第13話 巻き込まれた男、達男③
私の名前は鈴木達男、何やら
平凡な中年サラリーマンだ。
◇
「迷い人――――?」
日本人ぽい男はそう尋ねてきた。
まったく意味が分からないので、意味を聞いてみることにした。
「あっあの、大変申し訳ないのですが……まっ迷い人とは何ですか?」
緊張で喉がカラカラに
「あぁ~、うん何ていうかなぁ~えーと」
どう答えようか悩んでいるようだ。そんな姿に見かねたのか
奥でそっぽを向いていた剣を
「別な世界からやってきた人間の事だッ!」
「そうそう、そう言いたかったんだ!」
「ふんっ、俺も酒場で聞いたことが少しあったからな!」
そう言って、剣を携えた男がにじり寄って来る。
「なっなにか……?」
明らかに私より歳が下であろう男に私はたじたじだ。
「助けてやるよ―――おじさん!」
彼はニコニコとしながら肩を力いっぱい叩く。絶対体育会系だ……。
「はははっ、何が何やら……とりあえず助かった……。」
◇
私の名前は鈴木達男、どうやら異世界に巻き込まれたらしい
さらば平々凡々なサラリーマン生活よ……
今、強引に
◇
聖都と呼ばれる国の酒場に引きずられる形で、やってきた。
酒場、ガヤガヤとしており大盛況のようだ。
明らかに、ヤクザのような
剣や杖などをを持ったファンタジーな服装の男女。
そう例えるなら、コスプレ大会が繰り広げられている。
そんな感想だ。
「まぁ、飲めよ!おじさん!」
「あっ有難く頂戴致します。」
私は木のジョッキに並々に注がれた
ぬるくてお世辞にも美味しいとは思えないが酒は酒だ。
真昼間から酒を飲むという
私は、サラリーマン人生では中々味わう事の出来ないその行為に
気が付いたら、ジョッキは空になっていた。
「おっ、いい飲みっぷりだな!おじさん!―――マスターおかわりくれ!」
剣を携えた男は、そう言うと満足そうにおかわりを頼む。
「おっ……おじさんではないッ!
気が付いたら、声を荒げていた。日々のストレス、異世界でのストレスが酒の力を借りて解放された。
「おっ、
そう言うと、アリは握手を求めてくる。私はそれに答える。
「すまない、熱くなった。よろしく頼む。アリくん。」
掛けている眼鏡を外し、私はスーツの袖でおもむろに眼鏡をふき取り始める。
利き手の右袖はない。
「おっ、なんかいい感じだね~、たつおさ~ん!俺の名前はミツルギって言うんだ!
!よろしくなッ!」
日本人ぽい男、ミツルギが続けて言う。
「ああ、ミツルギくんよろしく頼む。」
ミツルギと言う名前も日本ぽさがあり、
彼の着ている服も、歴史の教科書などで見た
「そうそう、迷い人ってのは別な世界から迷い込んできた人たちの事を言うんだよ。」
ミツルギは、突拍子もない事を伝えてきた。
やはり、これは夢ではなく……現実に起きた事実だったのかと再認識させられた。
「まぁ、俺も初めて見たからびっくりしたがな……噂程度でしか知らなかったが
実際に、こうも変な格好のたつおさんを見ると信じざる負えないな。」
スーツはこの世界では、異物のようだ。
「まぁ、迷い人が俺のご先祖みたいだから俺はすんなり受け入れたけどな。」
ミツルギはさらっと、驚きを与えてくれる。彼の身なり顔立ちから想像はしていたが彼は私と同じ日本人の血が流れているので間違いないだろう。
「そういや飲み代は足りるのか~アリ?」
唐突に、飲み代の心配をしているミツルギ、彼の周りにはジョッキの山が積まれていた。いつの間にあんな量を飲んでいたのだろうか?
「はははっ!この間の、コボルト討伐でかなりの額を貰ったし、ミツルギと違って俺は
二人は笑いあいながら、コボルトの話をしていた。
少し置いてきぼりになってしまって寂しさが募る。
「ははっ、ごめん……おっと置いてきぼりになってたな。たつおさんすまん。」
察してくれたのか、アリがこちらに話を戻してくれた。
「いやいや、お気遣いなく……。お二人は冒険者というものなのですね?」
先ほどの話に聞き耳立てていたため、おおよその話が分かった。
どうやらこの世界では、冒険者というものが魔物を倒す事により報酬が
もらえるらしい。
「そうそう、たつおさんにもこれからの事を話しておかないといけない。」
急に真剣な目になるアリ。
「うんうん、そうだね。大事な事だからね。」
それに
「結論から話す……。たつおさん、冒険者やらないか?」
◇
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます