◆サラリーマン編

第11話 巻き込まれた男、達男①

私の名前は、鈴木達男すずきたつお43歳。独身。男。

日本という国の、中小企業で働くどこにでもいる中年サラリーマンだ。


、見知らぬ森の中にいた―――



朝は六時起床モーニングルーティン


朝の日課ルーティンが始まる。


寝室の机に置かれているクアリウムで飼っているグッピーに餌をやり


昨日のうちに朝炊き上がるように設定しておいたご飯、作り置きの味噌汁に火を入れ

冷蔵庫の中に入っている。残り物の焼き魚を電子レンジで温める

コーヒーはインスタントで十分だ。

それを準備できた順に流れるようにテーブルに並べていく。


「やはり、朝食は和食に限る……」


至福の時エンジェルタイムを過ごす。


「ああ、朝刊を読まねば……」


ポストに投函とうかんされている地方新聞の朝刊を取りに玄関へと向かう。

それを手に取り読みながら食事をとる、これが私の流れルーティンだ。


不景気ふけいき……不景気……どれも暗いニュースばかりだな。」


目にするネタはこれといって代わり映えしない。政治家の汚職、地域のコラム

テレビ表、スポーツ記事。


「ん?―――集団失踪?」


いつもと変わらない記事の中にいつもならがそんな記事があった。


「しかも近所の学校か……」


私の住んでいる家から近い高校の生徒6名が、放課後から消息を絶ったという記事だった。

物騒ぶっそうな世の中だ、少年少女達が集団で失踪しっそうする。

非常に事件性が高い、事件に巻き込まれてしまったのだろう。ここは田舎というほどでもない。ある程度のインフラが整っている。山や海が近いなら、遭難そうなんという事も考えられるが―――


「まぁ、私には無関係な話だ……。」


そうこうしている内に、出社の時刻が迫っていた。


「おっと、急がねばいけないな……。」


早々に身支度みじたくを済ませ、私は家を出た。



朝の少し肌寒い空気が身体に染みる。


朝焼けが今日はみょうに眩しく感じる。


「日々の疲れが溜まっているのかも知んな……」


そんな事をぼやきながら私は、歩き始める。



すれ違う、高校生達。


今朝の新聞の学生達だ。私が記者なら声を掛けて取材させてもらうのだろうな。


こんな風体ふうていの冴えないスーツ姿の中年に声を掛けられたら。


「ふっ……間違いなく不審者だ。」


いつもの通勤ルート、変わらぬ風景。街のざわめき


いつもの――――――


「なっ!?」


目の前には、工事中の看板。

"配管工事のため、ご迷惑をお掛けします"


私の正規ルート、通称ゴールデーンロードが塞がれていた。


「こっこの道じゃないと間に合わない……。」


迂回ルートはいくつかあるが、使

今からでは電車に間に合わない。


「私のルーティンの1つ、無遅刻伝説がこのままでは……」


私は、拘りこだわの強い男だ。1つでも自分の拘りにはんする事があると

一日中それが気がかりで仕事が手につかなくなる。


「いくしかないか……いくしかない……やるしかない……」


工事中の看板と、三角コーンとポールで塞がれた道を私は乗り越えた。


目の前には配管工事の途中であろう、ぽっかりと穴が開いていた。

恐らく昨日の大雨で途中で中止になったのだろう。

通れる道は、少々狭く感じるが人二人分ぐらいはある。

注意しながら進めば問題ないだろう。

これなら向こうまで、普通にたどり着ける。


私は、そう


安全性を考慮こうりょして、ゆっくりと歩みを進める。


「大丈夫だ……問題ない……。」


と思ったのも束の間つかのま


急に視界が揺らぐ、24時間起き続けたかんぜんてつや後に訪れる。猛烈な眠気にも似たものが襲ってくる。


「やばいッ……なん……だこれは……。」


身体の平衡感覚へいこうかんかく


目の前の視界がかすみ、眼鏡を外しているような状態の視界になる。


「これは……何か……漏れているのか……。」


配管からガスがれているのかと思ったが異臭いしゅうはしない。


「おかしい―――。」


私は気が付いたら、倒れこむようにその場で気絶した。














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