第8話 商業ギルド 前

 


 支度を済ませて外で待っていてくれたグレイさんとソフィーさんに合流して商業ギルドに向かった─────




 商業ギルドに到着して既視感があると思ったらギルドの外装は基本どの街でも同じらしい。


 冒険者ギルドは赤が基調の屋根で、商業ギルドは青が基調の屋根…わかりやすい…中も全く同じで迷わなそうでよかった!


 グレイさんが受付に


「バイセルは今いるか?紹介したいやつが居るから取り次いでほしいんだが。」


「はい、バイセルなら今商談中ですのであちらの椅子に掛けてお待ち下さい。」


 とのことで、三人で座って待っていた。


 因みにソラには宿屋で待ってもらっている。前に見られまくってたし一応念のためだ。


 10分程待った後、受付さんから声がかかって商談が終わったので上の階の個室に来てくださいと言われた。



 個室に入って奥の窓のそばで背筋がすごくいい中世の正装といった服装をした男性が窓の外を見ながら立っていた。


「よぉ、バイセル。久しぶりだな、元気か?」


「これはこれは、お久しぶりですねグレイ。本日はどういったご用向でしょうか?」


「あぁ、今日はこの子を紹介したくて来たんだ。店を出したいって言うんでな。是非手伝ってやってくれ。」


 バイセルさんは、私の方を見ると少しにらむような感じで見てきてその後、スッと笑顔に変わった


「グレイ、私は貴方と友ではありますがそれは貴方だから友なのです。故に貴方の友と私の友は別であり、そういった話であればお断りさせていただきます。」


 と、笑顔で断られた。聞いていた通り厳しい人なんだろう。でも…


「あ、あの!私は確かに、商売という面では素人かもしれませんが、私の料理を美味しいと言っていただける程の自信はあります!それをお店に出したいんです!」


「そうですか…貴方は何処かの辺境から来たのでしょう、服装も見たことのない珍しいものです…ですが、貴方は料理を提供するに辺りお客を満足させる接客ができるのですか?」


 図星だった。さっき見たのはそういった雰囲気を感じ取るためだったのか…でもこっちにも考えがあって来ているんだ。


「私が考えているのは無人販売所と言って、私が見ていなくても売れるシステムで商売をしようと思っていました。ですから接客をする必要は────」


 バチンッと部屋で音が反響した。一瞬何をされたのかわからなかったが頬がジンジンして頬を叩かれたんだと気づいた。


「おい!手を挙げることはないだろ!」とグレイさんが怒っていた。


「グレイは黙っていてください。これは商談と同じであり貴方は取り次いだだけの部外者です。文句があるなら引き取ってもらっていいんですが?」


 グレイさんが苦虫を噛み潰したような顔をして黙った。


「さて、貴方はなぜ叩かれているかおわかりでしょうか?」


「……い、いいえ、わかりません。」


「そうですか、では貴方には商売は向いていませんので諦めるのがよろしいかと。」


「そ、それはできません。私はこれ以外にお金を稼ぐ方法はないと思っているので…」


「なぜ、そこまでしてお金をほっするのでしょうか?」


 何故?そんなの決まってる。


「ソラと、一緒に生きていきたいからです!」


 目的は決まっているんだから、私は絶対に諦めない。今度こそソラと二人で幸せに暮らすために。


「…………わかりました。では先ず貴方が出そうと思っている料理を一つ提供してください。話はそれからです」


「すぐ用意します!」


天音は料理をつくるために机などを出しに行った。





    ◇      ◇      ◇





「───さて、そこのお嬢さん。貴方、私の商談に随分ずいぶんな邪魔をしてくれましたね?」


「私は特に何もしていませんよ。頭に血が上りすぎて勘違いしたのではないでしょうか?」


「バイセル、ソフィーは何もしてねぇよ。お前は血が上ったら気にせず殴るの商人として辞めるべきじゃねぇのか?」


 天音がビンタをされる時に咄嗟とっさに、防御呪文を天音にかけたことがバレていた。


(そもそもソフィーが防御呪文掛けてなかったら今頃、天音は悲惨な姿になってるだろ…あの威力は…)


 グレイはそう思っていたが、口には出さなかった。

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