そんな告白されたら気になってしょうが無いでしょ!
にもの
第1話 許可って何?
———私は、モテる。
自意識過剰じゃないかって? 実際、月に数回、告白イベントが発生しているから間違いなくモテている。
そして毎回、丁寧に断っている。
「———ごめんなさい。あなたの事よく知らないし……———え?ID?……御免なさい。私、そのアプリ入れてないの。———お友達……男の人との関わり方って良く分かんなくて……御免なさい。」
……自分で色々面倒にしてるね。
ズバッと断れば良いんだろうけど、私って外面がいいんだね。「友達」と呼べる子は居ないけど、それなりに当たり障りの無い人付き合いを心掛けている。
勿論、女の子からの「お昼ご飯一緒に食べよう」なんてお誘いは必ず笑顔でOKしている。男の子からの誘いはNGね。でも、放課後の遊びの誘いは———諸事情あって全て丁寧にお断りしている。
———高校生活、そんな一年を過していたら、みんなから「姫」とか「天使」とか「女神」なんて言われるようになった———その呼び方はやめて欲しい。
どうやら私は「この学校で一番の美少女」として扱われているようだ。一応、美容にも力を入れているから嬉しいっちゃ嬉しい。毎日、全身のケアは怠った事がないからね。私の数少ない自慢の一つだ。
・
・
・
———高校二年の夏休みが明け、二学期が始まったばかりのそんなある日の昼休み。廊下を一人で歩いていると、同じクラスの
「
「一歳君、どうしたの?珍しいね。」
「ちょっとお願いって言うか、なんて言うか……一つだけ、許可して欲しい事があるんだけど……。」
———「
彼との接点はノートの回収だけで、他は全く無い。目があった事すら無い。って言うか、今、初めてまともに顔を見たよ……っていうか、前髪が邪魔で顔、よく見えないし。
そんな彼に廊下で突然呼び止められた。いったい何だろう?
———ついでに言えば、ここは職員室の前だ。
「———葉倉さんに一つだけ許可が貰えれば、俺はそれで満足なんだけど、君に迷惑は絶対掛けないし、いつもどおり、必要以上に声も掛けなければ、必要以上に近づかない。友達になってとか、付き合ってとかそういう事は一切言わない———だから、一つだけ許可して。」
んー……なんの事だ? 許可が欲しいんだよね?
何に対する許可? 「友達」とか「付き合って」とか言っているから色恋事?
うーん……考えてもしょうが無い。ここは本人に聞くしか無いか……。
「———なんの許可?」
「葉倉さんの事、『ずっと好きでいていい』って許可。」
ん?ん?ん?ん?ん?ん?
———何?なんだって?
許可? 好きでいる事に許可欲しいの? 許可貰わなければ、好きじゃ無くなっちゃうの?
どういう事?
「———許可?」
「そう。許可。」
「許可だけで良いの?」
「許可以外は何も要らない。」
「私の事、好きでいたいの?」
「そう。それだけで毎日がハッピー。」
「ハッピーねえ……。」
何それ?私を好きでいると、毎日がハッピーなの? 私には迷惑掛けないって言ってるし、今までと変わらないって、そもそも、あんたとの関係って「ノートを回収し合うだけの仲」じゃん。関わる事なんて今まで殆ど皆無じゃんよ。
……ん———今までと何も変わんないなら問題無いか。
「———うん、いいよ。これからも好きでいてくれると嬉しい……かな?」
なぜか語尾が疑問形になった。
「有り難う。これで毎日ハッピーだよ。」
「———そっか、ハッピーか。あはは……。」
「じゃあね。」
「———じゃあ……。」
一歳君は、そう言って小さく手を上げると、向かっていた方へそのまま行ってしまった。私も小さく手を上げて見送ったが……これって一応、告白だよね?
「好き」って伝えて来たんだから告白だな。しかし初めてだ、廊下で……しかも職員室の前で告られたの———。
———午後の授業が始まった。
午後の授業が始まったけど、私はそれどころでは無い。
彼の告白(?)の仕方と、その内容が独特すぎて、午後は彼が気になってしょうがない。しかも、場所が職員室の前って———。
彼、一歳君は私の席からはちょっと離れている。私が窓際の後ろの方なら、彼は廊下側の前の方だ。彼を観察するには位置的には良好と言える。
ここだけの話、当然みんなには内緒だが、今日までにクラスの男子の何人かから告白されてはいる。
当然、丁寧にお断りさせて頂いた。
ただ、その後も告白してきた男子はアプローチを試みようと、未だに私に接触して来る人が何人かいる。正直、ちょっと―――面倒かな。
だけど、一歳君は今までに無いパターンだ。
確かに「好き」と言われた。言われたけれど、「付き合って」は元より「友達になって」とすら言ってこない———なんなのそれ?
しかも、クラスの子で、今まで告白してきた子はそれなりに接点があったり、目線を感じたりしたもんだが、一歳君はそれらしい素振りが無く、それどころか日頃の彼を思い出そうとしても一切思い出せないのだ。
当然だ。今日初めて一歳君の顔をまともに見たんだから。いや、前髪邪魔で見えなかったけどね。
———授業が終わり、短い休み時間に入った。
休み時間中、私は彼をずっと見ていた。
「(私の事を好きだって言ったんだ。普通だったら、好きな子を一回くらい見るもんだと思う……ずっと見ていれば、目くらい合うはずだ!)」
そう思っていたのだが、一向にこっちを見る気配が無い。
寧ろ、隣の席の女の子と仲良く話し始めた。
———さっきの「好き」ってなんだったの? 本当に私の事好きなの?
本日最後の授業はLHRだ。
「———2学期も始まったし、席替えするぞー。」
・
・
・
「———全員、クジ引いたか? 窓際前列が一番な。後は後ろに順番なー。」
一列七席。私が引いた番号は「14」。窓から一つ離れた一番後ろだ。悪くない。
———そして
「葉倉さん、よろしく。」
窓側の隣に来たのは一歳君だった。
何この、ライトなノベルの展開は!
———高校2年の秋。
これから始まる私の物語……なんだか彼に振り回されそうな予感がするのは私だけ?
そんな告白されたら気になってしょうが無いでしょ! にもの @bucci515
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