第10話 仄暗いダンジョンの奥底で…③
我はダンジョンマスター。
神の声に従い、魔物を使役しダンジョンを運営している。
まだまだ殺風景なこのダンジョンを我は自分色に染め上げていく
◇
「ふむ、順調かね。」
スライム達に声を掛ける。
「主様~!」
「主様だ~!」
目で数えるのが大変なほど増えに増えたスライム達の数匹がこっちに寄って来る。
「そろそろ、新しい仲間を増やそうとおもう。」
「いいと思う~!」
「それがいいと思う~!」
見た目では区別はつかないが答えている内容が少し違うのでまったく違う個体のようだ。
ここ最近は、我は書物を読んで世を勉強していた。無知とは怖い。我は知らな過ぎた。
その間に、スライム達は順調に数を増やしていた。どうやらマナは召喚した魔物からも我に返ってくるようで、数が増え、ダンジョン内を駆けまわるスライム達のおかげで我の身体にはマナが溢れている。
「うむ、今ならば様々な魔物を召喚できそうである。」
我は、スライム達に別れを告げ奥の祭壇へとやってきた。
「さて、久々の邂逅であるな…。」
祭壇に置かれた髑髏に我は手をかける。
「我、召喚する!」
"ほぅ、ここ最近あまり語りかけてこなかったが、自ら学ぶことを覚えたようだな"
「ふふっ、男子三日会わざれば刮目して見よという異界の言葉も覚えましたぞ」
我は最近、異界から書物を取り寄せられることに気が付いた。
その度に祭壇に祈りを捧げ、我に必要であろう知識を記した書物を取り寄せていた。
「とくに、この漫画というものが面白くて読み漁っておりました。」
"まぁ、ほどほどにしておきたまえ……仕事が疎かになるぞ"
髑髏が青白い炎をあげる。
「いでよ!ゴブリン!コボルト達よ!」
我は、身体に蓄えていたマナを解き放つ。
祭壇の周りには、ゴブリンとコボルトが現れた。
ゴブリンが五体、コボルトが三体。まぁ上出来であろう。
「うむ、イメージ通りという所であろう。」
「ギャギャッ、主…ご命令を」
緑色の身体と長い耳、身体は小柄だが人型に近い。こいつがゴブリンというものか
「グルルッ、ボスノハナシキキタイ…。」
獣で例えると狼の形をしてはいるが、二足歩行でしっかりと立っている。これがコボルトか…。話し言葉は流暢とは言えぬがコミュニケーションはとれる。
「うむ、貴様らにはこれからよく働いてもらう…そうだな。」
我は思考した、そろそろ冒険者というもので試し狩りをしてみるのも良いと
「まずは、ゴブリン共貴様らはダンジョンの防衛を命じる。」
「ギャギャッ、主…分かった。」
ゴブリン達は方々に散っていった。なるほど、我の思考していることも伝わるのか
「次に、コボルト達よ。お前たちは外へ斥候を命じる。」
ダンジョンの外の情報が欲しい。必ず持って帰らせねばならない。何故ならば我はこのダンジョンから出ることができないのだ。試しに外へ出ようと試みたものの目に見えぬ力で弾かれてしまった。しかし、スライムで試した所、魔物は通る事が出来ることが分かった。
「グルルルッ、ワカッタ。」
コボルト達が離れようとした時、我は思った。
「待て、お前たち。」
魔物達は見分けがつかない。この三匹のうち一匹は必ず生き残らせるようにしなければならない。
「うむ、お前で良い。」
我は、真っ赤なマフラーにマナを注ぎ込む。そのマフラーを三匹の一匹にかけてやる。
「お前だけは、必ず生きて帰ってこい。必ず我に情報をもたらすのだ。」
コボルトという種族は仲間意識が強い。素早く動けるので斥候向きではあるが
仲間がやられると我を忘れてしまう傾向にある。そのため我はこのマフラーに帰還の魔法を施した。時期が来て戻ってこない場合はこのダンジョンに転移させるためだ。もちろん死に瀕した傷を負った場合も戻るようにしている。
我は、慎重なダンジョンマスターなのである。
「では、ゆけコボルト達よ!」
我は、コボルト達を外へと解き放った。
◇
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