第8話 訪問者

特に変化もなく3ヶ月が過ぎた。

俺の心は前よりも和らいでいた。

紅空の死を遠ざけられている実感が湧いたからだ。

一緒にいられて、紅空も笑顔だからだ。

油断は禁物だってことはわかってるけど、俺は以前よりも眠るようになったし、緊張が少しだけ解かれていた。


このままここに入ればもしかしたら…


そんな気持ちになった。



「おい、お前だろあいつを苦しませたのは」


突然少年が入ってきた。

制服姿で高身長細身の黒髪ロングに見覚えがあった。

その声は静かながらも俺をヒヤリとさせた。


「あいつ?誰のことだ?」


白原しらはら蜜柑みかんだ、わかるよな?」


「八百屋の娘さん?」


「そうだ」


「なら、人違いだ。俺は何もしてない。」


「何もしてないのが問題だ、あいつはお前に一目惚れしたんだ、でもお前の隣にはいつもそこの女がいた、だから告白もできず、あいつは苦しんでいた」


紅空がビクッと体を動かした。

そして、かなり真剣な表情に変わった。

それを見て俺は微笑ましくなった。

こんな状況なのに馬鹿だな俺は。

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