第27話
二人は店を離れるとどこを目指すでも無く歩く。暫くすると飲み屋街も外れもう開いてない店ばかりになってしまった。
「マユ……どんな答えになったとしても俺は構わないからな」
二人共黙って歩いてたので優斗は急に歩みを辞め茉由奈の背中を眺めた。停まったことに気が付いて振り向いた茉由奈にそんな事を語る。
「あたし、ユウちゃんの事好きだよ。手を繋ごう」
にっこりと笑う茉由奈は手を優斗の方に伸ばして待っていた。
そんな笑顔が今一つ切なそうに思えたが優斗は軽い足取りで近付くと手を取る。
お互いの手がとても暖かい。
「俺もマユが好き」
優斗は茉由奈はを軽く見つめるとそう言う。
「知ってるよ」
そう語ると茉由奈は更ににこやかになって嬉しそうにしていた。
二人は寄り添う様に再び歩き始めた。
「旦那の所に帰るの?」
「どうしたの?」
急に優斗がそう聞くので茉由奈は若干驚いて返した。
「うん、マユがなかなか話さないから言いにくいのかなって思ったんだよ。残念だけどそう選んだのなら俺に言えることはないよ」
今の優斗は不安で潰されそうになって繋いでる手が震えないように必死だった。
「心配し過ぎだよ。ちょっとどう話そうか考えてただけだから……うーん、一応あの人とも話し合って考えたんだけど、まず結論を言うね。あたしは離婚します」
笑いながら話し始めた茉由奈は一度考えると優斗に向かい合って繋いでいた手をもう片手を添えて語る。
「マユ……」
優斗は言葉が思い付かずつい茉由奈を抱き締めていた。
「でもね……ちょっと待って。だからと言え直ぐにユウちゃんと結婚とは言えないから。ゆっくり共に歩こうよ」
茉由奈は優斗から離れるとさっきまでとは一転俯きかげんで話す。
「もちろんだよ。確かに俺はマユと結婚したいし、そう云った事もあるけど、そんな直ぐにはと急いでるつもりは無いよ。そうだね。今は取り敢えず一緒に居たいよ」
「あたしもずっと一緒に居たいな」
茉由奈は一歩近付き直すと優斗に頭を預けるように寄りかかり話していた。優斗はそんな茉由奈を優しく抱きしめ直す。
「これからはずーっと一緒に居ような」
暫く抱き合っていた二人は夜中は寒いという事で帰る事にする。
近くでタクシーをひろうとかなり暖房が温かくて夜がどれだけ寒かったのかを再確認させられた。
二人はタクシーでもずっと手を繋いで仲良さそうに雑談をしながら帰った。
いつもの石垣のところでタクシーを降りると二人共が別れようとしない。こんな時でも今の瞬間が愛おしくてしょうがない。
「ユウちゃん!」
茉由奈は急に優斗を呼ぶと見つめた。呆気に取られながら優斗が茉由奈の方を見る。すっと近付いた茉由奈はキスをした。一瞬の事に優斗は驚きながらも笑っている茉由奈につられて笑ってしまった。
「ズリィよ」
「あはははっじゃあね」
笑いながら茉由奈は帰った。そんな笑顔が今までよりもずっと残っているような気がして優斗はその場に残った。
「俺はマユの事本当に好きだな」
誰もいないが優斗は静かに語っていた。
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