第3話 スマホ
春斗は授業が終わるなり、いつも通りうさぎ達に餌をあげては飼育小屋から千隼を探すため校内に戻ろうとしていた。
グラウンドの側を通れば元気な掛け声が聞こえる。
どうやら野球部が試合をしているようだ。
その様子を横目に校舎の方へ歩いていた時、突然野球ボールが勢いよく飛んできて思わず目を瞑る。
しかし、一向に痛みは襲ってこない。
「大丈夫?」
誰かが呼びかける声に恐る恐る目を開けると、そこには心配そうな表情でこちらを見つめる千隼がいた。
「あれ、春くんじゃん!怪我しなくて良かった。」
「ありがとうございます。」
どうやら千隼がボールをキャッチしたおかげでだいじに至らなかったようだ。
春斗はホッとした表情をすると、捜していた人物に会えたので本来の目的を果たす為にスマホを取り出しては話を続ける。
「そういえばこれ七瀬先輩のですよね。」
「あ、俺のスマホ!ずっと探してたんだよ!」
彼はスマホを受け取ると嬉しそうな表情をして、拾ってくれた相手に対しお礼を告げる。
しばらくの間ではあったが、なくて不安だったのかもしれない。
「じゃあ僕はこれで。」
「待って、一緒に帰ろう!俺助っ人だしすぐ着替えてくるから!」
「え…」
千隼へ届け物を渡し帰ろうとすると、彼はまた春斗の手に自身のスマホを戻したではないか。
春斗が慌てて断ろうとするも、グラウンドの方へ戻って行ってしまい断る暇もない。
駆けていく相手を見ながら小さなため息をつくと、しばらく彼が戻るまで待つしかなかった。
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