第23話 目覚め
「おねえちゃん、どこか痛いの?」
「ううん、すごくいい夢を見ていたんだけどね、起きたら全部が夢って気づいちゃって悲しくなっちゃったんだ…」
そこからは夢で見たことを男の子が優しく聞いてくれた。
グレイさんとソフィーさんと出会って、ソラと一緒に街まで行って冒険者になったり料理を誰かのために作ったり、自分が雑貨屋を始めたこと、今までやったことがなかった新鮮なことを話した。
「おねえちゃんは、ここの世界より向こうの世界のほうが好きなの?」
「そうだね……向こうにはソラもいて、優しい人達が沢山いるから。私はこっちにいるより向こうの世界が好きなんだと思う」
男の子は笑顔で「そっか、それなら帰らないとだね」と言って、足元から魔法陣が出てきて、手を差し伸べてきた。
「また、向こうの世界に帰れるの…?でも目が覚める時、毒みたいなの吸って死んじゃったと思ったんだけど…」
「あれは、麻痺毒だから死んだんじゃなくて気を失うんだ。でも現状やばいことには変わらないから、どうにか打破しないといけないね!」
それってもし戻れてもまた気を失っちゃうんじゃ…
「全然ニッコリと元気に言えることではないんだけど…でも、帰れるなら帰りたい!!」
男の子の手を取り、魔法陣の中に入る。
「大丈夫! おねえちゃんのことは、僕が絶対守るから!」
ボクガマモル…?
「え、それってどういう───」
魔法陣から光がパァッと光りを放って真っ白になった。
◇ ◇ ◇
「──おねえちゃん」
んぅ…また寝起き…?体がダルい…
「起きて! おねえちゃん!」
大声に驚いて体が反射的に起き上がる。
「うわぁ! びっくりしたぁ! っ!」
ゴチンッ!と言う音と共に頭に鈍痛が走った。何が起こったのか全然理解できなかったけど、なにか石のように硬い物に当たったことだけはわかる。
「イテテ…おねえちゃん大丈夫だった?」
どうやら男の子のおデコとおデコでごっつんこしたらしい。そりゃこんなに痛いわ…
「う、うん…大丈夫…だよ。ちょっとフラフラするけどね…ハハ…」
しかし、寝起きの感じと体のダルさとさっきのごっつんこでぐわんぐわんして頭が全然回らない…
「キミは夢で出てきた男の子…名前はなんて言うの?」
「僕は、ソラだよ?」
へぇ、ソラって名前この世界でもいるんだなぁ…夢に出てきたときと違って耳がある…獣人?
「ソラくんって言うんだね、うちの子もソラって言うんだけど…ソラは何処に行ったんだろう…気を失う前に鳴いてたから心配なんだけどソフィーさんもグレイさんも視界が悪くてわからない…」
まだ麻痺毒の霧が
「おねえちゃんの言うソラは僕だよ?それと、霧は僕が守ってるから入ってこないんだよ!」
「なんだ、ソラかぁ…ってソラ!?」
ソラの面影なんて…と思ったけど髪色は狼になったときに白も多かったし尻尾は茶色だから要素はある…
「でも、なんで急に人の姿になったの?今までそんな素振りなかったのに…」
ソラがポリポリと頬をかきながら少し照れくさそうに答える。
「実は、僕もさっき麻痺毒でそのまま気を失ったんだけど、キレイなおねえさんが夢に出てきて、おねえちゃんが危ないって知らせてくれて力の使い方を習ったんだ! お陰でおねえちゃんを守れたから良かった!」
キレイなおねえさん…って誰だろう…でもそれがあって助かってるんだから今は感謝しなきゃ。
「それで、グレイさん達はどうなったかわかる?どのくらい寝ていたのかもわからないけど霧が晴れてないってことはまだあのエボ…エボなんとかっていうのはいるんだよね?」
「うん、まだ戦闘は終わってないけどソフィーとグレイは麻痺毒にはかかってないと思う。他の数人は気を失ってないね。でも半数は減ってるからちょっとまずいかもしれない。」
ソラが耳をピクピクさせて音を拾っている姿がかわいいと心底思ったけど、今はそういう事を言ってる場合でもないし、私にできることをなにかしなくちゃいけない…
「ソラの周辺にいれば麻痺毒にはかからないんだよね?それならソフィーさんは後方で戦ってるはずだから近づけないかな?」
「それなら大丈夫だよ。何処に誰がいるかはわかってるからソフィーの方に行こうか。」
どうなってるのかソラにはわかってるってことなのかな…?とりあえずソフィーさんの方に行ってできることをしよう!
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