第6話 温かさ

紅空はそれから俺に、いつまでここにいるのか聞くことは無かった。

そして、こんな俺でもいつも通りに接してくれていた。


1ヶ月が経ち、紅空を死なせないという一心でで生活したこともあって、疲れが出てきた。

十分に寝ておらず、一時の休息でさえ緊張がとかれることはなかった。


「大丈夫?」


そう聞かれても頷く事しか出来なかった。

声を発すると、この状況に耐えることができなくなりそうで。


助けてほしい。

このままずっとこの状況なら、きっと俺は早死してしまうだろう。

でも弱音なんて口に出せない。

紅空を助けるためならなんでもするって決めたんだ。


「大丈夫じゃないよね。」


紅空がため息をついた。

そして、泣き出した。

俺はその光景を見てなんだか心が緩んでしまった。


「紅空…ごめんな…」


久しぶりに声を出した気がした。


紅空は首を振った。


「うーうん!謝らなくていいよ!どんな理由があれヒロと一緒に居られるならそれでいいからさ!」


その言葉だけで温かさを感じられた。

そして、グッとポーズをしてニコッと笑って見せた紅空はとても可愛らしかった。

まるで最初に出会った時みたいに。

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