♥26ピンスタグラム



「莉香は、ピンスタとかやってないの?」


 僕は少し前に雅臣と話してて気になったことを莉香に聞いた。ピンスタは、正式にはピンスタグラムと言って、撮った写真をアップしてやりとりをするSNSだ。海外を含め、とても多くの人がやっている。


「ん?なんでー?」


「いや、昨日雅臣と話してて、地下アイドルのピンスタとかSNSの話になって。莉香のピンスタとか気にならないかって聞かれて。あんまり気にしてなかったけど、言われてみたらすごく気になってきて」


「そういうことか~♪…人のを見たいからアカウントは持ってるんだけど、あたし自身は全然載せてないんだ」


「そうなんだ」


「うん。中学の時にね、愛と絵美と一緒にアカウント作って、幾つかアップしてたんだけど、コメントがすごく来るようになって。しかも、やらせてくれとか、金払うとか、もっとエロイの載せろとか。なんかもうそれでめんどくなって、やってない」


「あー、そうか、納得。うん、莉香がSNSでそういう事言われたりしてたらって考えたら、すごく腹立つ」


「敬真専用だから、あたしは♪」


 僕達は、抱き合ってキスをする。


「ぷは…♡」


 莉香が僕を見つめて、唇を下で濡らしながら妖しく笑う。


「…敬真が写真欲しいなら送ってあげる♡えっちぃの♡」


「!!」


 僕は莉香に振り回されっぱなしだ。





~姫宮莉香~



「それで、莉香はピンスタやることにしたの?」


「うん、でも顔出すのとかうざいことになるから、お弁当の写真載せてくことにした」


「あー毎日作ってるもんね」


「うん。でね、タグ見てみたら♯彼弁とかでやってる人多かったから、それで過去の写真とかで投稿始めてみた」


「拳法君は幸せものだなー」


「ほんとだね」


「でも、私も幸せにしてもらってるもの♪」


「味付けが甘すぎるwww」


「アリしか食べないwww」


「で、なんか反応とかあった?」


「わりと、ヨイネ♥がついてる。彼弁作ってる人多いみたい」


「私らもフォローするから教えて」


 敬真との会話がきっかけで、あたしは久しぶりにピンスタを始めてみた。プロフの写真は、あたしの左手と敬真の右手で作ったハートを、青空をバックにして撮ったものだ。写真撮るときに敬真が照れてるのが、ちょっと可愛かった。


 あたしはお弁当の画像をアップするときに、作っているときにどんな思いで作ったのかを思い出しながらタイトルをつけてアップしてる。「梅雨ウザ、すっぱ飛んでけ弁」とか「とりま唐揚げ3兄弟弁」「いきなりチーズ弁」「ラブ待ちスタミナ弁」とかそういう感じだ。それが良かったのか、フォロワーがじわじわ増えていった。


 時々レシピを教えて欲しいとかもあったから、特に反響のよかったおかずのレシピを載せたりもした。そして、あたしのピンスタはなぜか同級生や、他学年の人にも広まってて、たまにお弁当の相談をされたりもするようになった。それが不思議で愛と絵美に聞いた。


「なんかさ、最近ちょいちょい弁当相談されるようになったんだけど」


「しょうがないよ。というかそうなる気もしてたw」


「なんで?」


「あー気づいてないのかー。莉香さ、拳法君と4月から、お昼一緒に食べ始めたっしょ?」


「うん」


「その前からだけど、中庭でもう皆が見てるわけ。莉香がお弁当を作ってきたりとか、告られたりとか。ハグってるところとか」


「そうそう告られて、莉香が抱き着いたときなんか、周りの女子全員拍手してたし、皆目に涙浮かべてた」


「そ…そうなんだ」


 あたしの顔がちょっと熱くなってくる。


「2学期になって、拳法君が腕折って学校出てきて、莉香もかいがいしく世話してるから、『拳法君がナイトになって莉香を守った』って噂になったりもしてた」


 一応愛と絵美には簡単に事情を説明しているけど、当然広めてるわけではないから噂になっちゃうのはしょうがないと思う。


「でもって、莉香と拳法君が熱々ぶりを隠そうともしないから、周りの男女はそりゃもうあてられるわけ、要はいちゃラブオーラが出まくってんの」


「莉香知ってる?2人のおかげで、この学校の告り数とカップル成功率が爆上がりしてるんだよ?」


「え…えぇ?」


「で、莉香のお弁当。これが、カレ落としアイテムになってるわけ。で、今までは、からみがなくて聞けなかったのが、ピンスタ始めたから、からめるようになったってこと」


「そ…そうなんだ…」


「私らにも、今までちょいちょい相談とか、教えて欲しいとかあったりしたからねぇ」


「言ってくれればよかったのに」


「私らが、莉香達のいちゃラブを邪魔できると思う?」


「う…そ、それは…怒ってたかも」


「でしょww」


「まぁー、いちゃラブが減らない程度に付き合ってあげればいいんじゃない?」


「うざがらみとかあったら、私らも入るからさー」


「ありがとう、愛、絵美。なんかいろいろごめんね。何かあたしにできることあったら、言ってね」


「あー…そしたら、お弁当教えて♪ハンバーグとかがいいかな。いや、こないだオタクが地下アイドルのバーベキュー会に当選したって喜んでてさ。拙者、もはや死んでも本望とか、超くだんないこと言ってるから、私の作ったやつとかで、どんな反応をするのか試してみたくて」


「おーぅ…了解だよ♪」


「したら、あたしも莉香の弁当講座で。彼氏が手作りが食べたいなーとか微妙にうるさくて」


「じゃあ、今度の土曜とか2人がよかったら、うちにきて!」


「「うけたまわりー」」


 その後しばらくして、あたしのピンスタがちょっとだけバズった。載せてたお弁当は、敬真が骨折をしてから作ってた、骨を作るのに必要な食材を盛り込んだもの達だ。つけたタイトルは「あたしを守ってくれた骨、カムバック弁」「魚集合、骨元気弁」とかだった。勉強に、ピンスタのやり取り、敬真といちゃラブとあたしの日々は充実していった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る