第20話 私が冒険者でいいんですか?①
私の名前は、
平々凡々な丸一商事のサラリーマンである。
気が付いたら、知らない森の真ん中で目を覚まし
気が付いたら、冒険者というものに
気が付いたら、王都の酒場で酒を飲んで話をしていた。
◇
「結論から話す……。たつおさん、冒険者やらないか?」
テーブルに並べてある、骨付き肉にかぶりつきながら彼は言った。
アリと呼ばれている。冒険者は私にそう問いかけてきた。
「なるほど……。冒険者ですか……。」
私は、さほど驚いていなかった。
大人の男は
「ひゅぅ~冷静だね。たつおさん。大人だぁ~」
茶化すように口笛を吹きながらミツルギくんが言う。
「まぁ、食い扶持は自分でどうにかしないといけないからな、それぐらいどっしり
構えてもらったほうが、こちらも話がしやすい。」
アリは、笑いながら言う。
「それで、冒険者にはどうやったらなれるものなんですか?」
「冒険者ギルドでギルドカードを発行する。簡単だ。
登録料は貸にしておいてやるよ。」
「ははっ、何から何まですみませんね。」
年下に貸を作るのはあまり好きではありませんが、私は迷い人。
この世界の通貨など持っているはずもない。
ここは素直に甘えておこう。
「善は急げだ、行くとしよう!」
アリはそう言うと、立ち上がりマスターを呼ぶ。
「お勘定!」
腰に巻き付けている。布袋から小さい金貨を一枚出す。
「アリ、いつもすまないな。こんなにはいらんよ?貰いすぎだ銀貨5枚でいいのだが……。」
マスターは、困惑していた。この世界の貨幣の価値がどうなのか少し気になった。
「すまない、ミツルギくん。私はこの世界の貨幣制度が分からない。教えてもらえるか?」
私は、アリくんが会計をしている間にミツルギくんに聞く
「あ~いいよ……えーとねっ、これがこれでこう。」
ミツルギくんは、布袋から金貨と銀貨と銅貨を出して説明してくれた。
つまりはこうらしい。
金貨には大金貨と小金貨があり
【大金貨1枚は銀貨100枚分】
【小金貨1枚は、銀貨50枚分の価値がある。】
【銅貨10枚で銀貨1枚分の価値。】
ざっくりとした説明だが、何となく理解できた。
「すまんな、今度はサービスさせてもらうよ。」
マスターは深々とアリにお辞儀をしていた。
どうやら勘定が終わったようだ。
「お前、飲みすぎだぞ。」
アリは、ミツルギをどつきながらそう言う。
「いいじゃねぇか~」
顔を真っ赤にしながら、ふらふらとミツルギが言う。
たしかに積まれた酒のジョッキを見る所。相当飲んでいたのは間違いない。
◇
酒場を出て、賑やかな大通りを抜けた先に冒険者ギルドがあるという。
様々な屋台がでており。日本でいう所のお祭りの屋台のようだ。
香ばしい醤油にも似た匂いが鼻をくすぐる。
「ん?これは焼き鳥ではないか?」
じゅじゅうと音を立ててこんがりと焼かれている串に刺さった肉。
「酒場ではたつおさん料理にほとんど手をつけず、酒しかのでなかったもんな?」
緊張もあったが、私は食事をしていなかった。
急に懐かしい香りを嗅いだら、腹の虫がぎゅぅと音を立てる。
「ははっ、ちょっと心配してたんだよ。腹が減ったろ?何本か買ってきてやるよ。」
アリは、屋台の親父に声を掛ける。
「よ~、おっちゃん、何本かくれ!」
「おおっ、アリじゃねぇか。何本だ?」
屋台の主人は、そう言いながら串をくるくると回して肉を焼いている。
「ん~、じゃあ三本頼むわ。」
「おう、一本銅貨五枚だ。」
「釣りはいらねぇよ。」
そう言うと、アリは布袋から銀貨を二枚だして主人に手渡す。
「アリ、ありがとうな。おまけしといてやるよ。」
主人は、そう言うと串をもう二本つけてアリへと手渡す。
「おい、これじゃ俺が得してるじゃねぇか?」
「常連だからな、何も言わず食ってくれ。」
主人は笑いながら、答える。
戻ってきたアリは、私に串を手渡す。
香ばしい香りと、焼き立ての肉から肉汁が溢れ出しており。
食欲をそそる。
「さぁ、たつおさん。食べてくれ食べながらギルドに向かうぞ。」
私は、串に刺さった。肉を頬張る。
噛めば噛むほど、柔らかい肉から肉汁が溢れ出し、肉の油の甘さが
口いっぱいに広がる。
醤油にも似たタレは、甘辛く。この串によく合っている。
「むふ、旨いではないか……。なんの肉だ?」
豚肉にも似た味だが、この世界に豚はいるのか?
「ん~?それか、王都名物オークの串焼きだぞ?」
ミツルギが、横から答えてくれる。
「オーク?まさか……。」
私は日本のゲームやアニメで出てくる。豚の形をした魔物を思い出した。
いや、考えすぎるのもよくない。
「顔が真っ青だぞ?美味しくなかったか?魔物の肉はこの世界では一般的だぞ?」
アリが、心配そうに話しかけてくる。
「やっやはり、魔物の肉ですか……。」
想像通りだったが、私は魔物の肉がこんなにも美味しいもとは思わなかった。
◇
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