第22話 私が冒険者でいいんですか?③
私の名前は鈴木達男 43歳 独身男
平凡なサラリーマンだ。
冒険者ギルドで冒険者登録を行いに来た。
案内された奥の部屋で私は運命的な出会いを果たす。
◇
檻から出されたスライムは、にょろにょろと私に近づてきて
私の体を這いまわり、肩におさまった。
柔らかくひんやりとした感触が肩に伝わる。
「スラ助、よろしく頼む。」
私はスラ助を撫でる。
『たつお!スラ助がんばる!』
スライムは嬉しそうに体をうねうねと動かし目玉をきょろきょろさせる。
「すごい、感動だわ、感動しすぎて涙がでてきた……。」
その様子を見ていたアリシアの目には涙があふれていた。
よっぽど嬉しいのだろう。
「アリシアさん、それで私は冒険者になれるのでしょうか?」
いくら魔物を使役できたとは言え、不安は残る。
「何を言ってるんですか!たつお様!満点合格ですよ!これから依頼からサポートまで私が専属担当します!どうぞよろしくお願い致します!」
深々とお辞儀をしながら、専属宣言をするアリシア。
私たちは、奥の部屋を出て受付まで戻る。
先行しているアリシアの足取りは軽い。
受付へ戻ってくると、アリとミツルギが待ってくれていた。
「お~戻ってきたか!」
嬉しそうに出迎えてくれたアリ。
その後ろで、こちらを指さしながら驚いているミツルギ。
「あっアリシアが笑ってる……!初めてみた!」
どうやら彼女は普段笑わないようだ。
辺りがガヤガヤと騒がしくなっている。
「おい、アリシアが笑ってるぞッ」
「美人だが、氷の受付嬢って言われてるあのアリシアがか?」
周りの冒険者達は、アリシアの変貌ぶりに驚きを隠せていないようだ。
「ところでよ、たつおさん。その左肩に乗っかっているのスライムだよな?」
アリは、スラ助を指さしながら言う。
「ああ、彼か……彼はスラ助。私の友達だ。」
私はスラ助を撫でながら紹介する。うねうねと動くスラ助。
「はははっ、そいつはすげぇ!まさかスライムを使役するとはな!」
アリは、驚きながら大笑いしている。
「そんなにすごい事なのか??」
「すげぇすげぇ!初めてみたぞ?テイマーはこの国でも一握りしかいない。しかも、スライムなんて使役してるのはいないぞ?ましてやそんなに懐いて肩に乗ってるなんて、すごいしか言えねぇ。」
「へへったしかにすごいね、たつおさん。
ミツルギも驚いた様子で言う。
『たつおのともだちか?』
スラ助はこちらをみながら言う。
「ああ、そうだスラ助、彼らは私の恩人だ。命が危ない所を助けてくれた。」
『なら、スラ助ともともだちだ。』
スラ助は嬉しそうに私の首をぐるぐると移動して動き回る。
「なんだ、たつおさん。スライムと会話までできるのか?俺にはピギィッて鳴いているようにしか聞こえないんだが……。」
アリは、さらに驚きを隠せないようだ。
「そのようだ。私はどうやら
「それってもしかして、特級タレントじゃないか?」
ミツルギも驚きながら言う。
「コホンッ、それは私から説明差し上げます。たつお様。」
後で混ざりたそうに様子を見ていたアリシアは1つ咳ばらいをして言う。
どうやらアリシアが詳しく教えてくれるようだ。
タレントには1級~5級まで存在しており。私の言語理解は
異国の人たちとも会話ができる。
とかそんなものだと最初は彼女もそう思っていたようだ。
だが試しに私と魔物を対面させ確信したらしい。
魔物と会話できる人間なんて聞いたことがない。前代未聞だ。
ギルド内でもそう言ったタレントは特級扱いになるようだ。
その後、私は正式にギルドカードを発行してもらった。
「スタートは白級からになりますが、たつおさんなら最速で銀級まであがれると私は予想してます!これからもよろしくお願いします!」
アリシアは、笑顔で手を差し伸べる。
「あぁ、よろしくお願いします。」
私はその手を握り返した。
◇
ギルドを後にして、私たち一行はとりあえず宿屋へと向かっていた。
「しっかしまぁ、あれだな…。」
アリは、顎を撫でながら言う。
「アリシアが笑顔だし、スライムは仲間になるしたつおさんすげぇわ。」
「そうだね~、すごいよたつおさん。」
二人とも驚きすぎて語彙力が消失しているようだ。
「いや、私もここで生きていかねば行かないからね。二人には感謝しているよ。」
「はははっ、嬉しいね。助けたかいがあったわ!」
アリは嬉恥ずかしいのか、頭をぼりぼりと掻きながら言う。
「ところでさ、これは俺からの提案なんだけど……たつおさん。
しばらく俺たちとパーティを組まないかい?」
ミツルギが横から、私の顔を覗き込みながら言う。
「おい、それ!おれが言うって約束だったじゃねぇか!」
アリは、ミツルギの頭を叩きながら言う。
「はははっ、いいんですか?私のようなおじさんが一緒にいて?」
誘われる事は嬉しいが、私のような冴えないおじさんがいていいものだろうかと
不安もある。
「もちろんだ!」
「もちろんさ!」
二人は声を合わせてそう答えてくれた。
◇
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