第35話

 しかし優斗は次の日に仕事だったのにかなり頭が痛い。流石の茉由奈もメッセージにて二日酔いだとの連絡が有ったくらい。

 そして優斗はどうにか職場に辿り着いて重い頭を抱えてデスクに座っていた。すると上司に呼ばれてしまった。酷い顔をしているのでその注意だろうと思ったが上司はいつもより更に増して渋い顔をしてるので噂の事だろうと解った。

 よりによって今日そんな話をするかと思っていると連れられた会議室を着く。そこには会社のお偉いさんが揃っていた。そんな状況なので優斗の頭もシャキッとせざるを得ない。

 用意されていた裁判席の様な椅子に座るとやはり噂の話が始まった。

「気分悪い」

 その頃茉由奈は実家で呑気に昨日のアルコールと戦っていた。傍らでそれを見ている母親が心配よりも呆れていた。

 対する優斗は発言権も許されずにずっと偉いさんに噂の事についての文句を聞かされていた。その話は終わる様子も無く張本人の優斗を無視して進む。

 時には擁護してくれる人間も居たが基本は悪として話されていて罰則を与える事よりも文句を言うのが目的の様にも思えていた。

 ついには偉いさん達は相手の人柄にまで言い始め知りもしない茉由奈の事を語る。全てが文句だった。優斗はそれまでがじっと座って聞いていたがその事に対してついに黙っていられなくなってしまった。

「確かに俺は夫の居る人とお付き合いをし、噂にはなりました。しかし今は相手も離婚してます。それに今までその事で仕事をおろそかにしていません。それでもクビにしたいのならどうぞご自由に。単なる文句は聞きたくありません」

 会議テーブルをバシンと叩いて優斗はそう言うと周りの言う事を聞かずにその場を離れた。

 その音は会議室の外にまで響いていた様で優斗はその場の全員から注目されてしまった。後から追って直属の上司が優斗の腕を掴んで人の居ない外に連れられた。

 その上司は怒っては居なかった。まずい事になった所で繰り返し語り優斗を見てはため息を吐いていた。この上司は偉いさんと違い味方をしている様だった。そして優斗に怒りたいのは解るがキレるなとの注意だけをして今日の所は自宅謹慎しとけと言われ優斗は深々と頭を下げて普段は帰らない時間に戻った。

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