07:グロスゴーレムとの戦い

「待って……私も戦うわ」


 腰の短剣を抜き、エイトの横に並び立つ。

 すると、エイトが小声で目の前の敵の倒し方を伝えたくれた。


「……あいつの弱点は、胸の中心でむき出しになっている核だ。俺が何とかしてあそこに攻撃を加えるから、アカリは走り回ってあいつを撹乱してくれ。見た所、ここに地雷はしかけられてないから大丈夫だ」

「うん、わかった」


グロスゴーレムの胸で輝く黄金色の半球体を見て、アカリは武器を構える。

 二人の構えを敵対行為と認識したのか、グロスゴーレムは、振り上げた大きな腕を二人に向かって勢いよく叩きつけてきた。

 その攻撃をアカリは右に、エイトは左に飛びのき回避する。

 攻撃の衝撃波でアカリは体を吹き飛ばされ倒れてしまうが、素早く立ち上がり戦闘態勢を整える。

 グロスゴーレムは視線をこちらに向けると、再びその大きな腕を振り下ろしてきた。

 相手の攻撃が向かってくる刹那。アカリの頭の中で過去の映像がフラッシュバックされる。


 はじめ、神々がアカリの街にやってきたときの恐怖。

 ヴァルハラに来た直後、自分以外の者が次々に殺されてしまった恐怖。

 逃げても逃げても、襲い続けてきた絶望への恐怖。


 アカリはより一層強い目で、迫りくるグロスゴーレムの腕を見つめた。


「こんな恐怖……あのときのものに比べたら、全然! 怖くもなんともないんだから‼」


 迫りくる腕の軌道を完全に見切り、力強く地面を蹴って、すさまじい速度で前方へと走り抜けて攻撃を回避する。

 グロスゴーレムは続けて腕による攻撃を行ってきたが、スピードを落とすことなく走り続け、その攻撃をことごとく回避していく。

 アカリのスピードについていくのは無理だと判断したのか、グロスゴーレムは無作為に地面を叩き始め、アカリは無作為攻撃に当たらないようにより慎重に回避に徹する。

 回避の最中、ふと視線をグロスゴーレムの足元に移すと、エイトがグロスゴーレムの足元に潜りこんでいるのが見えた。

 視線の先のエイトは、そのまま影王の剣で巨大な左足首を一閃し、両断した。

 左足を斬られたことでバランスを崩したグロスゴーレムは、その場に倒れこむ。

 その際に生じた衝撃波に吹き飛ばされないようアカリは身をかがめてその場で耐え、衝撃波が収まりアカリが顔を上げるとエイトが弱点であるコアに攻撃をしようと、すさまじい高さの跳躍を行っていた。

エイトはグロスゴーレムのコアに到達すると、振りかぶった右手の剣でコアを斬りつけた。

 しかし、神器であるエイトの剣で攻撃したにもかかわらず、コアには僅かな傷しか与えられていなかった。


「硬すぎるだろ⁉」


 そのあまりの硬度に驚いた様子のエイトは、いったん距離を置きアカリのもとに退避してくる。


「グオオオオオオオオオオオオ‼」


 僅かであろうとコアに傷をつけられたことに怒っているのか、グロスゴーレムは最初の叫びとは比にならないほどの大きな叫び声を上げ、洞窟全体を再び激しく震わせた。

 そのあまりの声量にアカリとエイトはそろって耳をふさぐ。

 直後、グロスゴーレムは狂ったように地面を何度も力強く叩きつけ始めた。

 洞窟内がより一層大きな揺れを起こし、アカリとエイトは立っているのがやっとの状態にまで陥ってしまう。

 次第に衝撃によって地面に亀裂が入っていき、ついには地面が崩落し始めた。


「アカリ‼ 早くここから逃げるんだ‼」


 エイトの声を聴いてすぐさまその場から立ち去ろうとする。

 しかし、あまりの揺れの大きさに逃げることもままならずアカリは倒れてしまう。

 その瞬間、グロスゴーレムが一際強く地面を叩きつけ、アカリたちがいる空間内の地面の大部分が一気に崩れ落ちた。

 アカリがいた地面も崩れてしまい、崩落を免れたエイトがアカリを助けようと手を伸ばす。


「アカリ‼」

「エイトくん‼」


 アカリは差し伸べられた手を何とかつかもうと、必死に手を伸ばすが届かない。


 そのままアカリは、グロスゴーレムと共に地下の暗闇へと落ちてしまった。

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