第5話 本を探して

あれから数週間が経ったが、あの日以降特に変わりなく時間が過ぎていった。

今日も何事もなく放課後を迎えると、春斗は本を探しに図書室へ向かう。

中へ入り気になっていた本を見つけては本棚の上の方へと手を伸ばす。しかし彼の身長では届かない。

どうしたものかと困り果てていたら、頭上から手が伸びてきてそれを誰かが取る。

「読みたい本ってこれ?」

「はい、ありがとうございます。」

本を受け取るため、春斗が振り返るとそこには見慣れた顔があった。

だが相手が来そうもない場所で思わず本音が漏れる。

「七瀬先輩も図書室に来るんですね。」

「普段は来ないけどさ、今日は本を読んで見解を書けって課題が出ちゃって…俺でも読みやすい本ってない?」

どうやらここに来たのには理由があったようだ。

春斗は彼から読んでみたいジャンルを尋ねれば、先程のお礼に本を探すことにした。


「ねぇ春くん、ちなみに明日暇だったりしない?」

「別に予定はないですけど。」

なにかいい書籍はないかと一緒に見て回っていると、千隼が小声で話しかけてくる。

明日の予定など聞いて一体どうするのだろうか。

「じゃあ明日一緒に図書館行かない?そっちの方が本も沢山あるし!」

「嫌です。」

「お願い!お礼にうさぎカフェ連れてってあげるから!」

千隼の誘いに春斗はいつものごとく断った。

しかしうさぎカフェという言葉を聞いた途端、黙って少し考え込む。

本を探す手伝いをすることに決めたし、なによりうさぎカフェに行けるのなら先輩と出掛けるのも悪くないかもしれない。

「今回だけですからね。」

「やった!ありがとう春くん!」

悩んだ末に彼が承諾すれば、千隼は嬉しそうに笑って春斗に抱きつこうとするもするりと避けられる。

まだお昼を一緒に食べるくらいの人物にこのスキンシップをされるのは嫌なのだろう。

千隼は残念そうに眉を下げると、連絡をとるためにと連絡先を交換して二人は別れた。

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