第27話 別れ
「何これ!?」
驚く先生に俺はニコッと笑って何も言わなかった。
「この方も意外と早いですね。もう光が消えそうです。」
「…」
「どうされました?」
「もう終わるんだなって思って寂しさを噛み締めてるところだよ。」
「そうですか…よし、終わりました。」
そう言うと彼女は四井先生の指を触った。
グイッ
「痛い!離してください!」
「大丈夫そうですね。」
そう言うと彼女は立ち上がった。
「これでお別れですね。どうか幸せになってください。」
彼女の目が潤んでいるように見えた。
「今までありがとう。幸せになるから俺達のこと見守っててよ。きっと楽しい気分になるからさ。」
「はい。見守っています。それではさようなら。」
そう言うと彼女は消えていった。
「俺まださよなら言ってなかったんだけどな。」
何だか無性に叫びたくなった。
むず痒いというかなんというか。
「ありがとうさようならーー!」
俺は叫んだ。
屋上で叫ぶのはこんなにも気持ちがいいということを知った。
「よく分からないけど、幸せになるんだねヒロくん達。」
四井先生がそう言った。
タバコに火をつける。
カチッ
「このタバコは私の父親が吸っていたものと同じ種類だ。父親の好きな物はこのタバコとビールだった。亡くなったのは私が小さい時なのによくこのタバコ覚えてるよね私。」
四井先生はワハハと笑った。
「今の話はめちゃくちゃ遠回しになっちゃったな。私が言いたいのは大切な人のことはいつまでたっても覚えてるってこと。心が忘れちゃダメだって脳に訴えてるんだよ。だから泣くな。」
「泣いてないです。」
「確かに泣いているようには見えないだろうね。でも心は泣いてるでしょ。先生はそういうのわかるの。」
その言葉が胸に突き刺さり、俺からいろいろな感情が、涙が溢れた。
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