第2話 氷の魔女、マリッサ

 ヘイリーが天井を壊したのは僕の部屋だった。大穴の空いた天井を何とかふさごうと修理しているけれど、うまくいかない。

「あら、大変ね。ふさいであげましょうか」

 屋根に上っていた僕に庭のほうから声がかかる。そこには、夏だというのに毛布を体に巻き付けた三つ網の女の子が立っていた。「頼むよ。今晩寝られないんだ」

「氷の女王の涙で天井をふさぐわ」

「それってどういう……うわっ」

 女の子が手をかざすと空に白く、冷たい空気が立ち上る。もやから、巨大な女性の顔が覗いた。その女性の涙が一滴、落ちる。たちまち、部屋は氷で覆われ、冷凍庫のようになってしまった。

「どう? もう隙間風は入らないわ……。私はマリッサ。この館で一番清適な氷の魔女よ。」

 「どうもマリッサ……。でも僕は凍えてしまうよ」

「じゃあ私の部屋の隣を使うといいわ。空いているみたいだから」

 兄さん、天井にいた僕まで凍り付かなくてよかったよ……。

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