第2話
僕は車に乗るとアクセルに力が入った。加速をつけ、早く遠ざかりたい気分になっていた。(この案件の明け渡しは個別対応では難しいかもしれない、裁判所による法的な処理が必要だ。)先々の困難さを僕は直感した。
翌日、僕は裁判所で物件の明け渡しを要求をする引き渡し命令書という法的な手続きをした。引き渡し命令書は1週間以内に占有者に届く。普通の占有者なら裁判所の命令にはそれなりの反応を示し交渉のテーブルに着く。
1週間後、僕は再び物件を訪ねて引き渡し命令書の反応をを確かめることにした。
やはり玄関の呼び鈴には反応がなく、僕は何度も大きな声で呼びかけた。ようやくうす暗い奥から道子らしい女が現れた。彼女は髪の毛を後ろにまとめた小ぶりな顔で僕を睨んだ。年齢の割には細身の体ですっと立っていた。[なんだいサラ金や、まだ用があるのかい。][いや僕は裁判所の競売で]僕は、彼女の不気味さに声を詰まらせた。彼女はさらに続けた[サラ金め人の家に勝手に土足で上がり込んで無理やりハンコを押させやがって、そしたら競売だって、そんなの知らねえよ][いや僕は落札したもので]道子は僕の言葉を遮りそれ以上の会話を望まず(帰ってくれ)の一点張りだった。
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