第23話 楽しいダンジョン運営①

我は引きこもりのダンジョンマスターである。


訳あって我はこのダンジョンから出ることが出来ぬ。


だが、ダンジョン生活は思った以上に快適である。


我は今日もダンジョンをダンジョンたらしめるべく


働くのであった。



うむ、順調に整備されておる。


ゴブリン達は労働力としては素晴らしい働きをしてくれている。


最初は何もなかった洞窟であったが、着々とダンジョンらしい

仕上がりになってきた。


祭壇のある所には装飾品が施された玉座もできた。


我はそれに腰を降ろす。


ダンジョン内の拡張は、ゴブリン達が日夜働き着々と進んでいる。


そろそろ戦力の増強を計りたい。


我は祭壇に祈る。


”おお、久しいな。何用だ?”


我は久しく、神の声を聞いていなかった。

少し懐かしくも感じた。


「神よ、そろそろ戦力を増強したく存じます。」


“そうか……十分にマナも溜まっているようだしいいのではないか?“

少し、退屈だったのか神の声に張りがないように感じる。


「しかれば、スケルトンを所望します。」


"スケルトンか……それは良いが1つ残念なお知らせだ。"

神はばつが悪そうに答える。


「はて?残念な知らせとは?」

神にも不可能がある事に我は疑問をかんじた。


"ふん……疑っておるな、残念だがそこにはスケルトンを呼び出すための贄が足りぬ"


「贄?それは?どのような?」


"人間の死体だ、そしてダンジョン内に墓地を作れ"


「ふむ、なるほど……。」


何となくだが理解した。要するに召喚するための媒体が必要なのであろう。

墓地と言うものは異界の書物でもみたが、人間を埋葬するための施設のようだ。

それを作れと言うのだけが理解できなかった。


"お主の考えてることは手に取るようにわかる……墓地を作る理由であろう?"


「はっ、お察しの通りでございます。」

私は考えを見透かされた事に畏怖の念を抱く。


"死体を埋葬するのだ、そうする度に魔物として何度でも蘇る―――"


この世界では、死者を復活させる魔法や薬は当たり前のように存在する。

なるほど、死んだ人間をこのダンジョンと言う牢獄に閉じ込めるための墓地で

あるのか……我は納得した。


"話は以上だ……私は少し休む。吉報をまっているぞ―――"

そう言い残すと、神との交信が途絶えた。


「なるほど、戦力増強への課題はまずは冒険者達を誘い込んで殺してしまうのが早いか……。」


我は、思考した。


ダンジョンの入り口はまだ閉ざされている。というよりも我の力で外から入ってこれなくなっているのだ。


この門をどこへ開くかによって、外の世界と繋がり外の世界では突如としてダンジョンが現れたように見えるのだ。


「だが、外の情報が乏しい……。」


我はさらに思考した。


「そうであった!」


名案が浮かんだ。外へ解き放ったコボルトを回収する時が来た。

だいぶ前に解き放ったコボルト達は未だに戻ってきておらず。

我はすっかりそのことを忘れかけていた。


「大方、三体の内二体は冒険者にやられたのであろうな……。」


私は、真っ赤なマフラーを授けたコボルトを思い出した。

やつには魔術を施している。

死にかけていたなら戻って来るはずだが、まだ戻ってきていない。


「うむ、あまり考えたくはなかったが生け捕られたかもな……。」

我は、強制転移魔法を使いやつをここへ戻す事にした。


(コボルトよ、我の念じに応じよ。)


我は、強く念じる。身体のマナの大半を吸い出されるような感覚。

転移魔法には、膨大なマナを消費する事は分かっていたがここまでとは

計算外の事に我は、戸惑いながらもさらに念じる。


(我の前に姿を現せ!顕現せよコボルトよ!)


薄っすらと魔法陣が我の前に浮かび上がりはじめ、それはどんどん

光を強めていく


光が目を覆うほど発行し始めた時、魔法陣の真ん中に見慣れたコボルトが

顕現した。


「グルルルッ?ニンゲンコロス……。」

人間に対して、強い恨みの念を呟きながら

コボルトは丈夫そうな縄できつく縛り上げられぐったりと項垂れている。


「久しいな、コボルトよ……。」

我は問う。


「グルルルッ?ココハ……イエ?アルジイル?」

驚いた様子で、辺りをきょろきょろと見渡しながらこちら見ている。


「コボルトよ苦労を掛けた。よくぞ無事であった。」

我はコボルトを労う。巻き付いている縄を魔力マナで断ち切りほどいてやる。


「アルジサマ……モッタイナキ……コトバ……。」

コボルトは跪き畏まる。


「よい、楽にせよコボルトよ―――」


「ㇵッ……!」

顔をこちらに向けて、尻尾をふりふりとしている様は褒美を待つ犬のようだ。


「外の世界の報告をせよ、コボルトよ。」

我は玉座に座り足を組みながらコボルトに問う。

王たるものは堂々とせねばならぬからな。


コボルトはたどたどしくも、外の状況を我に説明し始めた。



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