第20話 私が冒険者でいいんですか?①

私の名前は、鈴木達男すずきたつお 43歳 独身男 


平々凡々な丸一商事のサラリーマンである。


気が付いたら、知らない森の真ん中で目を覚まし


気が付いたら、冒険者というものに助けられひきずられ


気が付いたら、王都の酒場で酒を飲んで話をしていた。




「結論から話す……。たつおさん、冒険者やらないか?」

テーブルに並べてある、骨付き肉にかぶりつきながら彼は言った。


アリと呼ばれている。冒険者は私にそう問いかけてきた。


「なるほど……。冒険者ですか……。」

私は、さほど驚いていなかった。

大人の男は冷静クールであるべきですからね。


「ひゅぅ~冷静だね。たつおさん。大人だぁ~」

茶化すように口笛を吹きながらミツルギくんが言う。


「まぁ、食い扶持は自分でどうにかしないといけないからな、それぐらいどっしり

構えてもらったほうが、こちらも話がしやすい。」

アリは、笑いながら言う。


「それで、冒険者にはどうやったらなれるものなんですか?」


「冒険者ギルドでギルドカードを発行する。簡単だ。

登録料は貸にしておいてやるよ。」


「ははっ、何から何まですみませんね。」

年下に貸を作るのはあまり好きではありませんが、私は迷い人。

この世界の通貨など持っているはずもない。

ここは素直に甘えておこう。


「善は急げだ、行くとしよう!」

アリはそう言うと、立ち上がりマスターを呼ぶ。

「お勘定!」

腰に巻き付けている。布袋から小さい金貨を一枚出す。


「アリ、いつもすまないな。こんなにはいらんよ?貰いすぎだ銀貨5枚でいいのだが……。」

マスターは、困惑していた。この世界の貨幣の価値がどうなのか少し気になった。


「すまない、ミツルギくん。私はこの世界の貨幣制度が分からない。教えてもらえるか?」

私は、アリくんが会計をしている間にミツルギくんに聞く


「あ~いいよ……えーとねっ、これがこれでこう。」

ミツルギくんは、布袋から金貨と銀貨と銅貨を出して説明してくれた。

つまりはこうらしい。


金貨には大金貨と小金貨があり


【大金貨1枚は銀貨100枚分】

【小金貨1枚は、銀貨50枚分の価値がある。】

【銅貨10枚で銀貨1枚分の価値。】


ざっくりとした説明だが、何となく理解できた。


「すまんな、今度はサービスさせてもらうよ。」

マスターは深々とアリにお辞儀をしていた。

どうやら勘定が終わったようだ。

「お前、飲みすぎだぞ。」

アリは、ミツルギをどつきながらそう言う。

「いいじゃねぇか~」

顔を真っ赤にしながら、ふらふらとミツルギが言う。

たしかに積まれた酒のジョッキを見る所。相当飲んでいたのは間違いない。




酒場を出て、賑やかな大通りを抜けた先に冒険者ギルドがあるという。

様々な屋台がでており。日本でいう所のお祭りの屋台のようだ。

香ばしい醤油にも似た匂いが鼻をくすぐる。


「ん?これは焼き鳥ではないか?」

じゅじゅうと音を立ててこんがりと焼かれている串に刺さった肉。


「酒場ではたつおさん料理にほとんど手をつけず、酒しかのでなかったもんな?」


緊張もあったが、私は食事をしていなかった。

急に懐かしい香りを嗅いだら、腹の虫がぎゅぅと音を立てる。


「ははっ、ちょっと心配してたんだよ。腹が減ったろ?何本か買ってきてやるよ。」

アリは、屋台の親父に声を掛ける。


「よ~、おっちゃん、何本かくれ!」


「おおっ、アリじゃねぇか。何本だ?」

屋台の主人は、そう言いながら串をくるくると回して肉を焼いている。


「ん~、じゃあ三本頼むわ。」


「おう、一本銅貨五枚だ。」


「釣りはいらねぇよ。」

そう言うと、アリは布袋から銀貨を二枚だして主人に手渡す。


「アリ、ありがとうな。おまけしといてやるよ。」

主人は、そう言うと串をもう二本つけてアリへと手渡す。


「おい、これじゃ俺が得してるじゃねぇか?」


「常連だからな、何も言わず食ってくれ。」

主人は笑いながら、答える。


戻ってきたアリは、私に串を手渡す。

香ばしい香りと、焼き立ての肉から肉汁が溢れ出しており。

食欲をそそる。

「さぁ、たつおさん。食べてくれ食べながらギルドに向かうぞ。」


私は、串に刺さった。肉を頬張る。

噛めば噛むほど、柔らかい肉から肉汁が溢れ出し、肉の油の甘さが

口いっぱいに広がる。

醤油にも似たタレは、甘辛く。この串によく合っている。


「むふ、旨いではないか……。なんの肉だ?」

豚肉にも似た味だが、この世界に豚はいるのか?


「ん~?それか、王都名物オークの串焼きだぞ?」

ミツルギが、横から答えてくれる。


「オーク?まさか……。」

私は日本のゲームやアニメで出てくる。豚の形をした魔物を思い出した。

いや、考えすぎるのもよくない。


「顔が真っ青だぞ?美味しくなかったか?魔物の肉はこの世界では一般的だぞ?」

アリが、心配そうに話しかけてくる。


「やっやはり、魔物の肉ですか……。」

想像通りだったが、私は魔物の肉がこんなにも美味しいもとは思わなかった。






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