第19話 勇者!冒険の始まり!③

僕の名前はクン・ディ・ツォ!


これから冒険に出かけるんだ!



「皆さん~!お待たせしました~!」

女僧侶オリヴィエさんが、酒場の方から走ってやってきた。

後では男泣きをしている集団が手を振っている。


「おっ、オリヴィエさん……。」

オリヴィエさんは身体中汚れており、顔にも複数傷がある。

酒の匂いがプンプンする。


「あらっ、どうしました?」

当の本人は呆気らかんとしている。


「僧侶様、身体中汚れてますよ……。」

リョウくんは、残念そうな顔をしている。


「あららっ、ごめんなさいっ!」

そう言いながら、オリヴィエさんは両手で祈り始めた。

「神よ、我を癒したまえ―――。ヒールです!」

みるみる身体の傷が癒えていく、ついでに衣服の汚れも綺麗さっぱり

なくなっていた。

「ふふっ、どうです?」

誇らしげにくるっと一回転してみせる。


「ヒールって、衣服も綺麗になるんですね。」

僕は感心していた。


「いいえ、私のヒールは特別ですよ~。物体の時間も巻き戻るんです。」

嬉しそうに答えるオリヴィエさん。


「あんた、まず謝ったら?遅れて来たんだから」

ミンちゃんは、イライラしていたのか、さっきからずっと黙っていたが

とうとう我慢できなかったのだろう。

足元を蹴っていたのか地面には蹴り後がついていた。


「あらら、魔法使いさん。おはようございます~。」


「ムキ―ッ!!!あんた謝れって言ってんのよ!」

顔を真っ赤にして、地団駄を踏みながらミンちゃんは言う。


「あらっ、ごめんなさい~遅れました~。」

口に手を当てながら、悪びれもなく謝るオリヴィエさん。


勇者認定の儀から二週間の間に彼女に何があったのだろうか……


規律正しく清楚で厳かな人だと思っていたが、今の彼女は

見る影もなく、まったく別な人にみえる。


「私、気づいてしまったのです!お酒は至高です!」

唐突に語り始めるオリヴィエさん。

長くなるので要約すると、村長宅で振舞われたお酒を

一口飲んでから、その美味しさにはまってしまい。

夜な夜な、村の酒場でお酒を嗜んでいたらしい。


「ダメ僧侶ね…。」

さっきまで怒り狂っていたミンちゃんは、もう怒る気力

すらないのだろう、項垂れている。


「俺の僧侶様のイメージが……」

リョウくんは、頭を抱えている。


「でも……。これで冒険にでかけられるよね!」

何とかこの場の空気を、変えなければいけないと思い僕は

皆に問いかける。


はぁ~という大きなため息をついている二人。

その後ろでニコニコなオリヴィエさん。


こうして僕たちは、デコボコパーティを組むことになる。




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