6 とりあえず計算してみた。

 プレゼント大作戦を実行し、大成功を収めた日は美里と瑚花ちゃんも交えた5人で食卓を囲い、ボードゲームやテレビゲーム、様々な話に花を咲かせて、21時頃にお開きとなった。

 次の日は土曜日ながら、俺と陽菜さんは授業があり、春樹の土日はコーチに行っている高校のサッカー部が泊りで遠征するということで朝が早い。しかも日曜には陽菜さんが大学の友達と遊ぶということで土日と自宅に帰るということになり、俺は土曜日の授業後から日曜の夜に春樹が帰ってくるまで、約1日家に誰もいないということになった。普通なら当たり前なんだけど、この1週間の非日常が俺の中では日常になっていたんだなと、ふと思ってしまった。

 その間にすることと言えば、何だかんだ一応毎日やっている何かしらの小説を書いて投稿することと、そろそろ通いたいので教習所探し、後は新しいパソコン探し。いつも使っているノートパソコンが高校に入って両親に買ってもらったもので、毎日のように使っていたのでキーボードもヘタってきたし、お金もたくさんあるのでそこそこなものに買い替えようと思っていた。そして、家でゲームやるためにゲーミングPCも欲しい。そしたら良いキーボードとかマウスとかモニターとかヘットセットとかも揃えたいよね。だってお金だけは手元にあるから。

「全部やって100万以下か・・・うん。いけるな。」

 男って、何か買うときって見栄張りたくてオーバースペックなものを選んでしまう癖あるよね? ちょっと良いゲーミングPCを買ったって、別にゲームがすごい上手ってわけじゃなくて、カラフルに光るパソコンにほれぼれしているだけってこともあるし、高級なスポーツカーとか大型のファミリーカーだって、レースに出るわけでも大して車に興味なくても、本当にそれじゃないといけないわけでもないけどとりあえず周りの目を気にして高級車を買っちゃうとか。自転車やスポーツの道具、楽器とかもそう。ついつい見栄張ってしまうのが男。(※個人の意見です)そして俺も例にもれずに、少しカッコつけたいと思ってしまうわけ。

 免許取って、車買う許可が下りて、目の前にカラフルに光りまくるゲーミングPCがあって・・・そんなことを想像しているうちに久しぶりの1人暮らしは過ぎていった。


                  ***


 月曜日の夜になった。この日は陽菜さんも我が家の食卓を囲っている。ちなみに大学の近くに住んでいる陽菜さんがわざわざここに来てくれているので、その交通費はもちろん俺持ちになっている。こう言うのは日々生活を送っていく中で話し合って、できるだけ陽菜さんには家事をする以外の負担が掛からないようにしている。例えば洗濯とか。小さな袋で、俺と春樹と陽菜さんのものを分けて、それぞれが洗濯機に入れる。そして、陽菜さんの分は陽菜さんが乾燥機にかけて持っていき、男の分は俺らのどっちかが干したり乾燥機かけて片付けるというようになっている。

 こういう話し合いによる意見のすり合わせってのはとても大事。

 さて、この話をしたのも陽菜さんが「ちょっと話し合いたいことがある」と食事しながら言っていたので、食後に俺ら3人で茶でも飲みながらお話ししようとなったのだ。

「今日話しておきたいのは、この前のプレゼントのお話です。」

と切り出した陽菜さんの言葉にはうれしさよりも、なんか申し訳なさとかそういうのが乗っかっていた。

「たくさんいただいた物の一部を昨日、大学の友達たちと遊びに行く際に身に着けていったのですが、その手のものに詳しい子が・・・」


「陽菜、そのスカートって○○のやつだよね?」

「??そうなの?実はこれ貰いもので、詳しいこと知らないの」

「それメッチャ高ブランドの結構いいやつだよ?上着もそう。珍しく香水もつけちゃって・・・ってこの匂いも確かハイブランド○○○のやつじゃない?試供品で匂い嗅いだことあるけど同じ感じ。」

「え、本当?そんなにいいものだったなんて気づかなかった・・・」


「ということがありまして、家帰って色々調べてみたら、いただいた物どれも結構な高級品じゃないですか!いやもう着ちゃったし、開けちゃったし、どれもとても好みにドストライクなので、売ってお金にして返すとかしないですけれども・・・お金使いすぎじゃないですか?」

「いや、やはり情報通信機器というのはこの世から撲滅されるべきだな」

「うん。夕青の言う通り、ファッションの知識階級も数を増やしすぎたようだな」

「何、過激派独裁者みたいなこと言ってるんですか。そんなことよりもですよ。」

「「はい」」

「正直に答えてください。あのプレゼントにいくら使ったんですか?」

「・・・15万」

「はい!?え?夕青くんは数字も読めなくなっちゃったんですか?1万5千円の間違いですよねそう言ってください!!」

「いや、まごうことなき15万円分のプレゼントです」

「・・・そういえば、美里さんと瑚花ちゃんにも何かあげてましたね。あとなんか色々と買ってましたけど、」

「20万です」

「あれはいくらでってもう自白しましたね。」

 もう観念して先に言ってしまった。

「えっっと、一応、本当に一応確認なんですけど、合計20万円ですよね?」

「いえ、合計35万です。ショッピングモールで値札見ずに買い物する快感を覚えてしまいました。」

 そういうと陽菜さんはただでさえ大きな目を更に見開いて、そして絶句してしまった。

「えーっと、ちなみに当たった10億円はどれほど使い込んだんですか?」

「〇々苑の焼肉に約10万、陽菜さんのお給料として100万円、陽菜さんの交通費として1万円、ちょっと親からの食事代がシケてたので補填で1万円、ショッピングモールでのお買い物に35万円、細かいのも含めると合計150万円くらいでしょうか」

「私のためのお金が大半で申し訳ないのと〇々苑の焼肉うらやましいとかありますけど、1か月足らずでそんなに使い込んでしまっては大金も一瞬で消えてしまいますよ?」

「・・・ちなみに、このペースで散財していくと、約55年半後、我々が73歳のころには大金が消えてしまう計算になります。」

「「「・・・・・」」」

 いや、大金すぎだろ。とこの場にいた全員は思ったに違いない。1か月足らずで生活必需品でない様々なものに散財しまくっても、まだ0.15%しか10億円を使っていないのだから。怖いなおい。

「で、でも、もっと高いものを買うことになるとお金払えなくなってしまいますよ?将来的には養育費とか家賃とか車とか高い買い物も必要になってきますよ??」

「では、俺は今から徹底的に節約すれば大して働かなくとも子供を養いつつ、持ち家スポーツカー生活ができるのでは!!」

「あの、別にそこまでしろとは」

「いや、決めたね。今から超節約する!でも将来のために車の免許とゲーミングPCは買いたいなぁ」

「夕青、言ったそばから・・・」

 免許はともかく・・・と苦言を呈されるが、この1か月浪費三昧(自覚アリ)の人間の割には思い切った決心だと言ってほしい。

「では、夕青さんはどんな節約をするつもりなんですか?」

「まず、私的利用できる金額は1か月1万円まで」

「少し高い気もするが、大学生だしこんなものか」

「繰り越し可」

「つまり節約すれば来月以降により多くのお金が使えると」

「食材は3人で安いところにたくさん買いに行く」

「業務系とかだと単価は安くなるな」

 思いついたことをとりあえず幾つか挙げてみた。思ったより普通かもしれない。

「・・・でも待てよ。俺はどうせ友達大していないから頻繁に遊びに行かないし、月5千円でも行けるのでは?」

 友達少ないって悲しいね。春樹も暇じゃないし陽菜さんとは友達だとは思ってるけど遊びに行くような関係ではない。そして大学に友達がいない。高校の友達は疎遠なのがほとんど、小中学校になると美里と瑚花ちゃんくらいしかいない。

「そんでバイトして稼げば、年100万円くらいは稼げるわけでしょ?俺は年に6万しか使えないんだから1年ごとに90万円以上貯金が増えていくと」

 バイトはしなきゃいけない約束だったのでこれを都合よく使っていこう。

 そしてこの時、みんな一瞬こう思ってしまった。

「「「あれ、90万円って大金のはずなのに全然そう思えなくなってしまった・・・」」」

 1年で90万円貯金が増える。これを大金だと思えなくなっている価値観に全員が黙り込んでしまう。

「・・・ま、まあ、そういう節約であればよいと思います。家賃、光熱費、学費はご両親が出しているということでしたし」

「そして、バイト先は飲食系にして、賄いで食費を浮かす」

「お、それはいいね。ラーメン屋でバイトしているやつはお店の設備使って自分でまかない作らせてもらってるって言ってたぜ」

「何それラーメン好きとしては最高の環境じゃないですか」

 働いてお金貰ってタダでラーメン食べれて家の食費を浮かすことができる。なんという天国。

「よっしゃ!!節約しまくるぜ!!目指せ大して働かずに老後までハッピーライフ!!」

 というわけで宝くじで10億円という大金を当てたんだけど、とりあえず節約始めてみた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

宝くじで10億当たったので、とりあえず節約始めてみた。 炭酸そーだ @na2co3_8th

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ