第23話 交通事故の犯人

現在


「紅空無事か?」


俺は駆け寄ると紅空を抱きしめた。


「うん!大丈夫だよ!」


俺の頭をなでなでしながら笑顔で言ってくれた。


それにしてもあの車どこかで見たような…



そういえば紅空を轢いた車だ。

あの時は轢いたにも関わらず何も無かったかのように去っていった。

引きこもり過ぎて犯人が捕まったかどうかなんて知らない。

けど俺はナンバープレートを覚えている。

同一車だ。


ガチャ


車の扉が開いた。


「あれ?もしかして紅空さんとヒロくん?大丈夫怪我はない?」


車から出てきたのは割と好きだと思っていた先生だ。

本音を言えば今まで出会った先生の中で1番好きな先生だった。


四井しい先生!?私先生の車に轢かれたんですけど!」


「本当にごめんね。申し訳ない。」


「大丈夫ですよ!気をつけてくださいね!」


「うん。本当にごめんなさい。」


先生が…

先生が紅空を轢いた犯人だったなんて…

あの時は血を流して動いてもいなかったから走り去ったのか…


「どうしたのヒロ?」


「あ…やっぱりなんでもない。」


「そっか!」


先生は俺の顔を見て不思議そうな顔をした。


「あっ、この後用事があるの。もう帰るね。」


「えっ…」


俺はその言葉に驚きを隠せず、思わず口に出してしまった。

事故を起こした時はすぐ報告しなければいけないと聞いたことがある。

なのになんで報告しないんだ。


「何か言いたいことでもある?」


その時の先生の目はとても冷たく、奥の方に殺気を眠らせているようにも感じた。


「ないです。」


「それじゃあまたね。」


先生は車に乗るとすぐさま車を走らせて去っていった。


「何か落ちてる!先生のかな?」


紅空は小さなノートを拾い上げた。

ポケットにでも入れていたのだろう。


「ちょっとそれ貸して!」


俺はそのノートを手に取った。

色褪せていて長年使い込まれているような感じがした。


「これは俺が先生に返しておくよ!」


「えっ、あ、うん!」


ノートの中身を早く見たいという気持ちを抑えながら俺は紅空を家まで送り届けた。

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