第5話 龍我島

「おい、どうして紅空は死ぬんだ?」


「分かりません。ですが、紅空さんが生きている世界であることは確実です。実際初めは本当に生きているのですから…残りは4回ですね。」


紅空の死は毎回異なる。

だからこそ回避の方法が分からない。

何をすれば紅空が死なずに生きていけるのか。

そして俺は考えた。

紅空と誰もいない場所へ出かけようと。



寒さが続く中、俺は紅空と旅行に行くことにした。

もちろん旅行と言いつつ、遠くで2人で暮らすつもりだ。

本人がなんて言おうと俺はそうする。

紅空が死なない世界にする為に。


9時になり、俺達は龍我島りゅうがじまへ向けて出発した。

電車に乗り、船に乗り、楽しい時間を過ごした。

2人で遠くへ行くのは初めてでとてもワクワクしていた自分がいた。


「着いたぞ!」


眠ってしまった紅空を起こし船から下りる。

ここはとても風が気持ちよくて、綺麗な場所だった。


「いい所だね!」


にっこりとした笑顔で言うから、俺はここに来て良かったと報われた気持ちになった。


紅空はまだ帰らないのかと聞いてきた。

俺は帰らないと強く言った。

なんで?と聞かれたけど、何も答えなかった。

今回は死ぬということを言わないことにしたからだ。

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