05:ソウル・エッグ

「このソウルエッグは、父さんの形見なんだ」


 そういうとエイトは、首から下げたネックレスについている卵型の宝石をこちらに見せるように手に持つ。


「ソウル……エッグ?」

「あ……もしかして、ソウルエッグのことも知らなかったりする?」


 エイトの物と同様のネックレスなら、アカリも首から下げている。これは、ヴァルハラに強制送還された日に神々から渡されたもので、その時に簡単な説明を受けた記憶はある。


 だけど、状況が状況なこともあってそんな説明に耳を傾けている余裕はなく、どんな説明内容だったかはまったく覚えていなかった。

 エイトの確認に対して首を縦に振ると、エイトはソウルエッグについての説明を始めてくれた。


「ソウルエッグっていうのは具体的にはこの卵型の宝石をさす言葉なんだ。ソウルエッグはいわば魂の貯蔵庫。最初は無色透明な宝石だけど、ヴァルハラ内で生物を殺した時に出てくる魂を回収していけば、宝石がどんどん金色に染まっていく」


 その説明を受けアカリは自分のソウルエッグを確認する。

 確かに、ヴァルハラでまだ生物を一度も殺していないアカリのソウルエッグは無色透明だった。だが、エイトが持つソウルエッグは、その下半分が糠星のような輝きを帯びた金色に染まっており、それを見ただけでエイトがヴァルハラでどれだけの死線を潜り抜けてきたかが分かった。


「このソウルエッグに最大まで魂を溜めることができたら、その瞬間にソウルエッグは砕け散り、『どんな願いでも一つだけ叶えることができる権利』が与えられるんだ」


 エイトのソウルエッグを色づける金色は、願いを叶えるまでの軌跡を称える栄光の色に見えると同時に、殺されたものの嘆きや絶望を含んだ悲劇の色にも見える。


「俺が叶えたい願いはただ一つ。すべての神をこの手で殺すことだ」


 アカリの耳に届いたその声には、高密度の恨みの感情と、それに負けないほどに確かな意思が感じられた。

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