第9話 仄暗いダンジョンの奥底で…②
我は、ダンジョンマスター。
この洞窟の奥より生まれ出た。
神の声に従い、我はこのダンジョンで勇者を迎え撃つべく
日々準備に勤しんでいる。
◇
「ふむ、スライムよ。お前たちは何が出来る。」
「ぷよ…ぷにっ…。」
鳴き声なのか、どこから発せられているか分からないがこれでは話ができぬ。
我はこやつらの上司というやつであろう。部下とコミュニケーションとやらがとれぬのは、ちと骨が折れる。
「神よ、聞えておるか?」
"なんだ…私も忙しい身だぞ……、気軽に呼ぶな……"
あきらかにイラついていることが分かる。
「うむ、すまぬがこれではこやつらと話ができぬ。」
"チっ、あぁ注文の多いやつだ――"
神も舌打ちをするのだと我は思った。
「主様!主様!」
神とは別な声が頭に響く…。
"ふんっ、これでよかろう……"
どうやら、先ほど聞こえてきた声の主はスライムのようだ。
「神よ、感謝する。」
「主様、主様~僕たち増えるよ!」
スライム二匹がこちらに寄ってきて語り掛けてくる。
「ほぅ、お主ら増殖できるのか?」
「僕たち弱いけど!増えて仲間を増やせるんだ!」
「なるほど、それは力強い……戦力の増強になるのでな」
「見てて!見てて!」
スライムはそう言うと体の液体がボコボコと泡をたてはじめる。
その中に、小さな目玉が生え始め、しばらくするとスライムは4匹になっていた。
「素晴らしい、お前たち。しばらく増殖を続けておくがよい。」
「ごめんね主様、これはお腹が空いちゃうから連続してできないんだ~」
「なるほど、食事か?スライムとは何を食べるのだ?」
「僕たちは何でも食べるよ~ダンジョンのコケとか冒険者の食べ残しとかゴミとか」
「なるほど、お前たちは綺麗好きな生物なのだな…。では、ゆっくりでも構わぬ。存分に励み、数を増やすがよい!」
我は、他の魔物も召喚できないか試してみることにした。
◇
「我は、召喚する…。」
今度は、何がでるやら…。
待てども待てども、魔物は出てこなかった。
「ん?何故だ?—―我は召喚するッ!」
もう一度、試してみる。が、駄目だ。
「神ぃ!どいうことである!」
"うるさいやつだな……マナが足らんのとお主の想像力が足りぬのだ"
「なに?マナが足りぬし想像力も足りぬと?」
"お主のマナは先ほどの召喚でほぼない。おまけにどのような魔物を召喚するかという想像力にも欠けている……これでも読んでおけ"
祭壇に一冊の本が現れた。
「神よ、これは?」
"人間が作った本だが、今のお主には役に立とう"
「ふむっ、読んでみるとする。」
我は、その本を手に取り数ページめくってみた。そこにはスライム、ゴブリンといった魔物の絵と詳細が書かれていた。
「ほぅ、なるほどこのような魔物もおるのだな……。」
"その本は、人間のモンスター生態研究をしているやつらが書いているモンスター図鑑というものだ…。想像力のないお前でもそれとマナがあれば魔物を召喚できるであろう"
「神よ……感謝する。」
どうやら我は、まだまだ無知のようだ。この世の中をしる必要もあることを知った。
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