第25話 春夏秋冬①

僕の名前は、福石秋人ふくいしあきと高校3年生だ。


僕たち4人は下校途中だったはずだ。


部活の帰りで遅くなっていた僕たちは辺りも暗くなっていたため


近道をしようと工事中の看板を無視して通り抜けようとしていた。


涼宮 春すずみやはる


戸田 夏美とだなつみ


福石 秋人ふくいしあきと 


真鍋 冬矢まなべとうや


僕たち四人は中学時代からの中で、高校に入ってからは周りからは春夏秋冬と言われているほどの仲良しだ。

部活は違えど、帰宅路は一緒で家も近いためよく一緒に登下校している。


急いでいたとはいえ、危険だとは分かっていたが工事中の看板を無視して僕たちは進んだ。


進んでいたはずだった―――



気が付いたら気絶していたのか、僕たちは見知らぬ場所で目を覚ました。


「噓でしょ?まさか誘拐?」

春は、辺りを見渡しながら怯えている。


「ハルちゃん、大丈夫だよ。だって縛られてないじゃん!」

夏美が、そう言いながら春を抱き寄せて慰めている。


「しっかし、どこなんだよここ?」

冬矢は、呆れながら言う。


「いや、僕にも分からない……。」

辺りは真っ暗だ。僕はポケットに入っていたスマホを使い辺りを照らしてみる。

どうやら、森の中のようだ。

妙に静かな鬱蒼とした森だ。

動物の鳴き声すら聞こえない。


「ここでじっとしていても、危険だ。歩いていけば街につくさ。」

僕は三人に向けて言う。

僕たち4人はゆっくりと立ち上がりお互い持っているスマホのライトをつける。


草木を掻き分けながら、進むと目の前には洞窟があった。

「遭難した時は、あまりその場から動かない方がいいって親父が言ってたぜ。」

後で、冬矢が声を掛けてくる。

「そうだね、だとしたらここでじっと待って助けを待った方が良さそうだ。」

僕は言う。


「ねぇ、今気が付いたんだけど電波圏外だよ……。」

春が、ブルブルと震えながら言う。

「大丈夫だよ、春ちゃん……。」

そう春を慰めながらも夏美の手は震えていた。


「なんとかなるさ、この洞窟なら寒さも凌げそうだ。」

僕は二人を励ますように言う。

「そうだな、俺こんなもん持ってるぜ?」

冬矢はそういうと自慢気にポケットからジッポを取り出した。

「なら薪になりそうなのを集めよう。」

僕は提案する。

「冬矢くんなんでそんなの持ってるの?」

春が不思議そうに尋ねる。

「不良になってしまったのね……。」

夏美が茶化すように言う。

「ちっちげぇよ!親父のだよ。親父がいつも煙草吸う時、これをかっこよく使うの見て、真似したくなって朝リビングに置きっぱなしだったからつい持ってきたんだ!」

慌てふためく冬矢、僕は冬矢が夏美に好意を寄せているのを知っている。

茶化されて嬉しさもあったのだろう、顔が真っ赤だ。


「ははっ、そんなとこだと思ったよ!」

夏美が笑う。

それにつられるように春も笑顔になった。


空気が少し和んだ所で、僕たち離れないように気を付けながら薪になりそうな

小枝などを集める。

「おい、これなんてどうだ?」

冬矢は、長くて太めの木の枝を見せてくる。

「ダメだ、まだ生木じゃないか、これじゃあ、火がうまくつけられないよ?」

「ちぇっ、駄目か……。」

そう言いながら、冬矢は木の枝を腰のベルトに差し込む。

「剣士みたいでかっこいいだろ?」

「ははっ、様になってるよ。」

僕は、剣士というにはあまりにも似合わない彼を見て笑った。

「おっおい!馬鹿にすんなよ!」

冬矢は、腰から枝を引き抜き振り回す。


「うわっ危ないって!」

僕はそれを躱す。冗談も行き過ぎている。


「こらぁ~男子!ふざけないでちゃんと仕事しろ!」

夏美の怒号が響く。


「はぃ、すみませんでした。」

冬矢は、声も萎み落ち込んでいた。


4人力で合わせたからか一夜は越せるであろう薪が集まった。

僕たちは、洞窟の中へと足を踏み込む。












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