第五話
僕のアパートへ向かいながら友人が言った。
「今度は怪奇現象起こるかな?」
「起こると思う…っていうか毎日のように
起こってるんだよ。
窓叩く音するし、足音だって相変わらず
聞こえるし」
「お前は気が小さいからなぁ。
それが分かってて幽霊も楽しんでんじゃないか?」
「だとしたら性格の悪い幽霊だよ」
僕は不機嫌に言い返した。
アパートに着いて、この前と同様友人と
過ごす。
やはり何も起こらない。
「人を見るのかねぇ、ここの幽霊は」
友人は諦め気味だ。
僕も諦めかけて風呂に入ってくるわと言って
脱衣所へ向かった。
風呂から上がり脱衣所に取り付けてある
鏡を見て僕は固まった。
鏡が曇っていてよく見えないが、後ろに誰か
立っている…。
「おい!!おーい!!」
震える声で友人を呼ぶ。
「なんだ?どうした?」
「鏡!鏡!」
「何?鏡?」
「僕の後ろに誰かいる!!」
「マジかよ。どこだ?」
「僕の後ろだよ!」
「お前以外誰も写ってないぞ?」
「そんなわけない!いるって!」
友人は目を凝らして鏡を見ている。
「いないよ」
嘘だろ…見えないのか…
彼はおもむろに鏡を拭いて眼鏡を渡す。
「ちゃんと見てみろ」
あれ?消えている…
「誰かいるか?」
「いや…」
「だろ?」
いや、でも確かにいたんだ。
背中にピッタリ寄り添うようにいたんだよ。
僕にしか見えてないってそれじゃ、
もう友達を呼んでも意味ないじゃないか。
案の定、その日も友人には何も見えることも
聞こえることもなく終わった。
でも、この日から鏡にどんどん変化が現れ
始めた。
やはり僕の後ろに誰かが立っていることは
間違いない。
友人に言ったが「お前、眼鏡が合ってないのかもしれないぞ?一回診てもらえ」と言われてしまった。
いや、それだけじゃないんだ。
鏡になんか茶色のシミみたいなものが
浮き出てきたんだ。
ちょうど真ん中から少し左側に丸い形のシミができている。
それは日に日に大きくなってまるで血が流れているような形になっていった。
僕は我慢ができなくなり鏡にガムテープを
貼って完全に見えないように隠してしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます