第33話

 そして優斗の休日になる。二人はドライブデートをしようと計画していた。但しもちろん最後にはお酒が付く。

「じゃあ、今日はユウちゃんとデートだから!」

 茉由奈は家を離れる時、丁度母親が居たのでそんな事を言いながら車で迎えにきた優斗の方に近付く。

「離婚したばっかりの娘がそんな事を言うからお母さん微妙な顔してるやん」

 優斗は茉由奈の母親に会釈をして車を進めた。

「親達は全部知ってるんだから別に構んのやない? ってかユウちゃんってうちのお母さんの事昔はおばちゃんって呼んでたよね?」

 嬉しそうに助手席でニコニコしている茉由奈は話していた。

「まあ、今はマユが彼女な訳だしそんな人の親をおばちゃんとは呼べないでしょ……言葉で言うならそっちこそ段々と方言が戻ってきたね」

「うんっ? あたしずっと方言使っとるつもりだったんだけど……」

 自分ではしっかりと地元に戻れば方言のスイッチをオンにしているつもりの茉由奈だった。

「やっぱり再会した時はちょっと違っとったよ」

「そうかな?」

 茉由奈には違いが解らず首をひねっていた。

「それでドライブデートは良いけど目的地考えてる?」

 取り敢えずは市街地に向けて走っている優斗が隣に聞いた。

「全く考えてない!」

 横からは元気よく軽く答えられた。

「どの道を進めば良いんだ」

 優斗は信号待ちになった所で顔を伏せてしまった。

「気を楽にしてたら次は解るもんよ」

 茉由奈の顔はにこやかとそんな事を語る。

 あなたはそうやって笑う。そんな顔が愛おしい。僕には無いところだからなのかな。

「俺達そんな事ばっかりだな……次を考えんと取り敢えず進んでみるって」

「ユウちゃんの告白とか?」

 ほんの数ヶ月前の事を茉由奈は懐かしそうに語っていた。助手席で楽しそうに遠くを眺めている。

 しかし優斗にはそんな事できないでいた。確かにあの告白は考え無しだった。今冷静になって考えると恐ろしい。軽蔑されてもおかしくない事だった。そんな風に思うと優斗はつい運転を辞めてうつむきたくもなる。

「あれはマユにかなり背中押されたからそうなった訳で……」

 どうにかそんな自分を正当化しようと優斗は困った様子ながら返事をしている。

「後悔してる? 時々あたし思うの。こんな一度結婚に失敗してる女じゃなくてユウちゃんならちゃんとした人と幸せになれるんじゃないかと」

 茉由奈は優斗の方を見ずに窓の外を眺めながら話していた。そう君は素敵な人だ。あたしじゃなくてもそう思う人は必ず居る。だから余計に思う時が有るんだよ。本当にこんなあたしで良いのかと。

 優斗はその言葉の真剣さが気になったが二人の間にもう問題は無いと思いあえて心配しないことにした。

「俺はこれで本当に良かったと思ってる。心の底からマユの事がどうしようもなく恋しくてずっと隣に居てほしいと思ってたから。他に幸せは無いよ」

 運転をしながら話していると隣の茉由奈から真っ直ぐな視線が有る事が解る。

 直ぐに見つめ返せない今の状況が憎くも有る。

「ありがとう。嬉しいな……」

 じっと見つめていた茉由奈は再び反対側を向くとそう返した。その声はちょっと震えてた様にも聞こえた。

 それから二人は本当に適当に道を進んだ。特に観光地でも無い所を進んだり看板を頼りに知らない道を走ってみたり風景の良い所で休憩してみたりして時間を過ごしていた。もちろんその間にはずっとおしゃべりを続けて退屈は全くしなかった。

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