第3話 最強の妹
「た、ただいま〜」
病棟から徒歩30分。学生達が住まう寮にたどり着く。
鍵で開錠し、ドアノブに手をかけて扉を開く。
入ると、住む分には問題ない広さの部屋が目につく。
買った食材をキッチンに置き、干してあったエプロンに手を伸ばす。
「ごめんな、遅くなった。すぐ作るから」
エプロンの紐を腰で結んで固定すると、冷蔵庫からラップに包まれたキャベツを取り出す。
「ん?
返事がないことに違和感を感じ、エプロン姿のまま、リビングの方へと進む。
しかし、そこには誰もいない。
おかしいな?と首を傾げた瞬間、
「わっ!」
後ろから少女が現れ、鋼の背中に覆いかぶさる。
こういうことをして来る人物に心当たりがあるのか声に驚いた後、仕方ないな、とでもいうように微笑む。
「永遠?あんまり驚かせないでくれ」
「んふふ〜ビックリしたね、おにーちゃん!」
「ああ。びっくりした」
永遠は満足そうに笑うと、鋼の背中から降りる。
茶髪の長いツインテール、Tシャツとチェックのミニスカート。それぞれが幼い容姿の彼女に程よく似合い、より可愛さを強めた。
「あと、能力はあまり使わないように。永遠は体が弱いんだから」
「りよーかいです、おにーちゃん!」
永遠が敬礼する。すると、鋼は優しく笑い、永遠の頭を撫でた。
永遠の能力は、『
能力は思考や体の高速化である。自分自身の時間感覚を早めたり遅めたりすることで自分の時間の流れを操作し、まるで時間が止まったかのような高速移動などが可能である。
この能力は鋼と同様に身体能力が向上するタイプであるがその中でもかなり強力であり、ただの強化系で片付けられないレベルだ。
永遠の能力は、時間の速い遅いによって負担が大きく違う。
特に時間停止というほどの超加速は、かなり脳への負担が大きい。
昔は連発してしまい、一週間熱が引かなかったこともある。
もし、それでも能力を使い続ければ死すらありえるのだ。
(それだけはないようにしないと)
永遠の頭を撫でながら、改めて決意する。
鋼が永遠を「高速移動」と偽って学園側に報告しているのは、そういう理由だ。
永遠の能力を知ってるのは、鋼、永遠、朱里しかいない。
もし知られれば、最前線で死ぬまで使われる可能性もある為、鋼の願いもあり朱里と秘密を共有している。
「むぅ、おにーちゃん。なんか難しそうな顔してる」
不機嫌そうに頬を膨らませる。13歳にしては、幼すぎる行動だが、永遠にはよく似合っていた。
「ん?そうかごめんな。今日のご飯、どうしようか迷ってたんだ」
「じゃあ、ハンバーグがいい!」
鋼が咄嗟に思いついた言い訳を素直に受け取り、永遠がメニューを提示する。
彼は頷き、再びキッチンに向き直るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます