♥25看護
「ふふ~ん、ふ~ん♪」
ベッドに腰かけている僕の目の前に、ピンクのナース服のかわいいお尻がふりふりと揺れている。揺れているのはボリュームのありすぎない、でもしっかりと存在感のある莉香のお尻で、ナース服のスカート丈は短く、下着が…見えない!?
「~♪敬真のお世話をしましょうね~♪お注射されちゃいましょうね~♡」
莉香のセリフがなんだかおかしい。先日の事件で僕の右腕は折れてしまったので、今はギプスが巻かれている。当然日常生活に不便を感じるときもあって、それを莉香がフォローしてくれている。
昨日の放課後、最近はずっと一緒に帰っている莉香が「愛たちと買い物あるからまた明日ね♪」と言って別れたのだけど、どうやらこれを買うためだったらしい。ちなみにナース服は、ダムキホーテとかで売っている、えっちな目的にしか使わないであろうミニスカートのものだ。
「敬真、見て♡」
莉香がお尻を向けたままナース服を捲っていく。下着がなかなか見えてこないと思ったら、お尻が全部あらわになっていて、腰の方に下着のヒモが見えた。紺色の…
「Tバック♡」
僕は腕のことも忘れて莉香に覆いかぶさった。万流軟拳は相手から攻撃されないと手が出せないけど、僕自身は手が出せるのだ。
◇
9月の最初に起きたレッドヴァースの事件から1ヵ月が経っていた。顔の腫れが引ききっていない莉香と腕を吊るした僕を見て、最初は周囲が少し騒がしかったけど、10日もしたら落ち着いた。
莉香は、学校でも時間の許す限り僕のそばにいてくれた。最初はトイレに一緒に入って支えるなんて言い始めてたから、必死になって止めた。3日に1回くらいだったお弁当もほとんど毎日作ってくれた。しかもその内容も骨を作るのにいいとされる、魚やお豆腐、きのこ類なんかが何かしら毎回含まれていて、莉香の愛情をしっかりと噛みしめて味わった。
9月の中旬には文化祭もあったけど、僕らの学校はあまり力を入れてなくて、部活やクラスの研究発表がしめやかに行われただけで、盛り上がりもせずに終わった。
10月になって中間テストがあって、ようやくそれが終わったのが昨日だった。右腕を使えないのは、想像していた以上に不便なことが多かった。トイレや服を着るなんていう日常動作でもだけど、勉強なんかでペンを持つのも苦労した。出ている指でなんとか固定するのだけど、筆圧とかスピードとかも頼りなかったりした。だから。
「あーやっぱり入らなかったかーー」
「敬真はしょうがないよ!」
「莉香もちょっと落ちちゃったね…」
1学期に上位80位内に入るほどに上がった僕の成績はさすがに落ちてしまった。そして、いつもは5位以内に入っている莉香の成績も12位と落ちていた。っていうか落ちて12位とかすごいと思う。
「まぁ、しょうがないね。また2人で上げていこう」
「うん♪」
「そのためには、ナースは減らさないとね…」
「え……」
絶望した表情の莉香を見て僕は笑って、からかわれたと気づいた莉香も頬を膨らませたあと笑った。
◇
~姫宮莉香~
それは愛と絵美、敬真とオタクくんと中庭でお弁当を食べているときの会話だった。
「皆って進路とかどうするの?」
口に入れた玉子焼きを飲み込んで突然質問を投げてきたのは絵美だった。
「進路かぁ…将来、何をやりたいかなんてわかんないのよねー。私は、普通に大学…たぶん文学部とか行くのかなーってしか考えてないなー。絵美はどうなの?」
あたし達3人ともギャル系の恰好をしているけれど、皆成績はそこそこいい。レベルにもよるけど、それなりの大学は視野に入れられる。でも結局、何かやりたいことがあるかって話なんだよね。
「あたしもなー。彼氏が観光学部ってとこに行ってて、話を聞いてるとよさそうかなーってくらい。観光の仕事とかってちょっと楽しそうじゃんね」
「オタクは地下アイドルのおっかけ?」
「拙者もそれで暮らしていけるなら、そうしたいでござる!でも、そんな仕事ないのでござるよ!血涙!」
「血涙とか自分で言うなし。っていうか、あんたいつまでもアイドルオタク続ける気?」
「むぅ、拙者にとってアイドルを推すのは青春ゆえに!まだまだ続ける所存」
愛とオタクくんの距離が少し縮まっているの気づいて、あたしは密かにウケる。
「敬真氏は、拳法道場とかでござるか?」
「師匠も道場持っていないし、あんまり万流軟拳を教えて生きていける気もしないんだよね」
「師匠は何やってる人なん?」
「……師匠は、フリーの整体師かな」
あたしも詳しくは聞いてないけど、ヤクザの人達とのつながりとか、敬真の口の濁し方だと、師匠さんは人には言えないこともいろいろと仕事にしているらしい。
「はー、そういうのもあるのでござるなー」
「莉香は?」
「んーまだイメージは固まってないけど、あたしは料理が好きだし、ずっとやってきてるから、料理関連の何かやりたいなって。でも料理人とかじゃないんだよねー」
「なんかさー、私らのクラスにもいるじゃん。美大目指してて美術部でめっちゃ真剣に絵描いていることか、英語を使いたいってオンライン講座とかやってるこ。正直、やりたいことがはっきり決まってて、少しうらやましい」
「「「ねー」」」
ここでは言えないけど、あたしにはもう1つの夢がある。敬真のお嫁さんになることだ。でも、ただなるのはいやだ。敬真は何も言わずに、あたしをお嫁さんにしてくれるかもだけど、あたしはあたしで何か自信をもって敬真の横にいたい。
校舎の上、高くなった空をあたしは見上げる。今日にでもお母さんに話を聞いてもらおうと思った。
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