第八話

話しかけてきたのはやはり鑑識の人らしい。

警察と俺に

「あの、僕が口出しするのもどうかと思ったんですが…

その手の話には詳しくて、一つ一つ確認したいんですが、よろしいですか?」

と許可を求めている。


「詳しいって怪奇現象にか?」


「はい。まあ、怪奇現象と言っていいのか分かりませんが」


「うーん…いいだろう」


「ありがとうございます!」

そして俺の方を向き質問する。

「ご友人はお皿が勝手に動く、テレビが頻繁にチカチカすると言っていたんですね?」


「はい、言っていました」


「皿が勝手に動くなんですが、実はいくつかの条件がそろえば可能なんです。

まず皿が熱いか皿の中に熱い食べ物が入っていること、ラーメンとかですね。

そして、机や皿の下が濡れていることです。

この状態で料理の入ったお皿を濡れた机に

置くと、皿が密着して皿の下にある空気の逃げ場なくなるわけです。

それと、このアパートはだいぶん年季が入っているので若干建物自体がかたむいています。

その傾斜で机と皿にわずかな隙間ができ空気が漏れ皿が動くという原理です」


その場にいる全員がポカンとしている。

それに構わず説明は続く。


「テレビなんですが、すみません、触っても大丈夫ですか?」

警察に尋ねる。


「……あ、ああ、いいぞ」

リモコンを持ち電源を入れる。

「恐らくなんですが…」

鑑識の人はテレビの横へまわる。

「あ、やっぱり。

ほらB-CASカードがきちんと差し込まれてません。

これが原因でテレビがうまく映らなかったんですよ」


えっ…それが原因なの…?


「あとは、何でしたっけ?」


「あ、えっと、電気の点滅と窓ガラスを叩く音…」


「なるほど。

カーテンを開けてみましょう」

今までずっと閉めっぱなしだったカーテンが

開けられる。

日は落ちていてもうすっかり夜だ。

「あれが原因じゃないですか?」

指を差した方向には外灯がある。

「外灯ですか?」


「外灯というよりその光に集まっている虫

です。

蛾が見えますね。

カーテンの隙間から外にもれでた明かりに寄ってきたんじゃないでしょうか?」

窓ガラスを叩く音って光に寄ってきた蛾

だったのか?

そんなことあるんだろうか…

「僕が住んでいたところでは蜂がよく窓ガラスに体当りしてきて困りました」

そんなことあるんだ…

彼の分析は続く。

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