第9話 商業ギルド 後

(頬がまだジンジンする………今までこういった痛みとかとは疎遠そえんだったから不思議な感じ…)


 そんなことを考えながら何の料理を出すか悩んでいた。


 お店に出す料理…私が考えた無人販売所として出す料理なら、基本は炭水化物を使った料理でおにぎり、惣菜そうざいパン辺りが無難ぶなんだろう。


 今ったものを出せば納得してもらいやすくはなるかもしれないけれど、素直に普段から出しやすく、自分が美味しいと思う料理を作るのが大事だと思う。


 とりあえず調理用具を出して、材料は今回すぐに用意しないとだからレトルトのご飯を使おう。


 もう一つはサンドイッチだけど、具材はスライスチーズとレタスとハム、もう一つはシーチキンときゅうりにしよう。


 鍋に水を入れて沸騰ふっとうさせてその中にレトルトを投入。


 待っている間にサンドイッチ用の耳なし食パンを半分に三角カットして、パンに辛子バターを薄く塗って、チーズとレタスとハムを挟む。


 シーチキンときゅうりを挟んで、サンドイッチの完成!


 おにぎりの具材に辛子明太子、昆布、梅を用意して、レトルトごはんが温まったので具材を包んで作っていく。


 三角に形を整えたらのりで巻いて完成!




「おまたせしました。この料理をお店で出そうと思っていました、ご賞味ください。」


 テーブルの上におにぎりとサンドイッチのお皿を置いた。


 今回はちゃんと木製のお皿を使用したし、突っ込まれないはず……


「これは、何を使った料理なんでしょうか?白と黒の色をした料理に、こちらはパンを薄く切って挟んだ物ですね。」


「はい、私の居たところではそちらのお米の料理はおにぎりといいます。パンの方はサンドイッチと言いまして、どちらも中に具を入れてあります。」


 ふむ……と少し考えるようにして少ししてからサンドイッチに手を伸ばした。


「では、いただきましょう。」


 手に取ったシーチキンのサンドイッチを少し匂いを嗅いでからちぎって食べた。上品なんだろうか…珍しい……


 咀嚼をして少しするともう一口、もう一口と食べて行き、食べ終わったら、もう一つのサンドイッチも同じようにパパっと食べ終わった。


「………この料理は、とても良いものですね。確かに今までにないもので売れるでしょう。」


 他にもブツブツと小さな声で考えているように何かを言っていたけど聞き取れなかった。


「こちらのおにぎりと言うのは、どのようにしていただくのですか?」


「こちらもサンドイッチと同様にそのまま手に取ってもらって食べていただけます。」


「……なるほど、ではそのように。」


 おにぎりを一口そのまま食べた後、目がカッと見開きになりおにぎりを全部食べていった。





 おにぎりを食べ終わり、バイセルさんが口を拭いてから


「私は勘違いをしていたようです。貴方の料理はちゃんとコンセプトを決めた良い出し方だったのですね。」


「はい、でも…何かおかしい出し方でもあったんですよね?」


「えぇ。本来は商売というのは人と人とのつながりを生業なりわいとする仕事であり、基本的には一人でできることではないのです。」


 なるほど、それで怒られたのか…理由としては当たり前だと思う。前の世界でもお店は仕入先と仕事上仲良くなり、継続的に卸してもらうからこそ仕事ができているんだから、一人でどうにかできる仕事ではない。


「ですが、貴方の料理は別物のようです。この料理の食材、製法全てが貴方にしか持っていないもので作られている。それに貴方はアイテムボックスを持っているようですし、現状必要はないでしょう。」


「でも、今回言われたことで私自身商売の繋がりは大事だと思いましたし、もし可能ならお店のお手伝いをできる方とおすすめの食材屋を紹介していただけませんでしょうか?先ずお店を出せるかどうかが問題ではあるんですケド…」


 バイセルさんは、最初に見せた笑顔とは違い優しい笑顔で答えてくれた。


「理解していただけて私はとても嬉しいです。最初に叩いたご無礼ご容赦くださいませ。お店に関してはいくつかピックアップして天音さんにお見せしましょう。手伝いということですが、従業員はどういった方をご所望でしょうか?」


 そこからは、仕事の話をしていった──────






「今日はありがとうございました。また明日お店の場所の資料を確認しに来ます。」


「こちらこそ有意義な時間をありがとうございました。グレイ、ソフィーさん天音さんをよろしくお願いします。」


 バイセルさんがピシッと頭を下げて、ソフィーさんは少し不機嫌だったけど「当然です。」と言って歩いていった。何かあったのかな…

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