第12話 巻き込まれた男、達男②
私の名前は鈴木達男。しがないサラリーマン。
気が付いたら見知らぬ森の真ん中にいる。
◇
手に草や土の柔らかい感触。
見上げた先に見える木々は日本では見たことのない形だ。
「どこだここ……。」
今朝の新聞の記事を思い出す。
「まさか、犯罪に巻き込まれたのか……。」
少年少女6名の集団失踪。まさか国際的な犯罪なのか?
拉致したもののこんな冴えないおじさんだったから、使い物にならなさそうだから
途中で放置したとか、そんなところだろうか?
「いやいや、拉致する前に気づけよ……バカなやつらだ。」
勝手に妄想して一人
間違いなくここは、
日本は今、冬に差し掛かろうとしている季節だ。
だがここは蒸し暑い―――、着用しているのは冬用のスーツだ。
なおのこと暑い。
今朝おろしたてのワイシャツが汗ばんでじとじとして気持ちが悪い。
「――――最悪だ……。」
こんな所にじっとしていても、状況が最悪なのは変わりがない。
巻き込まれてしまったのは仕方がない。
どうにかして生き延びなければならない。
「とりあえず、この森を抜けたら異国と言えど村や町があるかもしれない」
私は、立ち上がりこの森から脱出する事にした。
◇
歩けども歩けども、続く森に果てはなく―――
そんな詩が頭の中で出来上がった。
「一体、なんなんだ……この森……有得ない。」
さっきから、同じ風景の繰り返し。
もしかしたら来た道を行ったり来たりしているのかもしれない。
持っていたスマホも電波が届かず、役に立たない。
このまま、夜を過ごす事になる事を考えると私は恐怖した。
「独身サラリーマンを舐めるなよ……。」
一人暮らしが長い私は、一人で生き抜く知恵を蓄えている。
一番の課題である、水分補給をするために私は、木々に絡まるツタに
目を向ける。
それを、力いっぱい引っ張り引きちぎろうとするが
「んッギギギギッ―――!!!」
デスクワークが長すぎたか……、それとも歳か……。千切れない。
あいにく奪われたのであろう、仕事鞄にはカッターなどの文房具も
入っていたがそれもない。
なにか
私はポケットに入っていたスマホを思い出す。
「こんな、文明の
私は、スマホを地面に叩きつけて、踏みつける。
粉々になった液晶の破片の中でも大きいやつを、手を切らないよう
慎重にとる。脱いだスーツの袖をそれで切れ目を入れて破る。
簡易的なものではあるがこれを手に持った状態で破片を持つ。
時間は掛かるが、背に腹変えられない。まずは、水の確保だ。
私は、ツタをガリガリと削り始めた。
◇
どれほど、時間がたっただろうか……。辺りは暗くなっていた。
「なんとか、喉は潤せた……、疲れた……。明日こそ、この森を―――」
私の意識は、疲れからかここで途切れた。
◇
「おっおい!人が倒れてるぞ!」
遠い意識の中、声が聞こえてくる。
声が聞こえてく―――――――
―――――――――る!!!!!
「
目が覚めた!
「うわっ!こいつ生きてたぞッ!」
目の前には二人の見慣れない男が立っていた。
「おっ……おどろいたぜ……。変な格好の男だな。」
腰に剣を携えた異国の男が言う。格好は何かの映画の撮影か?
アニメや漫画、映画などでよくみる。ファンタジーな格好だ。
「あっ、日本語お上手ですね……
自分でも、何でこんな所で自己紹介しているのか分からないが
日本語が通じるので何かのロケで間違いないであろう。
「二ホン……?聞いたことないなどこの国だ?……スズキは名前か?」
剣を携えた男は、驚いた様子で答える。
「俺も二ホンって国はしらないなぁ……。」
一昔前の
この日本人のような男すら日本を知らないと言う。
「あっあの……映画のロケですよね?」
頭が混乱する。言葉は通じるが話が通じない。
「エイガ?ロケ?……なんだ呪文か?その奇怪ないでたちから察するに
剣を携えてる男は、自身の剣に手を置いて警戒しているのが分かる。
「まて!アリ!」
日本人のような男が、日本語で
「こいつ、さっきから変な呪文使ってるじゃねぇか!止めるな!」
「いや……聞いたことがるって言うんだ!もしかしたらだが……。」
男二人が、俺の
「何が…何が…起こってるんだ……?」
しばらくして、日本人ぽい男が近寄ってきて話しかけてくる。
剣を携えた蟻と呼ばれた男は、奥でそっぽを向いている。
「なぁ……?変な格好のおじさん?もしかして迷い人かい?」
◇
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