第29話
それからの日々茉由奈は一度今の自宅に戻る計画を考えてた。旦那の気が落ち着いている今の方が好ましいので優斗の次の休みまで待たない事になり、急とは言え電話から三日後には戻る事にした。
「休みの日にしてくれたら送ったのに」
犬の散歩と言う名の石垣デート中に優斗が文句を言う様に語っていた。
「そう言うだろうとは思ったけど、悪いなぁって所も有ったからね」
「そんな事気にしなくて良いのに……それに休みじゃなくても、もうちょっと合間が有れば有給使ってどうにかなったのに」
優斗はずっと文句を続けてる。事実優斗にはかなりの有給休暇は残っていて、あまりに使わないので消えてしまっている。
「だってユウちゃん今悪い噂が有るんでしょ。だったら休んだりしたらまた面白おかしく言われちゃうよ」
茉由奈は眉間に皺を寄せて叱るように語っていた。
「だからそんな事気にしてないから。クビにしたかったらしてみんかい!」
石垣から防波堤にスタンと駆け寄ると海に向かって豪快に叫んでいた。
茉由奈はそんな姿を複雑に思いながらもつい笑ってしまっていた。
「そんなに文句ばっかり云っても、もう切符取っちゃったからしょうがないやんか」
「うん。わかってる……でもちょっと文句言いたい時も有るんだよ。マユとデートしたかったんよ」
「馬鹿だ」
優斗は聞き分けの無い子供の様に話していたが、茉由奈はそんな姿に困るどころか楽しそうに笑っていた。
「そうやね。デートは今度にしようか……こうして毎日会えるだけで俺は十分嬉しいし」
やっと落ち着いた優斗はため息を吐きながら再度石垣に座った。
「ホントついこの前までユウちゃんとは全く会えんかったのにこんなに毎日横に居るなんて信じられん」
「マユは嬉しくないん?」
優斗は茉由奈の肩を抱いて静かに聞く。
「どうかな……」
素っ気無い返事を返すがその時の表情はどう見ても嬉しそうで、その言葉が照れを誤魔化しているのは優斗にも簡単に解った。
「やっぱり俺マユの事がどうしようもないくらい好きでしょうがないな」
隣を見ると月明かりに照らされている茉由奈が居て優斗は嬉しそうに笑ってしまう。
「解ったってその事はもう聞き飽きたよ」
茉由奈の顔はもうずっと笑ってそんなに語る。
「好きだよ」
「はいはい」
優斗がずっと茉由奈の方を向いてしつこいのでやっと理由が解った。茉由奈も横を向くと二人は優しくキスをした。しかしやっぱり離れると笑ってしまう。
「今日はズルくないよね」
「うん」
こんなデートを茉由奈が戻るまで続けた。
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