えたような気がして部屋の掃除を一生懸命した。
それから毎日病院へいった。則夫の様態は少しずつ良くなっていった。医者は奇跡的な回復だが、いくつかの障害は残るだろうといっていた。それでも道子は意識を回復した喜びで満足していた。1ヶ月もすると則夫の体調もすっかり良くなり退院日も決まった。則夫は医者が言ったように左半身の不随と一部の記憶喪失は残ったが。
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