第10話「互いの幸せを想うなら」
彼女と私の感性は、酷く近かった。10歳以上の歳の差なんて感じないくらいに。互いに、生み出す世界観が好きだった。私は文字、彼女は絵。これ以上好きになれる相手はいないだろうと思えるくらいに。どこへ行っても楽しかった。色んな事が語り合えた。
それでも、一緒にいられるかどうかは、違う。どれだけ私が彼女のためを思って実家を出て彼女のそばに住み、彼女の望む時に遊んでいたとしても、離婚を望まなかったとしても、彼女がどれだけ私を想って、病気が良くなるように色んなプレゼントをくれたり、一度同棲をしてくれたりしたとしても。
互いの心に響かなければ、意味がないのだ。善意と愛の押し付けは、お互いを苦しめるだけ。好きだからこそ私は恋人として彼女のそばにいたいと願い、好きだからこそ彼女は友人として私のそばにいたいと願った。私は理想的に考えて、彼女はいつも現実的に考えていた。同性で10歳以上歳の離れた人との恋愛は、苦難が多すぎるのだ。周囲の人の理解も得られない、私は家族を説得したが、彼女は家族を説得する元気すらもなかった。
そして彼女は──旦那さんと共にいることを決めた。落ち込んで、絶望した。また一緒に暮らすことを検討していると言っていたはずの彼女は、やっぱり旦那さんを選ぶのかと裏切られた気もした。色んな友人に相談して、泣いて、死ぬほど後悔して……もう受け入れた。
互いに、互いが一番幸せになって欲しいだけだった。ただそれだけだったのだ。──そう、一番好きだから。
そして少なくとも“今”は──一緒になっても幸せにならないと、互いに悟ってしまった。
「3年くらいして、昇格して、基盤ができたら……迎えに行きたい」
彼女はそう言った。また裏切られるかもしれないと思ったが、もうそれでもいいやと私は笑った。貴女が幸せでいてくれるなら、もうなんでもいいよ。
「振ってくれてありがとう。……待ってるよ。だから今は、せめて友達でいさせて」
私はすっきりした顔で、でも泣きながら、そう答えた。なんでそんなに優しいんだ、私はもっと罰を受けるべきだ、年上のくせに情けないと泣く彼女の頭を、いつも私は撫でる側だった。本当に、どちらが年上なんだか。
彼女に相応しい人間になろう。
私は何があっても諦めない。この絶望的な恋を。──だって、誰よりも自分に自信のない彼女を、隣で支えたいから。私との恋を、後悔させたくないから。
ゲームで恋をしたら相手が同性の既婚者だった話 Lake @Laxia
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