第45話
二人だけの都会の雪原。そんなのを名残惜しんでいた。しかしそれも、もう終わろうとしていた。遠くの方から子供連れやカップルが近づいている。
雪が振っているのでこの公園に目を付けた人間が段々と集まっているようだった。そんな二人の時間を知らせるようなメロディがなっていた。それは優斗の上着のポケットからだった。
携帯の着信音。画面を見ると会社の直属の上司の名前が有る。どうにもタイミングの宜しいことだと優斗は一つため息を吐いていた。
「クビの知らせかなぁ?」
横から見た茉由奈はお茶目そうにそんな事を語り笑っていた。
冗談ではない。そんな事も十分に有り得る。優斗がそんな言葉を気にして受けるのが億劫になりながらも通話の操作をする。
「もしもし……」
微かに優斗の声は震えてしまった。これは茉由奈の責任が重いだろう。あんな事を言わなければ優斗なら軽く電話を受けていただろうに。
「クビじゃありませんように」
しかし隣の茉由奈も冗談こそ言え、そんな事は思っても無い。優斗の電話している方を向いて手を合わせ目を瞑り聞こえないように願っていた。
「はい……そうですね……すいませんでした……はいっ? ……えっとじゃあ……ありがとうございます」
暗い表情の優斗は急に驚くと段々と顔が明るくなった。
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