第4話 物真似少女は食いしん坊

「唐揚げ定食2人前、ご飯大盛りでお願いします!」

「そ、そんなに食べるのであるか?!あ、僕は親子丼で」


食堂に到着すると結構な人が列になって並んでいたがすぐに自分の番まで来たので美味しそうな唐揚げ定食を2人前、さらにご飯大盛りにして注文した。

可奈は私の注文に驚きつつ自分の注文もする。


魔力はほとんど空っぽだしお腹は空いてるし、どうせ無料なんだから沢山頼んじゃった。


「ほ、僕にはその量は無理である……」


結構な量の唐揚げと大盛りなご飯、お味噌汁や漬物などが2人前をささっと場所取りしたテーブルに運んで食べる。


「うん、美味しい!」

「この後面接があるのに大丈夫であるか?食べ過ぎて話せないとか……」

「いつも食べる量よりは多いけどこれくらいなら簡単に食べ切れると思う」

「そ、そうか……僕は見てるだけでお腹いっぱいになりそうである」


可奈の食べている親子丼も美味しそう……次来た時は頼んでみよう。

目指せ学食メニューコンプリート。


そして十数分程度で2人前をペロリと平らげた私であった。


「本当に食べきったのである……!」

「だから食べ切れるって言ったじゃん」


呆れた顔で私の事を見つめてくる。ちなみに可奈はまだ親子丼を食べ終わっていない。


「あの、一つ聞いて良い?」

「もぐもぐ……なんだ?僕の親子丼が食べたくなったのなら一口ならあげるのである。はい、あーん」


目の前に親子丼が出されて衝動的に食べてしまった。


「あっ美味しい……ってそうじゃなくてそのヘッドホンのことなんだけど」

「ああ、これであるか……」


体力測定の時からずっとピンクのヘッドホンをつけていたので気になって聞いちゃったけど聞いたらダメなやつだったかな?


ヘッドホンから微かに魔力を感じるから気になってしまった。恐らく魔力を流して使う道具……魔道具の一種だろう。


「これは僕の異能を支える魔道具でこれが無いと逆に全く使えないレベルなのだ」

「な、なんか大変そうな異能だね」


私も人のこと言えないけど。


異能を補助するタイプの魔道具も沢山あるしそれ系統の魔道具なのかな。私の異能も制御出来るような魔道具あるなら欲しい。


「ま、確かに大変だけど夢に向かって頑張るだけなのだ」


夢、夢か。私は掲げるような大層な夢は持っていないからそういうの良いよね。


今ある夢といえば……学食メニューコンプリート?


「そうだ!せっかく知り合えたんだし連絡先交換しないか?」

「あ、うん。いいよ」


私は異空間収納でスマホを取りだす。可奈はポケットからスマホを取り出した。


「綾那の異能……便利であるなぁ」

「可奈だってそのポケット……というかスカート?自体が魔道具でしょ。そっちの方が便利そうだけど」

「うぐ、やっぱりバレた?」


ヘッドホン同様に魔力を感じるもん。そこそこ戦い慣れてる冒険者なら誰でもわかる。それに……


「冒険者カードはともかく財布やらスマホやら同じ場所から取り出すとか普通のポケットじゃ無理でしょ。バレバレだよ」

「確かにその通りなのである……!」


驚いた表情をして私の事を見てくる。いや気付かなかったんかい。


結局、連絡先を交換したくらいで面接の時間が近づいて来ていたので可奈とは別れて指定された教室へと向かっていった。


「初めて父さん以外の人と連絡先交換した……」


長く冒険者をやっているから知り合いのような人は沢山いるんだけど連絡先を交換したことは無かった。

ギルドメンバーの人達は"綾那と交換しようとしたら会長に殺される"と言ってたから交換しなかったし。


「では次の方……どうぞ」


さて、面接も頑張りますか。


・・・

・・


「終わった、疲れた……」


面接もギルドの奴らに茶化されながら練習した甲斐があってしっかりと受け答えが出来ていた……と思う。簡単なテストも出来る限り頑張った。


私は暗くなり始めた道を歩いて自宅へと向かっていた。


「ただいまー」


ガチャリと扉を開けて自宅へと入る。


まあ、誰もいないからただいまも何も無いんだけど。父さんは大体ギルドで寝泊まりしてるからほとんど私の一人暮らしみたいなもんだね。

母さんは私が物心つく前に事故で亡くなってしまったから私も記憶がない。


「さて、夜ご飯は……作るの面倒だしカップ麺でいいか」


魔力がまだ全然回復してなくて身体がだるいんだよね。そもそも冷蔵庫には飲み物くらいであとは何も入って無いから作ろうにも食材を買いに行かなきゃいけない。


確かこの棚の奥の方に……


「あれ?」


棚の中は空っぽだった。別の場所だったかな?


そう思って別の棚など色々と探したのにカップ麺は見つからなかった。


「まさか……」


私は急いでゴミ箱を確認しに行く。


なんとゴミ箱の中にはカップ麺のゴミが入っていた。


「父さん……私が買っておいたカップ麺食べたな!許さん」


いつのまに帰って来てたんだよ!それに私の金で買ったやつなんだけど……?お気に入りのカップ麺だったのに!


ぐー……


カップ麺が無いなどそんな事お構い無しに私のお腹は鳴る


「お腹空いた……」

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