第4話
約束の時間に家から最寄りのバス停に歩いて向かう。すると茉由奈はそんな優斗の姿を見付けた様子で自宅の方から走って来る。
「そんなに焦らなくても……」
ちょっと息を切らしている茉由奈に向かって優斗は呆れていた。優斗は自分の癖で約束の時間の十分前には行動しないと気が済まない。もちろん茉由奈が現れるのを待つつもりだったのだが、そんな暇も与えられなかった。
「飲むのに置いてかれたら悔やみきれんからね」
茉由奈は優斗と話す時はずっとニコニコと愛らしく笑っていた。それは本当に中学の頃から変わらない。そんな楽しそうな雰囲気に優斗も笑顔になって、もう一度昔話に花を咲かせる。
バスは程なくして到着した。普段よりも時間が短く思える。二人を乗せたバスは細い海岸沿いの道を通り街の方へと向かう。
学生時代も二人でこのバスに乗り、毎日学校に通った。優斗は茉由奈と再会してから懐かしい事ばかりになっている。
バスは街の繁華街に着く。二人は降りたことの無いバス停で降車すると、並んで歩いた。着いたのはこんな田舎にも有る全国チェーンの居酒屋だった。
「まあ、こんなところだろ」
看板の所で優斗が眺めながら話す。値段もお手頃で好みが別れず、不味くもない。
「もうちょっとオシャレな所かと思ったけど……」
優斗なりにデートにならない様に考えたのに、茉由奈は不満げに唇を尖らせていた。そうかと思っていると店に入り、取り敢えずビールで乾杯すると、もう笑顔に戻っていてどういう事なのかもう優斗には解らない。
二人はまだ有った懐かしい話をつまみにアルコールを摂取する。ビールからハイボール、チュウハイ、焼酎のロックまで茉由奈はどんどん空ける。優斗は軽めのチュウハイで酔過ぎない様に付き合っていた。
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