第19話 勇者!冒険の始まり!③
僕の名前はクン・ディ・ツォ!
これから冒険に出かけるんだ!
◇
「皆さん~!お待たせしました~!」
女僧侶オリヴィエさんが、酒場の方から走ってやってきた。
後では男泣きをしている集団が手を振っている。
「おっ、オリヴィエさん……。」
オリヴィエさんは身体中汚れており、顔にも複数傷がある。
酒の匂いがプンプンする。
「あらっ、どうしました?」
当の本人は呆気らかんとしている。
「僧侶様、身体中汚れてますよ……。」
リョウくんは、残念そうな顔をしている。
「あららっ、ごめんなさいっ!」
そう言いながら、オリヴィエさんは両手で祈り始めた。
「神よ、我を癒したまえ―――。ヒールです!」
みるみる身体の傷が癒えていく、ついでに衣服の汚れも綺麗さっぱり
なくなっていた。
「ふふっ、どうです?」
誇らしげにくるっと一回転してみせる。
「ヒールって、衣服も綺麗になるんですね。」
僕は感心していた。
「いいえ、私のヒールは特別ですよ~。物体の時間も巻き戻るんです。」
嬉しそうに答えるオリヴィエさん。
「あんた、まず謝ったら?遅れて来たんだから」
ミンちゃんは、イライラしていたのか、さっきからずっと黙っていたが
とうとう我慢できなかったのだろう。
足元を蹴っていたのか地面には蹴り後がついていた。
「あらら、魔法使いさん。おはようございます~。」
「ムキ―ッ!!!あんた謝れって言ってんのよ!」
顔を真っ赤にして、地団駄を踏みながらミンちゃんは言う。
「あらっ、ごめんなさい~遅れました~。」
口に手を当てながら、悪びれもなく謝るオリヴィエさん。
勇者認定の儀から二週間の間に彼女に何があったのだろうか……
規律正しく清楚で厳かな人だと思っていたが、今の彼女は
見る影もなく、まったく別な人にみえる。
「私、気づいてしまったのです!お酒は至高です!」
唐突に語り始めるオリヴィエさん。
長くなるので要約すると、村長宅で振舞われたお酒を
一口飲んでから、その美味しさにはまってしまい。
夜な夜な、村の酒場でお酒を嗜んでいたらしい。
「ダメ僧侶ね…。」
さっきまで怒り狂っていたミンちゃんは、もう怒る気力
すらないのだろう、項垂れている。
「俺の僧侶様のイメージが……」
リョウくんは、頭を抱えている。
「でも……。これで冒険にでかけられるよね!」
何とかこの場の空気を、変えなければいけないと思い僕は
皆に問いかける。
はぁ~という大きなため息をついている二人。
その後ろでニコニコなオリヴィエさん。
こうして僕たちは、デコボコパーティを組むことになる。
◇
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