第9話 交渉成立

紅空から少年に目を移すと、少年の顔が少し赤くなっているのが見えた。


「ん?顔赤いぞ?」


「おっ、俺はあいつが好きなんだ、あいつの苦しんでいる顔を見てじっとしていられなかった、だから一緒に来いよ」


「なるほどそういうことか。」


ニヤつきながら俺はそう言った。


「今すぐ行くぞ」


「言っておくけど、俺は紅空も連れて行くぞ。」


「女はダメだ」


「なら俺は行かないし、ここを動かない。」


「女と離れない訳はなんだ?」


「俺が離れると紅空を守れなくなる。」


「お前があいつと話してる間、俺がその女を守ってやるって言ったら?」


「信用出来ない。」


「お前は俺の好きな相手と話すんだ、この意味わかるよな?」


お互い自分の好きな人が、相手へ渡るってことは、何かあった時の人質に出来るってことか。


「わかるよ。けど、その八百屋の娘のことが好きって言う証拠は無いだろ?」


「見せれるような証拠はないな…」


「じゃあ無理だ。俺はそんなに甘くは無いからね。」




「なんでまだいる?」


あれから30分経過してもまだあの少年はいた。

声をかけるも、無言。

その場を動こうとはしない。


その状況に耐え兼ねた俺はある提案を思いついた。


「お前の家に泊まらせてくれるならあの条件でいいぞ。ここの宿泊費結構かかってるし、俺の所持金には限界があるからな。」


「わかった、それであいつに会ってくれるんだな?」


「そうだ。」


「じゃあ交渉成立だ」


その言葉に俺は肩をなでおろした。

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