第4話 実力テスト

現在、この混沌とした世界の中で一番重要なこと。それは感染者となった元人間の殲滅だ。そのため学校でのテストというのも、感染者の殲滅力を測るテストである。


ダミー感染者およそ100人を指定時間以内に倒した数、および殲滅までの時間が評価となり、上位5名のランクが上がり、下位5人のランクが下がる。これにより生活に優劣付けられる仕組みだ。


「え〜と、綾一鋼。制限時間内での全殲滅、不可。撃破数、38……」


教官と思われる男性が手元のタブレットに目をやりながら、独り言のように呟く。


「あ〜、Cランク全体でも平均よりも下だ。結果はCランク残留てとこだろ」


タブレットの画面を落とし、鋼に視線を向ける。


「確か、Bランクに上がりたいんだっけか?この調子だと難しいな。能力も微妙だし、前戦に出るのはやめとけ」


そういうと、教官は「それじゃあな」と言って、鋼に背を向けて、どこかへ歩いていく。


「……………」


黙って聞いていた鋼は、一人静かに奥歯を噛み締めていた。


「おにーちゃん!」


そんな鋼の後ろから妹の声がする。

振り返れば手を振る永遠の姿。


「永遠。結果はどうだった?」


悔しさを心中に押し込み、表面的には笑顔で、永遠の頭に手を置く。


「うん!おにーちゃんに言われたとおり、50体にしたんだよ!」


キラキラとした目で、無邪気に笑う。

褒めて、と言わんばかりに手の平に頭を押し付けてくる。


「すごいな、さすが永遠だ」


それに答えるように、鋼も頭を撫でる。

少しの嫉妬も表に出さず。

「えへへ」と鋼に褒められて、嬉しそうだ。


「お楽しみのところすまない」

「無月さん。どうしましたか?」


鋼の後ろから声がする。そこに立っていたのは、昨日と変わらずの白衣に身を包んだ朱里だった。


「いや、なんだ……落ち込んでいるところに追い打ちをかけるようで悪いが……」


朱里にしては、語呂悪く、歯切れが悪い。

不信に思いながらも「かなりの問題なんだろう」と腹をくくる。


「大丈夫ですよ。僕はこのくらい耐えて見せます」

「……なら言わせてもらおう。実は」


その刹那、試験会場の学園Bがドォォォォォォォン!と大きく揺れた。


「な、なにが……」

「……遅かったようだ。今回ばかりは私が悪い」


白衣のポケットに手を入れながら、整った顔を歪め音が響いた方向を睨む。


「……説明、してもらっていいですか?」


この状況の何かを知っていると踏んだ鋼は、深刻な趣で朱里に視線を向ける。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る